本日は、新潟が誇る舞踊集団「Noism」と、太鼓芸能集団「鼓童」の夢の共演です。ともに新潟を拠点として、全国へ、世界へとその活動の場を広げている点では共通しています。Noismと鼓童の共演は今回が初めてだそうですが、録音による鼓童の音楽での共演はあったはずです。
また、2010年2月に開催された「新潟アジア国際音楽祭」の一環で開催された「新潟の芸術
Noism & 鼓童」という公演では、前半が Noism、後半が鼓童で、共演こそなかったものの、同じ舞台に立っています。
今回は「鬼」というテーマの作品で、オリジナル曲を鼓童が生演奏し、Noismが踊るという夢の舞台が実現します。また、前半はストラヴィンスキーの「結婚」(振付:金森穣)が演じられます。
今回の公演は新潟での3公演の後、埼玉で3公演行われ、その後は京都、名古屋。鶴岡での公演が行われます。夢の共演ということで期待は高まり、新潟の3公演はチケット完売となり、追加席も発売と同時に完売となりました。
なお、鼓童は、現在本隊はワン・アース・ツアー2022「童」で、全国ツアー中ですので、この公演に参加しているのは若手の精鋭7人です。
私は新潟での3公演のうち、中日の公演を観させていただくことにして、チケット発売早々に購入しました。さて、どんな公演になるのか楽しみにしましょう。
ということで、コンサートホールでの「たいようオルガン」の公演が終了し、東ロビーで原稿を書いていましたら開場時間となり、早々に入場してこの原稿を書きながら開演を待ちました。チケット完売だけあって客席は次第に埋まり、当然ながら満席となりました。
場内が暗転し、前半は「お菊の結婚」です。ストラヴィンスキーの「結婚」は、ロシアの民謡を題材にして作られたバレエ音楽で、ロシア・バレエ団を創設したディアギレフに献呈され、1923年にパリで初演されました。
不勉強な私は、ストラヴィンスキーのバレエ作品といえば、「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」という三大バレエしか知りませんでしたので、「結婚」というバレエ音楽がどういうものなのかも興味深く、この演目も楽しみにしていました。
当初の発表では、曲名のとおりの「結婚」という題名でしたが、物語の舞台がロシアから日本に置き換えられ、いつのまにか題名も「お菊の結婚」と変更されました。
幕が上がり、波の音とともに、舞台右手前方から海兵将校のピエール(ポプラヴスキー)が登場し、舞台中央にスポットライトが当てられてお菊(井関佐和子)が登場。角隠しをした白無垢衣裳が鮮やかに浮かび上がって、ハッと息を呑みました。以後、お下げ髪の花嫁と夫、それを取り巻く人たちが、ときにコミカルにも思える素早い舞踊で、物語が進みました。
役柄は「蝶々夫人」のような雰囲気も感じさせ、ピエールがピンカートンに見えてしまいました。結婚を祝う物語でなく、日本を舞台にした悲劇の物語となっているところに独創性があり、後半の「鬼」に合わせたストーリー設定にしたものと思います。
音楽は初めて聴きましたが、演奏は4台のピアノ、打楽器アンサンブル、声楽(独唱+合唱)からなり、カンタータと表現されるもので、独創的な激しいリズムと歌声が心を震わせました。
「春の祭典」と「カルミナブラーナ」を掛け合わせたような激しい音楽に合わせて、息も付かせね激しい躍りが繰り広げられました。
歌の意味はわかりませんが、歌や音楽に見事にシンクロする振り付けの素晴らしさ、それを見事に具現化する Noismメンバーの素晴らしさに息を呑みました。
ストラヴィンスキーの音楽も素晴らしく、この音楽を知ることができたのも今日の収穫でした。Noism の新たな魅力を感じさせる作品に仕上がっており、金森作品の素晴らしさを、否が応でも再認識させられました。
カーテンコールがあるものと思いましたが、幕が下りるとともに場内が明るくなり、拍手もそこそこに、そのまま休憩に入ってしまいました。
後半は、いよいよ鼓童との共演による「鬼」です。場内が暗転し、幕が上がりますと、ステージ上には鼓童の演奏台が高く設置されており、右に4人、左に3人の鼓童メンバーがスタンバイしていました。
無音の中に井関さん、山田さんが登場。最初の締太鼓の一撃にハッとして、物語が始まりました。それぞれの出演者には役が割り当てられていますが、そこに込められた意味は良く理解できませんでした。
鼓童の演奏は、太鼓というより、パーカッションによる現代音楽であり、様々な打楽器を駆使し、篠笛や箏も加わって、多彩な音で魅了しました。
鼓童の生演奏とNoismの舞踊。両者から目が離せず、瞬きする暇もありませんでした。原田さんの作曲による深遠な音楽も素晴らしく、劇場いっぱいに響き渡る複雑な音楽が、身体全体を振動させ、聴く者の魂を揺り動かしました。
静と動を繰り返し、静寂を破壊する強烈な太鼓の音が心を突き刺しました。凡人の私には、そこに込められた意味はよく分かりませんが、鬼伝説を佐渡の鉱山と結びつけ、鉱山労働者と役行者、遊郭を開いた清音尼と遊女たちが絡み合って、鬼を巡る物語が展開されました。
振付の金森さんも自ら出演し、中心となる井関さん、山田さんとともに、感動のステージを創り上げていました。静寂の中に幕が下り、盛大な拍手が贈られました。
何度となくカーテンコールが行われ、やがてスタンディングオベーションとなって Noismと鼓童のメンバーのパフォーマンスを讃えました。最後は互いに手を振って幕が下り、感動のステージは終演となりました。
期待にたがわぬ仕上がりに感動し、新潟に Noismと鼓童がある喜びを噛み締めました。新潟公演の後は、埼玉公演が3日間開催され、その後は京都、愛知(名古屋)、山形(鶴岡)と公演が続きます。
新潟のみならず、全国の人たちに素晴らしい感動を与えてくれるはずであり、新潟が世界に誇る芸術文化を堪能していただけるものと確信しています。
(客席:2階17-24、¥5000) |