第14回新潟クラシックストリートの最終公演は、他の公演と被らない特別枠が設定され、りゅーとぴあ・コンサートホールで、鍵冨弦太郎ヴァイオリン・リサイタルとして開催されました。
新潟が誇る人気ヴァイオリニストのリサイタルであり、単独公演としても集客が期待されるのですが、クラシックストリートのフリーパス券で入場できる公演として設定してくれた運営の皆さんに感謝したいと思います。
最終のホワイエ公演の小助川謙二さんのエレクトーン演奏を聴きながら、コンサートホールに入場し、開演を待ちました。客席は次第に埋まり、主催者代表の高坂さんのお話しの通り、空席以外は満席の盛況となりました。1階席と2階正面は満遍なく席が埋まっていました。さすがに鍵冨さんは人気ですね。
開演時間となり、赤いドレスが麗しいオーボエの榎さん、ピアノの沼澤さん、そしてヴァイオリンの鍵冨さんが登場して、1曲目はピアソラの「オブリビオン」です。
ブエノスアイレスの場末の雨露に濡れた裏通りを髣髴させる感傷的なメロディ。しっとりとしたオーボエと切々と訴えかけるような泣きのヴァイオリンに胸が締め付けられました。
ここで、鍵冨さんによるメンバー紹介がありましたが、ピアノの沼澤さんは高校の同期で、一緒にCD録音しているそうです。オーボエの榎さんは、第91回日本音楽コンクール第1位という実力者で、パシフィックフィルハーモニア東京に所属し、鍵冨さんがゲストコンマスとして演奏したときの知り合いだそうです。演奏も美貌も一級品ですね。
一旦全員下がって、鍵冨さんだけ登場して、ヴァイオリンソロでクライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ・カプリチオ」が演奏されました。圧倒的なテクニックに支えられた激しく情熱的な演奏に圧倒され、鍵冨さんの魅力を知らしめてくれました。
ここでクラシックストリートの主催者の新潟ジャズストリート実行委員会代表の高坂さんの挨拶があり、鍵冨さんとの楽しいトークで、和やかな気分にさせてくれました。鍵冨さんが日本音楽コンクールに優勝したニュースをラジオで速報した人が高坂さんだったそうです。
続いては、オーボエとピアノでポンキエッリの「カプリチオ」が演奏されました。さすがに日本音楽コンクールの優勝者であり、美しいオーボエの響きに魅了されました。
次は、フランクのヴァイオリンソナタの第4楽章です。いきなりの第4楽章ですので、聴く方も勝手が違って、最初は曲に溶け込めませんでしたが、流麗に音楽が流れ、次第に熱を帯びていき、激しく燃えるようなピアノとともに、興奮はピークとなり、感動の中にフィナーレとなりました。やはり、全曲聴きたかったですね。
オーボエの榎さんが登場して、鍵冨さんとのトークがありましたが、オーボエは息が続かなくて困るのではなく、息を吐き出すのが大変だという話が興味深かったです。
そして、三重奏でモリーコネの名曲「ニューシネマパラダイス」をメドレーで演奏し、甘く切ないオーボエとヴァイオリンが絡み合い、美しいアンサンブルが心の琴線を刺激し、ホールは感動に包まれました。曲の良さ、編曲の良さ、演奏の良さが三位一体となり、この演奏を聴けただけでも今日来た甲斐があったと思えるほどでした。
続いてはショスタコーヴィチの「五つの小品」です。鍵冨さんが曲目解説してくれましたが、もともとヴァイオリン2本の曲を、ヴァイオリンとオーボエで演奏し、オーボエは演奏が大変だと話されていました。
第1曲は、哀愁に満ちた美しいメロディが心にしみ、第2曲は、軽やかに明るくステップを踏み、第3曲は、澄み切った空気の如く透明感のある音楽がゆったりと流れ、第4曲は、感傷的なワルツをしっとりと歌わせ、第5曲は、スピード感に溢れて全力疾走しました。名手3人により、多彩で聴き応えある音楽が創り出され、感動を誘いました。
続いては、ピアソラが2曲演奏されました。「鮫」は、激しいピアノのリズムにヴァイオリンとオーボエが加わり、情熱的なタンゴが攻撃的にすら感じられました。
「天使の死」は、オーボエに始まってヴァイオリンが加わり、そこにピアノが加わるというフーガ形式で始まり、激しく情熱的で、中間部はゆったりと歌い、そして再び激しく燃え上がり、興奮と感動の中に予定のプログラムを終えました。
大きな拍手とブラボーに応えて、アンコールにヴァイオリンとピアノで「エストレリータ」を、美しく、しっとりと演奏し、ピアソラの興奮を鎮めてくれました。
そして3人で、NHK朝ドラの名曲でオーボエが活躍する「風笛」を演奏して、心に染み入るような感動を聴衆に与えて、コンサートは終演となりました。
鍵冨さんのリサイタルというより、トリオのコンサートというべきでしたが、3人の実力がまざまざと示され、多彩な曲目と美しい演奏に酔いしれました。
クラシックストリートの最後を飾るに相応しい見事な演奏に大きな満足感をいただき、朝から音楽を聴き続けた疲労感は吹き飛ばされて、気分爽やかに暗闇の公園を抜けて帰路に着きました。
(客席:2階C6-11、1日フリーパス券:¥2000) |