ハートウォーミング・ジャズコンサート
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2020年12月27日(日) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
細川千尋ピアノトリオ (Pf:細川千尋、Bass:井上陽介、Drums:セバスティアン・カプテイン)
アップビート・ジャズオーケストラ with ふくまこづえ
長澤好宏クインテット with 大波洋子
 
アップビート・ジャズオーケストラ with ふくまこづえ
  1. Such Sweet Thunder
  2. Moanin'
  3. Georgia On My Mind
  4. LOVE
  5. Blues On Parade

長澤好宏クインテット with 大波洋子
  1. Hush-A-Bye
  2. Recado Bossa Nova
  3. All Of Me
  4. Day Dream
  5. That's All

(休憩20分)

細川千尋ピアノトリオ 
  1. ジョセフ・コズマ:枯葉
  2. 細川千尋:ラヴェルの主題による“ジャズ”狂詩曲
  3. マイルス・デイヴィス:ナーディス
  4. ビリー・ストレイホーン:A 列車で行こう
  5. デューク・エリントン:キャラバン
  6. 細川千尋:Espoir
  7. 細川千尋:黎明 -Reimei-
(アンコール)
    細川千尋:Holiday
 

 ご存知のように、ジャズの巨匠・デューク・エリントンは、1964年の新潟地震に際してチャリティコンサートを開催し、地震からの復興に尽力してくれました。
 エリントンがジャズの力で新潟市民に希望をもたらしたように、今年のコロナ禍にあっても、エリントンと音楽の力で明日への夢と希望、生きる力をもらおうというのが今回のコンサートの趣旨です。

 出演は、地元のアップビート・ジャズオーケストラ with ふくまこづえ、長澤好宏クインテット with 大波洋子 のほか、細川千尋ピアノトリオが出演します。
 細川さんは昨年12月20日に、りゅーとぴあで「細川千尋クリスマスライブ」を開催し、クラシックとジャズのコラボで楽しませてくれました。今回も楽しい演奏が聴けるものと期待が高まりました。

 今日は今年最後の日曜日ということで、各所で1年を締めくくる魅力あるコンサートが開催されました。私もどこに行くか悩ましく、当初は別のコンサートへ行く予定にしていたのですが、このコンサートの開催が突然発表され、急遽このコンサートに目標変更しました。定員750人に絞っての開催ということで、早々にチケットを購入しました。


 今日は曇り空ながらも雨や雪にならず、比較的過ごしやすい日曜日になりました。ゆっくりと昼食を摂り、早めにりゅーとぴあに行ったのですが、既に長い開場待ちの列が延びていました。私もその列に加わり、開場を待ちました。
 しばらくして開場となり、体温測定、手の消毒、問診票記入など、厳密なチェックがなされて入場となりました。客席はステージ前の2列は使用できず、関係者席がかなりあったほかは自由席でしたので、私は2階正面左端に席を取りました。
 
 開演時間となり、テレビ新潟のアナウンサーの司会で開会しました。最初に中原新潟市長へのインタビューと市長による挨拶があり、以後司会者による出演者の紹介の後に演奏が行われました。

 最初は、新潟市を拠点に活動している社会人ビッグバンドのアップビート・ジャズオーケストラです。結成44年目という長い歴史を持つバンドですが、昨年3月の第42回演奏会を聴かせていただき、楽しませていただいたことを覚えています。
 ノリノリのスウィングジャズを2曲演奏し、ゲスト・ヴォーカルのふくまさんを迎えて「Georgia On My Mind」をしっとりと歌い、「LOVE」を身振りを交えて楽しく歌い、最後はこのバンドのテーマ曲的な「Blues On Prarade」を演奏してステージを終えました。演奏する喜びが伝わるような、ウキウキする演奏でした。

 司会者によるインタビューの間にステージ転換され、続いては長澤好宏クインテットです。サックスの長澤さんを中央に、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスの5人です。長澤さんのお名前は存じ上げていましたが、実際の演奏を聴くのは今回が初めてでした。
 これはもう熟練の業といいますか、大人の世界が繰り広げられました。ホテルのラウンジか高級クラブで、カクテルを飲みながら音楽に浸る感じでしょうか。後半3曲はヴォーカルの大波さんを迎え、ムードたっぷりに楽しませていただきました。ジャズの素晴らしさを再認識し、少しだけ大人になった気分でした。

 休憩後の後半は、細川千尋ピアノトリオです。「枯葉」で開演しましたが、原曲の面影はなく、自由自在に音楽が形を変えて跳ね回りました。最初から細川ワールドの炸裂です。細川さんのピアノもさることながら、ベースの井上さん、ドラムスのカプテインさんの妙技に息を飲みました。
 2曲目は細川さんの自作曲の「ラヴェルの主題による“ジャズ”狂詩曲」です。ラヴェルの「スペイン狂詩曲」の中の「マラゲーニャ」を題材にして作られた曲ですが、原曲の面影はほとんど感じられません。ベースの超絶技巧で始まり、パワーあふれる音楽の泉が湧き出ました。
 続けてシームレスに3曲目のマイルス・デイビスの「ナーディス」をパワフルに演奏し、溢れ出るエネルギーに圧倒されました。
 4曲目の「A列車で行こう」と5曲目の「キャラバン」は、今日のコンサートの趣旨でもあるデューク・エリントンにちなんだ曲として、今回初めて演奏すると話されていましたが、とても初めてとは思えない演奏で、別世界にトリップするかのような高揚感を感じました。原曲のテーマを借りて細川さん自身の音楽世界が創り出されていました。
 6曲目は昨年のクリスマス・ライブでも演奏された「エスポワール」です。新潟在住の甥のために作った曲で、大切にしている曲だそうですが、これまでの曲とは対象的に、しっとりと優しさに満ちた曲であり、うっとりと聴き入り、興奮した心が鎮められました。
 そして最後の7曲目は細川さんの「黎明」で、赤い炎が燃え上がるような熱い音楽であり、興奮する音楽に火傷しそうでした。
 大きな拍手に応えて、アンコールに細川さん自作の「ホリデー」を演奏して終演となりました。細川さんの曲作りの素晴らしさ、それを音楽として具現化し、卓越した演奏技術とともに聴衆を魅了したメンバーの素晴らしさは、さすがと言うしかありません。

 ちょっとキュートな短めのドレス姿からは想像できない細川さんのパワーはたいしたものですね。メンバーともども水分を補給しながらの熱演でした。
 寒い冬、さらには疫病神の新型コロナをも蹴散らすような熱い演奏に力をもらい、混沌として明るさの見えない現実の社会を生き抜く元気をいただいたように思います。

 終演は何と17時15分。内容豊富で充実したコンサートでした。照明効果もすばらしく、運営スタッフの皆さんもいい仕事をしていたと思います。
 前半の新潟のミュージシャンの演奏も聴き応えがあり、デューク・エリントンに育まれた新潟のジャズの底力を再認識しました。
 

(客席:2階C4-5、¥1000)