昨年4月、新潟駅前のマルタケビル8階にマルタケホールがオープンしました。そのオープン記念コンサートとして、昨年4月29日から5月6日まで、新潟にゆかりのある演奏家11人によるリサイタルが連続して行われるはずでした。しかし、新型コロナ感染による緊急事態宣言により中止されました。
あれから1年。事態は未だ改善することなく、さらに深刻な状況となっています。しかし、感染予防策の徹底によりコンサートの開催は可能となり、昨年のリベンジ公演として、Marutake-hall
Golden Week Concert 2021が企画されました。
昨年とはメンバーの変更がありますが、4月29日から5月9日まで、リサイタル形式のコンサートが全8公演開催されることになりました。
初日となる今日の公演は、ヴァイオリンの加藤礼子さんとピアノの小林浩子さんの登場です。二人の大ファンを自認する私としましては、是非とも聴きに行かねばなりません。ということで、早々にチケットを買っていました。
今日は祝日で休みでしたので、掃除とゴミ出しをし、ゆっくりと昼食を摂り、雨模様のなか新潟駅前へと車を進めました。
駅前の立体駐車場に車をとめ、久しぶりに変貌する新潟駅を一回りし、マルタケビルに向かいました。エレベーターで8階に上がり、ロビーで開場を待ちました。
開場時間となり2番目に入場しました。自由席でしたが、客席の1列目は使用されず、他も一部間隔を空けて座るように設定されていました。私は正面前方に席を取りましたが、前方は無人、両サイドが着席できない席に設定されていて、感染予防にも最適の席に思われました。
このホールに来るのは昨年11月以来です。101席の非常にコンパクトなホールで、各椅子には収納式のテーブルが付けられており、音楽専用ホールということではないようです。
小さなステージに小型のスタインウェイB型が設置されています。開演を待つ間、ステージ裏からヴァイオリンの音が漏れ聴こえてきました。
開演時間となり、ステージ右側からピンクのドレスの加藤さん、グリーンのドレスの小林さんが登場してコンサートの始まりです。
最初はモーツァルトの「ロンド」です。「ハフナー・セレナーデ」の1曲をクライスラーが編曲したものだそうです。1曲目であり、曲名も「ロンド」ということで、軽い曲かと思ったのですが、いきなりの超絶技巧に圧倒され、猛スピードで突進する熱い演奏に、ノックアウトされました。最初からこういう曲で攻めてくる加藤さんはさすがですね。
ここで加藤さんによる挨拶と曲目紹介があり、2曲目はシューベルトの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」です。初めて聴く曲でしたが、聴き応えある曲でした。
第1楽章は耳に馴染むピアノの調べが心地良く、このまま軽い曲調で終わるのかと思ったのですが、大きな間違いでした。ヴァイオリンと対等にせめぎ合うピアノも素晴らしく、二人の演奏に圧倒され、全4楽章を聴き続けると心地良い疲労感を感じました。
休憩の後、後半最初はベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」です。加藤さんによる曲目解説の後に演奏が進められましたが。ヴァイオリンの美しい調べと心地良いピアノにうっとりと聴き入りました。
響きの少ないホールで、奏者の至近距離でダイレクトに聴いたためか、前半はヴァイオリンの音色が硬質に感じられましたが、後半は潤いが感じられるようになりました。楽器がホールに馴染んだのか、私の耳が馴染んだのかは知りませんが、心地良い響きでした。
加藤さんによる曲紹介があり、最後は「ツィゴイネルワイゼン」です。これには圧倒されました。加藤さんの魅力が炸裂し、ホール埋めた聴衆の心を揺さぶりました。誰もが知るヴァイオリンの定番曲ですが、新たな魅力を知らしめてくれたように思います。新潟の音楽家で聴ける最良の演奏でなかったでしょうか。
大きな拍手に応えて、アンコールはシューマンの「ロマンス」です。先ほどの興奮を鎮めてくれる爽やかな演奏で、心を癒してくれました。
新潟で演奏者として指導者として活躍する加藤さん。そして新潟のみならず全国で活躍する小林さん。期待を裏切らないパフォーマンスに大きな満足感を与えてくれました。今後のますますの活躍を祈念し、ホールを後にしました。
外に出ますと冷たい雨が降り続いていました。寒さも感じましたが、いい音楽を聴かせていただいて、心は温かでした。
(客席:B-9、¥3000) |