ここ数年間で、最低最悪の体調。連休前からの風邪を連休中の仕事でこじらせ、仕事を休めぬまま何とか辛い日々を過ごしていました。こういう時に限っていろいろ仕事が重なるもので、本日も東京出張から駆けつけた次第。抗生剤を真面目に服用し気管支炎症状もようやく改善傾向。ただし、抗ヒスタミン剤の服用で頭はボーッとして新幹線の中ではずっと寝ていました。
新潟駅から息を切らして、18時30分の開演間際に到着。会場は8分程度の入りでしょうか。A席以上は埋まっているようですが、両サイドの3階席に空席が目立ちます。チョン姉弟共演ということで、即日完売間違いなしと予想し、先行電話予約に全力を注いだ私にはちょっと残念。新潟ではネームバリューが乏しいのかなあ、それとも地方としては高額な入場料もネックになったのかなあ。
本日は今回の日本公演(全9公演)の初日にあたります。チョン姉弟の夢の共演が今回の日本公演の目玉ですが、日本初の姉弟共演の場が新潟ということは、偶然ではありますが何とも幸せなことです。会場にはイタリアや韓国の関係者が数多くおられるようで、私の前の席のご一行も韓国語で会話されていました。また、外国のテレビクルーも取材していました。
さて、楽団員の登場。全員揃ったあと遅れてコン・マスが登場し、チューニング。そして、チョン・ミョンフン登場。思ったより小柄な体格。隣国人として親近感が沸きます。
ウイリアム・テルで演奏開始。軽快な演奏。Cブロック中央の席で、いつになく会場の響きがデッドで、厚みがない音に感じましたが、オケの特徴なのでしょうか。それとも風邪で耳まで変になっちゃったのでしょうか。そつなく流麗に演奏終了。
そして2曲目、チョン・キョンファ登場。真っ赤なドレスが目に鮮やかです。現代屈指の名ヴァイオリニストということでは誰も異論はないでしょう。姉弟共演ということもあって、期待はふくらみます。
冒頭の長い序奏の間、気合いがどんどん入っていくのがはっきりと分かります。精神集中がピークに達し演奏開始。体を激しく揺らせたり、くねらせたり、天を仰いだり、ジャンプまでして、体全体での演奏です。女豹が獲物を追うような雰囲気です。
この演奏は、演奏時以外の表情・所作全てが演奏の一部となっていて、ひとつのパフォーマンスとなっており、ヴィジュアル・カデンツァとでも形容したいくらいでした。ヴァイオリンの音色には柔らかさはなく緊張感が漂い、尋常でない気合いの入り方で、ただただ圧倒されるばかりでした。
その分、チョン・ミョンフンの方の影が薄く、ヴァイオリンとオケがぶつかり合うのではなく、伴奏に徹していたように感じられました。ヴァイオリンの弾き振りというような印象もあるくらい、チョン・キョンファの独壇場でした。姉をここまで高められたのも弟ならではなのかもしれません。きっと指揮者を選ぶんだろうなあと実感しました。
ロマン的、メランコリックな感傷は排除され、緊迫した重厚なブラームスでした。会場はブラボーが飛び交い興奮の渦。アンコールを期待しましたが、カーテンコールだけで前半の終了。今日はこれで満足という気持ちになりました。
休憩時間にロビーに出ると、外国のテレビクルーが客にインタビューしていました。また、楽団員と思われるタキシード姿の外国人が、お菓子をつまみながらウロウロしていました。
さて、後半はショスタコーヴィチ。イタリアのオケでショスタコーヴィチというのはちょっと・・・、という思いで、あまり期待はしていませんでした。この選曲の意味がよく分からないですが、曲が曲だけに、それなりに楽しめました。
オケに厚みがなく、軽さを感じ、暗くなく、深刻でない音楽でした。イタリア的とでもいいましょうか。大太鼓の響きも妙に明るかったです。暗さ・悲劇性を排除したような印象ですが、これは演奏というよりオケのキャラクターなんだろうなと思いました。
さすがに第4楽章はほどほどに爆発して、会場は大いに盛り上がり、ブラボーの嵐。拍手の音量は今年最高。アンコールのヴェルディは手慣れたもの。やっぱり、こういうオペラ音楽が得意なんだろうなあと感じました。本場物ですもんね。もっと聴きたいところでしたが、これで終了となりました。
時刻は9時を大きく回っています。明日は岐阜での公演。最終の新幹線には間に合いそうもないし、今日は新潟泊まりかな、明日はどうするんだろう、などと勝手に心配しました。
個人的にはイタリアのオケというのはなじみがありません。先入観かもしれないですが、どこか明るさを感じます。ショスタコーヴィチよりはレスピーギの交響詩でも聴きたかったなあというのが正直な感想。ともあれ、昔からLPやCDで馴染み深いチョン・キョンファを生で聴いたということが本日の大きな収穫です。
(2階Cブロック6-20) |