「It’s ニイガタ Concert 2024 午前の部」を聴き、その快演に胸を熱くし、今日はこれでいいやと思うほどでしたが、りゅーとぴあを出て、穏やかな外の空気を吸って興奮を鎮めました。
　某所で昼食を摂り、一旦家に帰って所用を済ませ、再びりゅーとぴあに出直しました。開場とともに入場し、午前とほぼ同じ場所に席を取りました。
　余裕いっぱいの客席でしたので、各人が間隔を取ってゆったりと音楽を楽しめたはずでしたが、後から来た客が、私の横にぴったりと密接して着席されました。こんなに席に余裕があるのに、何で私に密着するのと思いましたが、心が小さい人間で申しわけありません。


　開演時間となり、最初はテノールの��橋宣明さんとピアノの八子真由美さんです。このお二人は、新潟シューベルティアーデでお馴染みですが、最近ご無沙汰していましたので、高橋さんの歌を聴くのは久しぶりになります。

　白ジャケットの高橋さん、グレー(?)のドレスの八子さんが登場。前半は日本の歌曲ということで「椰子の実」で開演しました。情感豊かに、しっとりと歌われましたが、優しく柔らかな歌声は高橋さんならではです。

　ここで二人による自己紹介と曲目紹介がありましたが、高橋さんの話し声がつらそうで、喉の調子が悪そうに感じましたが、私の思い過ごしでしょうか。

　続いて「荒城の月」と「千の風になって」が2曲続けて歌われましたが、「荒城の月」はドラマチックに切々と歌い、「千の風になって」は爽やかに歌い、日本の歌曲の魅力を知らしめてくれました。

　ここで後半の曲目紹介があり、シューベルトの歌曲が3曲続けて歌われました。「水の上で歌う」は、ドイツ語の歌詞はわかりませんが、たたみかけるような、切々とした歌声が心に響きました。
　お馴染みの「アヴェ・マリア」は、しっとりとした柔らかな歌声が、優しく奏でるピアノと共に、疲れた心を癒してくれました。
　そして、圧巻は「魔王」です。おどろおどろしく、力強いピアノとともに歌われる劇的な歌声は、聴く者の心を圧倒しました。歌もピアノも素晴らしく、新潟シューベルティアーデでシューベルトを究めておられる二人ならではのパフォーマンスだったと思います。

　これだけの演奏の後ですので、このまま終演かと思いましたが、息を切らせながら挨拶があり、アンコールとして「ネッスン・ドルマ：誰も寝てはならぬ」が歌われました。
　この曲はコロナ渦中で、音楽活動もままならないときに、YouTubeで配信された高橋さんの歌を聴いたことがありましたが、やはり素晴らしいですね。（この配信は是非ご視聴ください。）

　高橋さんは、最後は喉がつらそうに感じましたが、八子さんのピアノと共に、最後まで見事な歌声で楽しませてくれました。さらなる活躍を祈念申し上げます。


　休憩後は、サクソフォンの田村亮太さんとピアノの小林浩子さんです。田村さんといえば、新潟を代表する若手サクソフォン奏者であり、演奏者として、指導者として大活躍されています。
　小林さんは伴奏ピアニストとして、東京と新潟を中心に全国的に活躍されておられます。その活躍ぶりは、ファンとしましては誇らしく思ってます。

　黒地に赤い絵柄のドレス姿が美しい小林さんと、アルトとテナーの2本のサクソフォンを携えた田村さんが登場し、シクの「チロルの主題による独奏曲」で開演しました。
　作曲者も曲目も全く知りませんでしたが、小林さんのピアノとともに、アルトサクソフォンの柔らかな響きが心地良く、明るい曲調が、聴く者の心も明るくしてくれました。

　ここでニ人の挨拶があり、田村さんによる曲目紹介がありましたが、最初の曲と、次に演奏する曲は、サクソフォンができた当初の古い曲なんだそうです。
　そして、2曲目は、テナーサクソフォンに持ち替えて、ドゥメルスマンの「アンダンテとボレロ」です。テナーということで、音の重心が低くなり、ふくよかで重厚な響きが胸に熱く迫りました。

　再び田村さんによる曲目紹介があり、ピアソラの名曲「オブリビオン」が、アルトサクソフォンで演奏されました。しっとりして、湿度感を感じさせるピアノと共に、切々と語りかけるサクソフォンの調べ。小雨が降るブエノスアイレスの夜の路地裏の光景が眼前に思い浮かび、むせび泣くような調べが、胸に切々と滲みてきました。

　そして最後は、新潟在住の作曲家で、エレクトーン奏者として活躍されている小助川謙二さん作曲の「邁往する道」が演奏されました。この曲はこのニ人のリサイタルのために委嘱された作品ですが、他の奏者にも演奏されるようになったとのことです。
　ノスタルジックな美しい曲であり、夕暮れどきの新潟の農村風景が思い浮かんできました。しっとりとした美しいメロディラインは、サクソフォンのスタンダードな名曲として親しまれていくのではないでしょうか。
　客席にいた小助川さんにも大きな拍手が贈られて、ニ人による演奏は、大きな感動の中で終演となりました。これからの新潟の音楽界を牽引していくはずのニ人を蔭ながら応援していきたいと思います。


　休憩後の最後は、ピアノの渡部乃亜さんです。黒地に白い絵柄のドレスの渡部さんが登場。「展覧会の絵」の演奏開始です。
　これはもう、音の洪水に圧倒されました。プロムナードを歩きながら、それぞれの絵の前で見入り、その風景を音楽で楽しみました。
　各曲を鮮やかに演奏し、抜群の演奏テクニックに裏打ちされた、パワーと色彩感が溢れるピアノ。さすがにモスクワで研鑽を積んでこられただけはありますね。
　大音量でも音に濁りはなく、迫力あるサウンドがホールを満たしました。コンサートの最後を飾るに相応しい演奏であり、フルコースの料理をいただいた後のような、大きな満足感をいただきました。
　その快演を讃えるべく、大きな拍手がホールを満たし、渡部さんのお声とアンコールを期待しましたが、そのまま終演となりました。


　午後の部も午前の部同様に、内容の濃い素晴らしい演奏でした。明日（21日）も午前、午後の2公演が開催され、それぞれ3組ずつ出演されます。
　和楽器も含めて多彩な内容で魅力たっぷりであり、期待の若手奏者の演奏もあって、是非とも聴いてみたかったのですが、参加できないのが残念です。多くの聴衆で盛り上がってほしいですね。

　このような地元の音楽家を支援し、演奏の場を提供してくれたりゅーとぴあにも拍手を贈り、新潟の音楽家をこれからも応援していきたいと思います。
　

（客席：2階C2-9、セレクト券：￥1000）