東京交響楽団 第12回新潟定期演奏会
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2001年5月20日 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:スザンナ・マルッキ
ヴァイオリン:二村英仁
 

(團伊玖磨氏追悼) J.S.バッハ:アリア

テイエンスー:ムード−ステレオフォニック・ミュージック

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 作品63 (ヴァイオリン:二村英仁)

(アンコール)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタから

(休憩20分)

シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 作品39

(アンコール)
シベリウス:組曲「恋する人」作品14 より 「恋する人の通った小道」

 

 
 

 春真っ盛り、新潟の一番いい季節です。5時開演ですが少し早めに会場に行き、屋上の空中庭園を一回りして、新潟の風景を楽しみました。日曜日の午後ということで散歩をする人で賑わっていました。信濃川の流れは雄大であり、町並みも静かで美しいです。新潟の町もなかなかいいなと実感しました。

 2階に降りると、ホールのホワイエで、例によってポジティブオルガンの演奏が開始されていましさんた。専属オルガニストの吉田による演奏です。柔らかな音色が耳に心地よいです。聴いたことのないベーム(指揮者ではないですよ)という作曲家の作品とバッハが演奏されました。コンサート前のひとときの粋なサービスです。

 さて、会場はいつものようにS〜A席エリアは満席。ステージ脇と後方の席に空席が目立ちますが、かなりの盛況です。今回の定期演奏会は、北の国の陰影という副題が付けられ、フィンランド出身の女性指揮者のスザンナ・マルッキを迎えて、やはりフィンランドの作曲家のテイエンスーとシベリウス、そしてプロコフィエフです。
 指揮者についての知識は全くないですが、まさに「お国もの」ということで期待がふくらみます。先先回の定期演奏会は、やはりフィンランド出身のミツコ・フランクのはずでしたが、急病とのことで急遽指揮者が交代し聴きそびれたので、今回こそという気持ちもあります。

 まず会場の照明が落とされ、このホールの名誉顧問を務める團伊玖磨氏を追悼して、バッハのアリアを演奏するとのアナウンスがありました。静寂の中に楽員が入場し、薄暗い中でG線上のアリアが演奏されました。指揮者なしの弦楽だけでしめやかに演奏され、静寂の中に退席しました。照明を落とした薄暗いホールで聴くバッハの調べは、追悼という意味を除いても心にしみるものがありました。東響の弦楽アンサンブルのすばらしさもあって、演奏そのものも見事でした。

 しばらくの静寂の後、ステージの整備がなされ、会場が明るくされて本来の定期演奏会の開始です。1曲目は、フィンランドの作曲家の新作。初演が2000年の1月とのことで、昨日の東京での定期演奏会が日本初演であったといいます。オケは2つに分けられ、ステージの左右に距離を置いて配置されています。左はヴァイオリン、チェロとホルン、チューバなどの管楽器、右にはヴァイオリン、コントラバスとクラリネットやトロンボーンなどの管楽器が配されています。打楽器はありません。中央に立つ指揮者の前には誰もいません。指揮者は誰もいない正面を向いて指揮をしています。
 曲名が示すとおり、左右のオケの掛け合いがあり、まさにステレオです。左右のオケの独奏者は、コンマスの席ではなくて、一番後方にいるのでステレオ効果をさらに高めています。私の席はステージ正面のCブロックですので、左右からの音の饗宴を存分に味わうことができました。現代音楽は馴染みにくいという先入観がありますが、この作品は単純に音響を楽しむことができて、素人なりの楽しみ方もできたので良かったです。

 2曲目はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。プロコフィエフは食わず嫌いな面が多く、この曲も自ら進んで聴くことがありませんでした。2月の定期でバティアシュヴィリの独奏で、第1番が演奏されましたが、抒情的な雰囲気を感じたものの、残念ながら曲が好きになったということはありませんでした。第2番もきっと分かりにくい前衛的な曲かと誤解していましたが、抒情的な柔らかなメロディもあって、1番以上に馴染みやすく、疲れることなく全曲を楽しむことができました。第2楽章なんかはチャーミングで気に入ってしまいました。
 勉強不足で独奏者の二村氏については何も知らなかったのですが、CDやCMでも人気が高まり、世界的にも独自の活動をしているとのことです。ロビーでもCDの販売が行われていました。演奏は荒っぽさはなく、上品な繊細な音作りと感じました。なかなかハンサムでもあり、Jクラシックの流行のなかで人気が出ていくに違いないです。曲自体の理解が乏しいので、二村氏の演奏がどうのこうのということはできないですが、素人の私を楽しませてくれたということは、いい演奏だったに違いないです。アンコールのバッハは秀逸。

 さて、指揮者について触れるのを忘れていました。女性指揮者を聴くのは初めてなのですが、ドレスを着ているわけでなく、男性指揮者同様の格好をしていますし、ショートヘアの容姿など、女性を感じさせることはなかったです。背筋をピンと伸ばした姿勢で、きっちりとリズムを刻み、奇をてらうことのない正統的な指揮ぶりでした。

 休憩の後、後半はシベリウス。2番は聴きますが、1番はあまり聴きません。という訳で、曲への感情移入がなかなかできないのですが、きっちりとした中に豊かな色彩を感じる演奏でした。
 ときに情熱的な激しい指揮ぶりも見せました。曲の好みはありますが、演奏そのものは良かったと思います。曲をよく知らないので、演奏の良否については触れることができないですが、自国の曲ということで、自信と思い入れに満ちた演奏のように感じられました。東響の演奏も美しく、毎度ながら弦楽の美しさは特筆できます。会場は熱狂的な拍手。ブラボーの声が飛び交いました。拍手に答えてアンコールはやはりシベリウス。ここでは女性を感じさせるかわいらしい演奏でした。

 日も長くなり、終演後もまだ明るさが残っています。家族とは7時半に待ち合わせ。急いで駐車場に向かいました。
 

(2階C*−*)