東京交響楽団 名曲全集第186回 Live from MUZA!
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2023年4月22日(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
ピアノ:ヤン・リシェツキ
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 
メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」序曲 op.21

ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 op.21
(ソリストアンコール)
ショパン:ノクターン第21番ハ短調 遺作

(休憩20分)

ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 op.95 「新世界より」


 

 新型コロナ禍で始まった東京交響楽団の演奏会の無料配信「ニコ響」が、今年度も開催されることになりました。23年度の最初は、ミューザ川崎での名曲全集で、指揮は毎回熱い演奏を聴かせてくれるウルバンスキです。
 ミューザ川崎シンフォニーホールから生中継されましたが、リアルタイムでは視聴することはできず、後日にタイムシフト配信を視聴させていただきました。

 サイトにアクセスしますと、無人のステージが映し出されていました。客席が次第に埋まり、開演のアナウンスが流れて、ホールにいるかのような気分になりました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待つ新潟方式が、東京や川崎でも定着しました。最後にニキティンさんが登場して大きな拍手が贈られ、チューニングとなりました。次席は田尻さんです。
 オケのサイズは14型で、対向型ではなく、通常の配置です。東響は3月末で大量の退団がありましたので、日頃見たことのない新しい顔ぶれが動員されているのが目に付きました。

 スリムでイケメンのウルバンスキが、衿なしの黒シャツに黒ジャケットで登場。メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲で開演しました。譜面台はなく暗譜での指揮です。
 木管の合奏で演奏開始しましたが、フルートは主席に就任した竹山愛さんです。シティ・フィルから移籍したんでしょうか。軽快で明るい音楽が爽やかに響きました。オーボエはお馴染みの荒木さんが抜けて荒さんの肩にかかっています。ホルンの白髪の奏者は誰でしょうか。などと団員を見回しながら視聴しているうちに、静かな管の和音とともに曲が終わりました。

 ピアノが設置され、ステージが整えられて、オケのサイズは若干小さくなり、2曲目はショパンのピアノ協奏曲第2番です。
 ウルバンスキと合わせたのか、衿なし黒シャツに黒ジャケットのリシェツキがウルバンスキとともに登場。長身でスマート、もじゃもじゃ頭がかっこいい青年です。
 ゆったりとしたオケの長い序奏に導かれて、おもむろにピアノが加わりました。緩急・強弱の幅が大きい鋭く強靭な打鍵。甘さを排除した硬派な演奏とでもいいましょうか。
 私が好きな第2楽章ラルゲットは、ゆったりとした演奏で、流麗さはあるものの、甘さ・切なさはほどほどに抑えられていました。福井さんのファゴットとの掛け合いはきれいでした。
 第3楽章はパワーと繊細さを併せ持って、大きくアクセントを付けながら演奏し、次第に勢いを増し、ホルンのファンファーレとともに、トップギアにギアチェンジしてフィナーレへと疾走し、ひと呼吸置いてオケの全奏とともに曲を閉じました。
 切れの良い演奏はスカッと爽やか。甘さを排除した演奏は爽快感があり、スポーツカーで駆け抜けたかのようでした。若きイケメンピアニストと指揮者とが作り出した生命感ある音楽にパワーをいただきました。
 ソリストアンコールは、コンチェルトとは裏腹に、ショパンのノクターンをゆったりと、静かに、切なく、しっとりと演奏し、心を鎮めさせました。この選曲は憎いですね。

 休憩後の後半は、ドヴォルザークの「新世界より」です。オケのサイズは元に戻って14型となりました。チューニングを終えてウルバンスキが登場。前半同様に暗譜での指揮です。
 管も弦も素晴らしく、グイグイと力強く音楽が進みます。聴かせどころの管楽器のソロもお見事。緩急・強弱を付けての加速感の爽快さは、ウルバンスキのなせる業でしょう。聴き飽きた感がなくもないこの曲の新たな魅力を感じさせてくれました。
 第2楽章は意表をついた演出で楽しませてくれました。重厚な前奏に続いてのイングリッシュホルンは、なんとステージ左の3階席で演奏されました。まさに天上から降り注ぐ音楽です。演奏はいつもの最上さんではなく浦脇さんでした。オケとかなり距離が離れていて演奏しにくかったものと思いますが、見事なソロでした。
 オケもゆったりとこの上なく美しく歌い、管楽器のソロも美しく、低弦のピチカートが切なく胸に響きました。弱音の美しさに涙し、しっとりとした音楽に心は鎮められ、癒しのひと時を感じました。
 トライアングルで導かれる第3楽章は、一転して激しさを取り戻し、ベルアップした木管とともに、パワーと勢いを増しました。
 途中の舞曲風の場面は楽しげに歌わせ、再びトライアングルとともに激しさを増し、のどかな場面もつかの間に、暗雲の中に、オケの強奏とともに楽章を終えました。
 第4楽章は猛スピードで駆け抜けました。全曲の中でたった1発のシンバルの後のヌブーさんのクラリネットソロも美しく、その後は緩急を付けながらエンジン全開で突進しました。
 ひとときの静寂とやすらぎの時間を過ごし、ホルンのファンファーレとともに、再びエンジン全開となり、静かな余韻もつかの間に、激しいティンパニの連打とともに、フィナーレを向かえ、消えゆく音とともに曲を閉じました。もう少し余韻を味わいたかったですが、ブラボーの声が上がり、大きな拍手が沸き上がりました。
 
 これまで同様に、ウルバンスキの指揮による音楽は生命感にあふれ、聴き応えがあり、聴き飽きた感のある音楽にも、新たな魅力を引き出してくれました。
 東響の皆さんも指揮に応えて、ウルバンスキの音楽を見事に具現化してくれました。コンマスが1人去り、首席奏者が何人か去っていった東響ですが、これからどう発展してくれるか目が離せません。
 


(客席:PC前、無料)