先月に引き続いてのSanDoコンサートです。ベートーヴェン生誕250周年企画が先回から始まり、今回が2回目となります。今回の出演は、ピアノの平林弓奈さんとチェロの片野大輔さんです。
平林弓奈さんは長野県松本市の出身で、現在は長岡市在住でいらっしゃいます。武蔵野音楽大学付属高等学校を卒業と同時に渡仏し、コンセルヴァトワール・ムニシポー、サンモール・コンセルヴァトワール、パリ・エコール・ノルマル音楽院等で12年間に渡り研鑽を積まれ、数々のコンクールで優勝・上位入賞を果たされています。
2007年12月に帰国し、東京や故郷の松本市を中心に演奏活動をされ、6年前に結婚を機に長岡市に来られました。地縁・血縁もない長岡ではありましたが、ピアノ指導者として、演奏者として活動を始められ、私は2017年2月のSanDoコンサートを聴かせていただき、フランスの香りが漂うような美しいピアノの響きとパワー溢れる演奏に魅了されました。
その後県内各地で活発な演奏活動をされ、東京フィルとの共演もされています。直近では、7月5日のりゅーとぴあでのステイ・アット・ニイガタ・コンサート2日目に出演されていましたが、仕事で行けず残念に思っていました。
ということで、今回のSanDoコンサートは平林弓奈さんの出演ということで、是非とも聴かせていただこうと思い、2ヶ月連続で朝日酒造へと駆けつけた次第です。
今日は夜中は雨降りでしたが、夜明け前に雨はあがり、暑すぎもなく過ごしやすい陽気になりました。新潟市から、いつもの吉田・分水・与板経由で長岡入りし、長岡ICの西側を通って南下し、朝日酒造本社に着きました。西区にある私の家から60kmで、高速を使わなくても快適なドライブコースです。
到着しますと、ちょうど開場時間となり、検温を受け、当日券を買って入場しました。先回と同様に、小型のスタインウェイを取り囲むように、ゆったりと椅子が配置されており、中央前方に席を取りました。
開演時間となり、片野さんの挨拶と曲目紹介の後、紫色のドレスの平林さんが楽譜を携えて登場して、譜メクリストが付いて「月光」で開演しました。
柔らかな第1楽章はホールの残響の豊かさもあって、しっとりと夢幻の世界へと誘い、第2楽章、第3楽章とスピードアップ、パワーアップして聴衆を魅了しました。
ここで片野さん登場して、平林さんへのインタビューがあり、長岡に嫁いできた経緯など話してくれました。前記しましたように、平林さんはパリで研鑽を積まれましたが、そのパリでご主人と出会われ、6年前に長岡市のお菓子屋さんに嫁がれたそうです。6歳のお子さんもおられるそうで、一気に親近感が沸きました。
片野さんの曲目解説の後、次は「熱情」です。曲調もありますが、第1楽章から平林さんのパワー全開で、第3楽章終盤は猛スピードでフィナーレへと駆け上がり、小型のスタインウェイが壊れるんじゃないかと心配するほどでした。容積の大きいエントランスホールいっぱいに響き渡るピアノの音。豊潤な残響に包まれ、高揚感を感じました。
演奏中は表情も変えず、クールビューティという感じですが、生み出される音楽は熱く燃えるものでした。スリムな体からは想像できないパワーに圧倒され、平林さんの魅力が爆発しました。
休憩後の後半は、チェロの片野さんとの共演です。平林さんは紫色のドレスですが、片野さんは普通の白いYシャツ姿で、普段着という感じ。このアットホームな感じも良いですね。
最初はベートーヴェンの「ユダスマカベウス」の主題による12の変奏曲です。誰もが知る表彰式の定番曲のメロディーが次々に形を変えて登場します。ゆったりとゆるやかな演奏で気持ちを和ませていただきました。
ここまででベートーヴェン企画は終わり、以後はチェコの作曲家の曲となります。3月にこのお二人でコンサートを予定していて、準備を進めていた曲だそうです。新型コロナ禍でコンサートは中止されて演奏の機会がありませんでしたが、せっかく準備していたので今回演奏することにしたそうです。
まずはドヴォルザークの2曲が続けて演奏されました。朗々と音量豊かに響き渡るチェロの美しさに魅了されました。平林さんの美しいピアノに支えられて、片野さんの音楽性の豊かさを感じさせる素晴らしい演奏でした。
続くヤナーチェクの「おとぎ話」は3つの部分から構成されていますが、「おとぎ話」という言葉からイメージするファンタジー溢れる曲ではなく、激しい戦いが眼前で繰り広げられ、荒波に飲まれるような疲労感と興奮を感じ、平林さんと片野さんの熱い演奏に打ちのめされました。
最後のポッパーも片野さんのパワー全開で、抜群のテクニックと音楽性の豊かさでホールを埋めた聴衆を魅了し、新潟を代表するチェリストとしての存在感を示しました。
予定のプログラムが終わり、恒例の抽選会となりました。チケットの半券の番号で3人に朝日酒造のお土産が贈られました。
そしてアンコールは、これまでの興奮を鎮めるためにデザート代わりに「白鳥」をしっとりと演奏し、終演となりました。演奏を始めるタイミングで、エントランスホールの入り口から夕日が差し込み、片野さんにスポットライトが当たるような形となり、偶然ではありますが、粋な演出となりました。
期待にたがわぬ演奏、いや期待以上の演奏に満足感を感じ、家路に着きました。帰りも高速代をけちって下道で帰りましたが、吉田市街で渋滞となり、農道を走れば良かったと悔やみました。
(客席:中央・前方、当日券:\1200) |