ピアノの品田真彦さん、チェンバロの笠原恒則さんによるコンサートです。ピアノとチェンバロ。同じ鍵盤楽器でありながら、弦を叩くピアノと弦を弾くチェンバロは似て非なるもの。演奏法も異なります。この組み合わせでのコンサートはかなり異色です。
3年前に、第1回のコンサートが開催されていますが、都合がつかずにそのときは聴きに行けませんでした。今回は2回目の公演となります。本来は昨年開催させるはずだったのですが、新型コロナ禍で1年延期され、今日の公演となりました。昼・夜2公演ですが、昼公演に参加させていただくことにしました。
ワンコインコンサートを終えて、小雨降るなか上古町へと足を進めました。桜蘭でいつもの冷やし中華をいただき、再びりゅーとぴあに戻りました。
スタジオAに行きますと、ちょうど開場時間となり、検温を受け半券を自分で切って入場。右手2列目に席を取り、この原稿を書きながら開演を待ちました。感染対策で客席数は減らされ、客席間の距離は十分に空けられいました。
前方にチェンバロが左向き、後方にピアノ(ヤマハ)が右向きに置かれ、共に蓋は外されていました。笠原さんがチェンバロの調律に励んでいましたが、念入りな調律が終わり、開演5分前に、プロジェクターのスイッチが入れられ、左にチェンバロ、右にピアノの鍵盤が壁に投影されました。
時間となり、黒シャツ・白マスクの笠原さんと白シャツ・黒マスクの品田さんが登場して、笠原さんの挨拶と解説があり、フォーレの「ドリー」からの「子守歌」で開演しました。
ピアノ伴奏でチェンバロがメロディを奏でる編曲でした。鋭角的なチェンバロとふくよかで音量豊かなピアノ。音質も音量も大きく異なりますが、優しく絡み合い、ゆったりと音楽を奏でました。最初は異質に感じましたが、すぐに耳に馴染みました。
続いては、笠原さんがチェンバロ独奏でラモーの「アルマンド」、品田さんがピアノ独奏で、ラモーつながりでドビュッシーの「ラモーを讃えて」を演奏し、それぞれの楽器の魅力を伝えてくれました。
その後はチェンバロとピアノの合奏で、テレマンの「ターフェルムジーク」からの「四重奏曲」を、Adagio〜Allegro〜Dolce〜Allegroという4つのパートの対比も鮮やかに楽しませてくれました。
W.F.バッハ(J.S.バッハの長男)の「2台チェンバロのための協奏曲」は、協奏曲というネーミング通りに、ピアノとチェンバロがせめぎ合い、融合し、聴き応えある音楽に仕上がっていました。
この2曲ともに原曲を知らない私ですが、編曲の妙もあり、違和感なく曲を楽しめました。
休憩時間中も笠原さんはチェンバロの調律に励んでおられ、十分に休憩を取られていませんでした。繊細な音楽を奏でるチェンバロの管理の大変さを垣間見ました。
休憩後の後半は、白・黒逆転し、笠原さんが白シャツ・黒マスク、品田さんが黒シャツ・白マスクで登場し、ボッケリーニの四重奏曲で演奏が再開されました。前半同様に、チェンバロとピアノの融合が心地良く感じられました。
続いては、スペインの作曲家モンポウの「歌と踊り」から3曲演奏されました。曲名のように歌的な部分と舞曲的部分からなりますが、単純で親しみやすい美しいメロディが印象的でした。第1番のシンプルさはサティを髣髴させ、第11番の悲しげなメロディは心に染みました。
そして、プログラム最後は、ソレルの「ファンダンゴ」。超絶技巧を駆使したチェンバロの難曲ですが、チェンバロとピアノがパートを分け合い、交互に自己主張し、大きな盛り上がりを形作り、興奮の中に終演となりました。
アンコールは、コンサートの冒頭に演奏したフォーレの「ドリー」から「スペイン」が演奏されました。今度はピアノがプリモとなっての演奏。大きな盛り上がりの中にコンサートを閉じました。
演奏もさることながら、演奏間のお二人のトークも、お二人の穏やかで真摯な人柄が伝わってきて、楽しく興味深く聴かせていただきました。
コンサート運営も素晴らしく、感染予防対策も万全に感じました。演奏の様子を投影するという演出も良く、ヴィジュアル的にも楽しませていただきました。お二人の今後の活躍を祈念しますとともに、今度はどんなアイデアで楽しませてくれるか期待したいと思います。
外に出ますと、わずかながらも小雨が降り続いていました。梅雨空ですが、良い音楽を聴いて、心は晴れ晴れです。明日は晴れるかな・・。
(客席:2列目右寄り、¥2000) |