雨模様の土曜日。冷たい雨が降り続き、気温は上がらず肌寒さを感じました。午前中は某市での仕事があり、移動時間等も考慮して、本来はこのコンサートは予定していませんでした。
しかし、仕事が早めに終わりましたので、帰り道にりゅーとぴあに立ち寄り、某コンサートのチケットを買いました。
そのまま帰ろうかと思いましたが、スタジオAで大滝俊さんのコンサートがあることを思い出し、急遽聴いて帰ることにして当日券で入場しました。中に入りますと、余裕をもった座席配置で、前列の右寄りに席を取りました。
大滝さんは長岡市のご出身で、2004年に桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、スペインのバルセロナに留学され、マリア・テレサ・モンティス、アリシア・デ・ラローチャに師事されています。2008年7月に帰国され、国内でコンサート活動をされ、CDも発売しておられます。
毎年秋に新潟でコンサートを続けられていますが、なかなか聴く機会がなく、2016年10月のコンサート以来、7年ぶりになります。
開演時間となり、大滝さんが登場して挨拶がありました。コンサートの注意事項などを、アットホームな感じで、自分自身で話されました。
曲目紹介があり、この季節に合わせて、チャイコフスキーの「10月」で開演しました。今日の肌寒い天気にぴったりな、しっとりとした演奏が、冷えた心にしみ渡りました。
ここで最近CD録音されたことなどのお話があり、著作権の関係で録音できなかったという「アランフェス協奏曲」が演奏されました。カデンツァの部分は大滝さんの作曲で、これが著作権と絡み合ったようですが、演奏は素晴らしく、情感豊かであり、ギターで聴くこの曲とは違った魅力を感じました。
以後、1曲毎に大滝さんの穏やかな語り口での曲目紹介があり、シューマンのパガニーニの練習曲(悪魔の微笑み)とリストのパガニーニの練習曲(狩り)、そしてラフマニノフの「ヴォカリーズ」と演奏が進められました。いずれも短い曲でしたが、多彩な選曲で楽しませてくれました。
前半最後は、グリーグのピアノ協奏曲第1楽章の抜粋でしたが、ピアノだけで協奏曲の味わいを作り出して、大いに楽しませてくれました。
休憩時間には、ロビーでワインやお茶のサービスがありました。非常にアットホームな雰囲気で、和やかなサロンコンサートという感じを受けました。
後半も1曲毎に大滝さんによる曲目紹介があって演奏が進められました。ドビュッシーの「水の反映」「アラベスク第1番」の2曲に続いて、ピアソラの名曲「アディオス・ノニーノ」がしっとりと演奏され、情感豊かな演奏に胸を熱くしました。
その後はガーシュインの「前奏曲第2番」「スワニー」「ス・ワンダフル」「魅惑のリズム」「私の彼氏」そして「ラプソディ・イン・ブルー」の6曲が演奏されました。
いずれもアッという間に終わるような短い曲で「ラプソディ・イン・ブルー」も短縮版でしたが、それぞれが味わい深く、楽しく聴かせていただきました。
アンコールにはジャズの名曲「ミスティ」が演奏され、続いて大滝さん自身が左手用に編曲したという「アルハンブラの想い出」が演奏されましたが、ギターのトレモロをピアノでそのまま演奏するという離れ業には驚きました。
そして、先月お母様が65歳の若さで亡くなられたというお話しが涙ながらにあり、そのお母様のリクエストだったというショパンの「エチュード
25-7」が演奏され、悲しく切ない響きが胸に滲みました。
ちょっとしんみりとした静けさの中に終演となりました。帰り際受付のテーブルにはお母様の遺影が置かれていました。ご冥福をお祈り申し上げます。
多彩な曲で、プログラムに一貫性がないようにも思えますが、いずれの曲も大滝さんの味付けがなされており、各曲を違和感なく連続して楽しむことができました。
真面目で実直な大滝さんの人柄が髣髴されるような演奏であり、変にいじることなく、作曲者が楽譜に込めた思いをそのまま表現してくれました。曲目が違っても、大滝さんの世界が眼前に展開され、ぶれのない芯が通った演奏に感じました。
ピアノの音も美しく、スタジオAに常設されているヤマハから、強奏でも濁ることのない、クリアな響きを創り出していました。
アットホームな、サロンコンサート的な雰囲気も心地良く、変に緊張することもなく、ゆったりとした気分で音楽を楽しむことができたのも良かったと思います。
10月1日は福岡で演奏され、今日は新潟、そして11月4日には東京で演奏会を開催されます。来年も11月2日の夜に新潟で演奏会を開催する予定が決まっているそうです。大滝さんの今後の益々のご活躍を祈念したいと思います。
(客席:前方・右寄り、当日券:¥3500) |