ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
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2019年11月1日(金) 19:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:ケント・ナガノ
ピアノ:辻井伸行
 


ヴィトマン:Con brio オーケストラのための演奏会用序曲

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op.73「皇帝」

(ソリストアンコール) ショパン:「革命」

(休憩20分)

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 Op.68

 新潟初公演のハンブルグ・フィル。そして指揮はケント・ナガノ。オケだけでも十分に魅力的なのですが、共演が辻井伸行さんとあって、大変楽しみにしていました。辻井さんを聴くのは、昨年11月のアシュケナージ指揮アイスランド交響楽団との共演を聴いて以来1年振りになります。

 今回のケント・ナガノ指揮ハンブル・フィルの来日公演は、全て辻井さんとの共演がプログラムされており、Aプロがベトーヴェンの「エグモント」序曲、リストのピアノ協奏曲第1番、マーラーの交響曲第5番で、Bプロがヴィトマンの「コン・ブリオ」、ベートーヴェンの「皇帝」、ブラームスの交響曲第1番となっています。新潟はBプロです。
 昨日のサントリーホールでの公演で始まり、今日が新潟、明日は名古屋、4日は大阪、5日は東京、6日は高崎、8日が福岡と、全7公演が続きます。移動も大変そうですが、頑張っていただきたいと思います。

 今日は平日公演ということで仕事を調整し、何とか聴きに行くことができました。19時開演ならまだしも、18時半開演は厳しいものがあります。他会場は19時開演なのに新潟だけ18時半。今日中に移動するのでしょうか。

 仕事を早く片付け、17時半に職場を出て、安全運転の範囲内で大急ぎで車を走らせ、ぎりぎりに開演5分前に無事到着できました。
 ホールに入りますと、意外にもサイド席にはかなりの空席がありました。これまでの辻井さんの公演は、どれもチケット完売で、私もチケットを買えなかったことがあったのですが、今回はどうしたことでしょうね。

 時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで待ち、拍手に応えていました。ステージには既にピアノがセッティングされていました。オケの配置は通常型で、第1ヴァイオリンが14人の14型ですが、コントラバスが9人もいました。

 スマートな体型のナガノさんが登場して、最初はヴィトマンの「コン・ブリオ」。2008年にヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団により初演された現代曲で、ベートーヴェンの交響曲第8番、第7番のプログラムに添える1曲として依頼された曲だそうです。
 「コン・ブリオ」とは「生き生きと」という意味とのこと。無教養な私は知りませんでしたが、ベートーヴェンがこよなく愛した表現語で、たくさんの曲で使われていると解説に書かれていました。次の「皇帝」を意識しての選曲なんでしょうね。
 音を出さずに息だけ吹き出すような金管の音。縁を叩くティンパニ。音響的にも面白く、凡人の私には曲の意味するところの理解には及びませんが、それなりに楽しめました。こういう曲はコンサートでしか楽しめず、貴重な体験でした。

 オケの編成が若干削られて12型となり、ナガノさんにエスコートされて辻井さんが登場し、ベートーヴェンの「皇帝」です。
 淀みなく流れ出る泉のごとく、音楽が軽やかに、滑らかに流れ出ます。音は明るく輝き、ベートーヴェンの肖像画のような苦虫を噛み潰したような暗さはありません。この曲に勝手に抱く壮麗な、絢爛豪華な印象はなく、爽やかな音楽に感じました。春の草原を吹きぬける風の中に、馬に乗って疾走するかのような風景が眼前に浮かびました。
 疾風の如く駆け抜けるピアノはベートーヴェンというより辻井さんの音楽そのもの。 オケも猛スピードで追従し、辻井さんの感情の爆発をサポートしました。
 一期一会の感動と興奮の演奏に、否応なしに興奮させられました。流れるような指使いは、原曲より音符が多いのではないかと思うほど。辻井さん流にデフォルメされた音楽は、これまでに聴いたどの「皇帝」とも異質であり、新鮮な感動を誘いました。

 正面のみならず左右・後方の席にも礼をし、大きな拍手に応える辻井さん。アンコールはショパンの「革命」。ナガノさんにサポートされて椅子に座るや否や猛スピードで演奏開始しました。
 これ以上ないくらいの暴走にあっけにとられるほど。そんなに急がなくたっていいのに・・。これはもう、ショパンでなく、辻井さんの「革命」です。降参するしかありません。「皇帝」の興奮をさらにアップさせた「革命」。完全にノックアウトです。

 興奮を鎮めにロビーをうろついていますと、知った顔が多数。皆さん楽しみにしていたんですね。いろいろお話しできて良かったです。

 さて、後半はブラームスの交響曲第1番です。オケは16型に拡大され、ステージいっぱいのオケは視覚的にも壮観です。
 前半の爽やかに駆け抜けた演奏から一転して、正統的な音楽が流れ出ました。オケの個性なのでしょうが、重厚感の中にも明るさを感じました。
 冒頭のティンパニの連打を聴きながら、前半の興奮が薄らぐほどに、一気にブラームスの音世界に引き込まれました。ナガノさんが作り出す壮大な音楽に心を委ねました。
 第2楽章をゆったりと歌わせ、コンマスのソロも美しく、第3楽章を軽やかに駆け抜け、第4楽章の力強く刻む弦のピチカートから、暗黒の世界に差し込む一条の光のようなホルンの調べ。フルートに引き継がれ、そして金管のコラール。弦楽によりお馴染みのメロディが奏でられますと、否応なしに感動が込み上げてきます。
 スピードアップして興奮と感動のフィナーレを迎え、ブラボーの声とともに、ナガノさんが作り上げた燃え上がる演奏を、聴衆は大きな拍手で讃えました。拍手に応えて、オケはP席にも礼をして、感動のコンサートは終演となりました。 

 期待通りのいいコンサートでした。ただし、やはり18時半の開演は早いですね。遅刻した客も多く、「皇帝」の第1楽章終了後にゾロゾロと入場し、第2楽章の演奏開始が少し待たされました。また、演奏途中で退席する人がいつになく多かったのも残念でした。
 局所的問題ですが、演奏中には客席で指揮しないでもらいたいです。前の席で指揮(?)されてしまいますと気になってしまいます。こんなことでイラ着いているようじゃ修行が足りませんね。イカン、イカン。

  

(客席:2階C7-1 、会員割引¥14400)