Noism0/Noism1「境界」
  ←前  次→
2021年12月18日(土)17:00 新潟市民芸術文化会館 劇場
Noism Company Niigata
 
『Endless Opening』
 演出振付:山田うん
 音楽:ボロディン
 衣裳:飯嶋久美子
 出演:Noism1
     ジョフォア・ボプラウスキー、井本星那、三好綾音
     庄島さくら、庄島すみれ、坪田光
     中村友美、樋浦瞳、横山ひかり

(休憩20分)

『Near Far Here』
 演出振付:金森穣
 音楽:ヴィヴァルディ、エクルス、マルチェッロ、J.S.バッハ
     コレッリ、グルック、パーセル
 衣裳:堂本教子
 映像:遠藤龍
 出演:Noism0
     金森穣、井関佐和子、山田勇気

 日本初の公共劇場専属舞踊団として2004年4月に設立されたNoismは、金森穣氏の下で、新潟のみならず、国内外で活発な活動を続け、その芸術性の高さは世界水準にあり、文化・芸術の分野では、新潟の宝といえましょう。
 
 今回は、今年7月以来のNoismの公演で、山田うんさんの振付によるNoism1の新作と、金森穣さん振付けによるNoism0の新作の2本立てです。
 新潟で、17日、18日、19日と3公演行われた後、24日、25日、26日に東京芸術劇場で3公演行われます。さらに、来年1月10日には、井関さんの故郷である高知市での公演も予定されています。今回は昨夜の初日に続いての2公演目ということになります。

 昨日から今シーズン最強の寒波が襲来中であり、暴風雪が吹き荒れ、新潟市内も雪化粧しました。寒さも厳しく気持ちもふさいでしまいますが、今日は強風が吹き止んで良かったです。

 今日は、朝からネット参加での仕事があり、在宅ワークを終えて、15時半過ぎに家を出て、新潟が誇る舞踊芸術を堪能すべく、りゅーとぴあへと車を進めました。

 歩道に積もった雪に足を取られながら、りゅーとぴあに入り、チラシ集めをして、静まり返ったロビーでひと休みしていますと、ちょうど開場時間となり、早目に入場してこの原稿を書き始めました。

 さて、今回はノイズムの18年目のシーズンの最初の公演です。金森さんのほか、ゲスト振付家を迎えてのダブルビル公演で、今回迎えた振付家は、山田うんさんです。
 「境界」を共通テーマとして創作された2作品が上演され、前半は、山田さんの振付で、Noism1による「Endless Opening」で、後半は、金森さんの振付で、Noism0による「Near Far Here」です。

 ロビーには、前半に出演予定の中尾洸太さんが怪我で出演できなくなり、準メンバーの横山ひかりさんが出演するとの掲示がありました。昨日は中尾さんが出演されていたはずですが、早いご快復をお祈りします。横山さんは突然の代役でご苦労なことと思います。

 開演時間が近づくに連れ、客席は埋まり、1階席や2階席中央はびっしりですが、両サイドと後方に空席がありました。女子高生が団体で来ていたりと、老若男女で賑わいをみせていました。

 
 (このレポートなど読んでくれる人は少ないので、公演の様子を書かせていただきます。)

 開演時間となり、場内が暗転し、幕が上がりますと、無人の白いステージとバックが現れました。色とりどりの衣装を着けたメンバー8人が、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番のメロディーにのせて、春の明るさを感じさせるような舞踊を演じました。本来は9人のはずで、昨日は9人で踊られたとのことですので、中尾さんの降板により変更されたのかもしれません。
 無音の舞踊を挟んで、第2楽章も明るく爽やかに演じ、ステージが暗転して第3楽章へ。ステージにキャスター付の白い直方体の箱が運び込まれ、メンバーは8人から9人となり、それぞれが箱とともに演じました。
 この箱は、ベッドにも棺桶にも見えてしまいます。様々にフォーメーションを変え、箱の上で各人が自由に演じたりと、意味深い演出を感じさせました。
 箱がステージ前方に並べられ、これまで羽織っていたものを脱いで箱の上に載せ、その後は、箱をステージ最後方まで押し出して片付けられました。
 第4楽章は9人による舞踊が演じられ、無音の中に演技が終わり、ステージが明るくなりますと、出演者9人が横1列に並んでカーテンコールとなりました。
 衣裳も含めて新鮮な演出で、これまでのNoismのイメージを払拭したようなカラフルな世界が展開され、なかなか楽しめました。

 休憩後の後半はNoism0です。場内が暗転し、場内に轟き渡る雷鳴と共に、真っ暗な中に白い衣裳の井関さんがスポットライトに照らされて現れ、神のような神々しさを感じさせました。井関さんの前で金森さんと山田さんが踊り、これはもう、Noismの世界、金森の世界です。
 雷鳴が轟き、四角い枠が天井から下ろされ、その枠の前後で金森さんと山田さんが、現実と鏡に映る虚像のように、シンクロして踊り、後方の背景に映る影と共に、虚と実、表と裏といったような、境界を境にした2つの世界が描き出されました。井関さんが上衣を脱ぎ捨てて舞い、夢幻の世界へと誘われました。
 そして再び雷鳴が鳴り、ステージ左手に斜めにスクリーンが下ろされ、スクリーンに投影された映像とスクリーンの前で演じられる現実とが絡み合い、スクリーンを境界にして、2つの世界が対比され、融合し、奥深い意味を感じさせました。
 暗転して雷鳴の轟音が鳴り響いた後に幕が再び上がりますと、そこには息を呑むような世界が広がっていました。ステージいっぱいの赤い花びら。天井から舞い落ちる花びら。客席の天井からも舞い降り、夢の世界へと引きこまれました。
 まだ演技は続いていると思っていたのですが、1階席中央から拍手が始まりました。ここで拍手してよいのかと心配になりましたが、拍手は周囲を巻き込んで拡大し、3人に大きな拍手が贈られて、そのま場内が明るくなって終演のアナウンスが流されました。幕が下りてのカーテンコールもなく、あっけにとられてしまいました。
 最後はステージと客席とを隔てる「境界」である幕をも取り去ったということなのでしょう。この斬新な演出にはあっけに取られ、ただただ圧倒されるばかりでした。
 音楽、映像、照明を含めて、最高のパフォーマンスで魅了されました。この精神性の高さの前ではひれ伏すしかありません。さすがにNoism0です。これぞNoism0です。感動以外の何者でもありません。

 Noismの実力をまざまざと見せ付けられ、その芸術性の高さと重厚さ、深遠さに圧倒されました。新潟が世界に誇るNoism。新潟にNoismがある幸せを感じながら劇場を後にしました。冷え込みが厳しく、凍りついた歩道を、慎重に歩いて駐車場へと向かいました。

 新潟公演は明日までです。そして、24日からは東京公演です。東京の皆さんにも、素晴らしいクリスマスプレゼントになること間違いなしです。
 
 
 
(客席:2階15-24、\5000)