東京交響楽団 東京オペラシティシリーズ第118回
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2020年10月3日(土) 14:00  東京オペラシティ コンサートホール
指揮:大友直人
ソプラノ:嘉目真木子、テノール:錦織 健
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 


千住 明/松本 隆(作詞):詩篇交響曲「源氏物語」 (2008)

  T序曲 U桐壺 V夕顔 W若紫 X葵上 Y朧月夜 
  Z須磨 [明石 \幻 ]終曲

(休憩20分)

シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 op.43

 今週はコンサートに行く予定もなく寂しいですので、ネット視聴した「東京交響楽団東京オペラシティシリーズ第118回」について記録に残しましょう。

 ニコニコ生放送のサイトに接続し、タイムシフトでコンサートを視聴させていただきました。接続しますと画面にはオペラシティのステージが映し出され、音出しの音が聴こえていました。客席はソーシャルディスタンスを配慮してか、まばらでした。

 館内に流れるアナウンスの中に、ステージ上に団員がパラパラと登場して、次々と音出しを始めました。全員揃ってしばらく音出しが続いた後、コンマスのニキティンさんがパラパラ拍手の中に登場。一礼してチューニングとなりました。毎度のことながら、新潟方式に慣れていますと、何とも味気ない開演です。

 オケの配置は通常の並び。オケのサイズは12型でしょうか。コンマスのニキティンさんの隣は廣岡さんです。コンマスと管楽器以外はいつもの東響マスクを着用。パートによっては先回の演奏会とはメンバーが代わっており、日頃見ない顔もちらほら。東響マスクでない人もいますので、客演が混じっておられるのかも知れません。

 前半は千住明の詩篇交響曲「源氏物語」です。この曲は、紫式部の「源氏物語」を元に、松本隆が作詞し、壮大な物語の世界を歌と音楽により描いたものです。2008年10月31日に、今回と同じ大友直人指揮による京都市交響楽団により京都で初演されました。NHK-BSで放送されたそうですが、こんな曲があったとは知りませんでした。
 
 独唱のテノールの錦織さん、ソプラノの嘉目さん、そして指揮の大友さんが登場。当然ながら独唱者はマスクなし。大友さんもマスクなしで、指揮棒なしでした。大友さんは暫くぶりですが、随分と白髪になりましたね。

 1曲目は「序曲」で、おどろおどろしい前奏に始まって、映画音楽風のメロディが流れました。2曲目の「桐壺」は、白いガウンみたいな上着を着た錦織さんが、シンフォニックな音楽とともに歌いました。若々しくて良い声ですね。3曲目の「夕顔」は、静かな序奏に続いて、白いドレスの嘉目さんが物語を歌いました。日本語とはいえ歌詞を聴きとるのは難しかったです。4曲目の「若紫」は、錦織さんが歌いましたが、安っぽいミュージカルみたい。5曲目の「葵上」は、嘉目さんのドラマティックなソプラノが聴き応えありました。6曲目の「朧月夜」は、穏やかな音楽に載せて錦織さんが切々と歌いました。7曲目の「須磨」は、二人の交互の歌の後オケのうねりがあり、そして錦織さんの歌で締めました。8曲目の「明石」は、吹奏楽風のイントロの後、嘉目さんが美しく歌いました。9曲目の「幻」は、錦織、嘉目さん交互に歌い、10曲目の「終曲」は、和太鼓風のリズムに引き続いて京風のハーモニーで、静かにエンディングとなりました。

 「源氏物語」の壮大な世界を、歌で表現する困難さは理解できますが、歌詞が聴き取りにくく、浅学な私は、プログラムに掲載された歌詞を見ないと何を歌っているのか理解できませんでした。字幕があれば分かりやすかったかもしれませんね。いっそオペラ風にしてしまえば感情移入もしやすかったかもしれません。何はともあれ、めったに聴けない曲に接する事ができて良かったです。

 後半はシベリウスの交響曲第2番です。コンマスも含めてパラパラと団員が入場し、それぞれが音出しをして賑やかになりました。全員揃ってしばらくしてニキティンさんが立ち上がってチューニングとなりました。その後大友さんが登場。指揮台に譜面台はなく暗譜での指揮でした。前半同様に指揮棒なしです。

 この曲はシベリウスを代表する人気曲であり、私も好きな曲です。東響新潟定期では、2007年1月の第40回新潟定期で大友さんの指揮で演奏されています。

 第1楽章は弦のアンサンブルに載せて、木管によってお馴染みのメロディが流れ、明るくゆったりとした気分で演奏に引き込まれました。
 第2楽章はティンパニに導かれて、チェロがピチカートでリズムを刻み、その後悲しげな音楽で陰鬱になりますが、明るさを取り戻し、癒しの音楽が流れます。しかし、それも束の間、再び緊張感に包まれ、重々しい空気が流れます。
 第3楽章は、爆走する弦楽に導かれ、美しい癒しのメロディが流れますが、激しく荒々しい弦楽がかき乱します。これに負けずと癒しの音楽がせめぎ合い、やがて喜びの音楽を高らかに歌います。
 切れ間なく第4楽章に突入。勝利の歌を高らかに歌います。喜びも束の間、暗雲が空を覆い、暴風が吹き、荒波に飲まれそうになりますが、やがて嵐は去り、雲間から太陽が降り注ぎ、感動と興奮のフィナーレへと駆け上がりました。
 聴けば聴くほど良い曲ですね。各楽章の対比も面白く、第3楽章から第4楽章への精神的高揚感はたまりませんね。塞ぎ込みがちな心に力をいただいたように思います。
 そう思わせるのも演奏の良さがあってのこと。猛スピードの弦楽アンサンブルでも乱れは全くなく、木管も金管も素晴らしいパフォーマンスを発揮し、ティンパニもお見事でした。さすが我らが東響と感慨に耽りました。

 こんな素晴らしい演奏を無料で聴かせていただき東響に感謝です。ホールで聴けばもっと感動的だったことでしょうが、ネット中継でも十分な感動をいただきました。ありがとうございました。
 
  

(客席:ネット視聴、無料)