東京交響楽団 名曲の旅シリーズ 第21回
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2006年8月6日  サントリーホール
 
指揮:飯森範親
合唱:東響コーラス(合唱指揮:飯森範親)
ソプラノ:カトリオーナ・スミス
メゾ・ソプラノ:ヘレン・ラナーダ
 
〜復活の声、高らかに〜

モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492 から
           序曲
           恋人よ早くここへ
           奥様、どうぞお先へ

モーツァルト:「レクイエム」K.626 より
           怒りの日
           ラクリモーサ

(休憩20分)

マーラー:交響曲第2番 ハ短調 「復活」

 
 
 

 夏真っ盛り。猛暑の中、わざわざ新潟からサントリーホールまで出向きました。東響新潟定期で飯森さんは、2004年4月にマーラーの5番、2005年7月に9番を演奏し、大変な感動を与えてくれました。今回2番をやると聞き、是非聴かねばと思ったのですけれど、残念ながら今回は新潟ではやりません。幸い日曜日のマチネであり、時間も取れましたので、はるばる遠征した次第です。

 渋谷で所用を済ませ、銀座線に乗り、溜池山王からサントリーホールへと向かいました。カラヤン広場には当日券を買う人の行列ができていました。広場のオープンテラスでサンドイッチをほおばりながら開場を待ちました。

 13時半、開場のオルゴールの演奏とともに入場。座席は2階席5列目の中央。まあまあいい席のはず。考えてみたら、新潟の東響定期会員は、東京での東響主催公演に招待される特典があり、それを利用する手もあったのですけれど、そのことはすっかり忘れていて、いい席を取ろうとS券をネットで早々に手配していたのでした。やっぱり招待券をもらうんだったなあ、と後から悔やみました。
 
 前半はモーツァルト。オケは小編成で、合唱団はステージ上に整列していました。ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置。今日のコンサートマスターはゲストの高木和広氏で、大谷さんは休みでした。

 最初は「フィガロの結婚」序曲。早めのテンポで軽快に演奏し、気持ちよかったです。2曲目は、ソプラノとメゾ・ソプラノの2重唱。なかなかの歌声に心は浮き立ちます。メゾ・ソプラノが退場して3曲目も軽やかに演奏。ここでソプラノが退場し、休みなしにすぐに「レクイエム」の怒りの日とラクリモーサを続けて演奏しました。怒りの日はダイナミックに、ラクリモーサはしめやかに、思い入れたっぷりに演奏。最後しばしの静寂の後に、ゆっくりとタクトを下ろし、拍手が湧きました。フライイングする人はなく、さすがに東京の観客は違います。「フィガロの結婚」序曲の後は休憩を置き、飯森さんも一旦退場したのですけれど、その後は「フィガロ」から「レクイエム」をあたかもひとつの曲であるかの如く、続けて演奏したのはどういう意図があったのでしょうか。

 後半はいよいよ「復活」。前半同様にオケはヴァイオリンが左右に分かれる対向配置。コントラバス、チェロは左に陣取ります。合唱団はP席を埋めています。独唱は指揮者前です。
 ゆっくりしたテンポで演奏が始まりました。こんなスローな演奏は聴いたことがないと思えるほどゆっくりした演奏で、オケは破綻寸前。指揮者とオケ、そして観客の根比べとでも言うべき演奏で、挑戦的に感じました。負けてなるものかと聴く方も精神の集中を要求されました。盛り上げるべき時は急にテンポが上がり、オケを爆発させました。
 第2楽章もとんでもないスローテンポ。ここまでやるとは大したものですが、付いていくのも大変です。独唱者が入場し、第3楽章。幾分早めになりましたが、それでもスローです。そして第4楽章。メゾ・ソプラノの独唱は声質も良く、私好みの好演。心にしみる名唱でした。第5楽章もゆっくりと演奏が進みました。思い入れたっぷりに、一音一音をかみしめるように演奏が進みます。合唱が加わりクライマックスへ。盛り上がりもすばらしく、圧倒的な音の洪水の中でフィナーレを迎えました。

 さすがのサントリーホールも音が飽和し、残響音が不快に響きました。最後の盛り上がりは良かったですけれど、スローなテンポは賛否が分かれましょう。あまりのスローさでオケが付いて行けなかった場面もありました。盛り上げるときに急にテンポを上げたのは効果的ではありましたが、演出過剰です。もっと自然に演奏してほしかったというのが正直な感想でした。
 もうひとつ気になったこと。合唱団は左に女声、右に男声と分かれましたが、何故か女声の中に男がひとり。白い衣装の中に黒いスーツの男が混じり、まさに黒一点。合唱団のメンバー表でもアルトに男の名前がひとり。どういう事情なのかは知らないですが、視覚的には異様に感じました。
 また、新しく東響のメンバーになった私の故郷・亀田の誇り、枝並さんは2ndヴァイオリンの2列目で頑張っていました。すっかり東響に溶け込んでいて安心しました。

 今回はシュツットガルト歌劇場の専属歌手をわざわざ招き、合唱指揮も飯森さん自ら行ったという力の入れ方。その思い入れの大きさは演奏に表れていました。ただし思い入れが多すぎた分だけ空回りしていた点は残念でした。
 さらに前半のモーツァルトは抜粋というが、あまりにも抜粋しすぎて中途半端になってしまいました。「フィガロ」か「レクイエム」がどちらか一方にしておけば良かったのではないかと感じました。期待を持ってはるばる駆けつけただけに、欲求不満は否めなかったです。次の演目に期待したいです。

(客席:2階C5-18、S席:8000円)