東京交響楽団 第32回新潟定期演奏会
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2005年7月10日  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮:飯森範親
ピアノ:小山実稚恵
 
〜終極への挽歌〜

J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第3番二長調 BWV1054 (ピアノ版)

(休憩20分)

マーラー:交響曲第9番二長調

 
 
 

 今日は朝から町内会で公園の草取りで疲れ気味。家内のご機嫌斜めで、暗い気持ちで会場に向かいました。個人的には今年の東響定期で最も楽しみにしていたプログラムです。

 公演に先立ち、予定になかった飯森さんによるプレトークが行われ、飯森さんの母の死とからめてマーラーの9番への思いなど語ってくれました。

 マーラー好きの私ですが、9番の良さを知るようになったのは最近です。はるか昔の学生の頃、先日亡くなったジュリーニのLPで聴いたのが始まりです。しかし、その後長らく聴くことはありませんでした。最近年を取って、その良さに気付き、バーンスタインのCDなどで聴くようになりましたが、長大な曲であり、全曲通して聴くことはめったにありませんでした。ましてや生演奏は聴いたことがありません。おそらく新潟初演と思われます。と、楽しみにしていました。

 1曲目は小編成の弦楽だけの伴奏でバッハです。チャーミングな小山さんの演奏は心地よく、マーラー前の前菜としてはふさわしかったです。ただ、せっかくの小山さんの熱演も、マーラーの大曲の前では陰が薄くなってしまったのは可哀想ではあります。

 休憩の後はマーラーです。今度は大編成です。ステージのセッティングに裏方さんも大忙し。さて、演奏は・・。

 第1楽章から夢幻の世界に誘われました。寄せては返す波の如く、心を揺さぶります。緊張の糸が切れ一瞬意識が薄れたりもします。心が疲れた頃、第2楽章のレントラーのリズムで意識が呼び戻されます。チューニングの後、第3楽章。ダイナミックな演奏に打ちのめされます。拍手した人が1人いましたが、気持ちがわからないでもありません。そして終楽章。音楽のうねりにおぼれ、波間に漂う枯れ葉の如く、心は飯森さんにゆだねられました。ピアニシシモの中に消えいく最後は、もはや心ここにあらずです。

 5秒ほどの静寂の後、ガマンしきれない一部の人たちから拍手が起こりました。しかし続く拍手は起こらず、数秒間ホールは静寂に包まれ、その後は圧倒的な拍手で、現実に引き戻されました。私も精一杯の力を込めて拍手し続けました。目からは涙が出てきました。こんな精神の高まりは久し振りです。少なくともここ数年間こんな体験はありません。願わくは拍手のタイミング。なんで指揮者が振り返るまで待てないのでしょうか。せめてもう10秒待ってほしかったです。先を争うことはないのにねえ・・。

 そんな不満を差し引いても、これは今年のベストコンサートになるに違いありません。昨年のマーラー5番も名演でしたが、それ以上です。東響新潟定期の歴史の中で、長く語り継がれる名演となるのではないでしょうか。ありがとう、マエストロ飯森。ありがとう東響。

 暗い気持ちで臨んだコンサートでしたが。ゆがんだ気持ちはリセットされました。明日も頑張るぞー!

(客席:2階Cブロック*−*)