大型連休も後半となり、今日が何の日なのかもわからなくなってしまいそうです。そんな憲法記念日は晴天に恵まれて、爽やかな春の休日となりました。
開場時間10分前に音楽文化会館に行ったのですが、すでに開場されていました。大方の席はすでに埋まっており、前方に空きを見つけて席を取りました。チケット完売とのことで、客席はびっしりで、熱気に包まれていました。
笛田さんは湯沢町の出身ですが、高校の3年間は新潟市で過ごされ、出身校の敬和学園高校関係者が主体となって実行委員会が作られ、新潟市初のリサイタルが実現したとのことです。
日本のみならず、世界で活躍する笛田さんが、新潟市での単独リサイタルはこれが初めてというのは意外であり、どうしてだったのかと、逆に思うほどです。
私は、今年のNHKニューイヤー・オペラコンサートで笛田さんの歌を聴くことができましたが、実際のコンサートで聴くのは、2008年3月、2010年1月以来、9年振り3回目となります。
前回はまだ若手として活躍されていましたが、あれから年月が過ぎ、すっかりと実績を積まれ、今や日本を代表するテノール歌手となっておられます。配布されたプログラムに今後のスケジュールが出ていましたが、日本各地でのコンサートがびっしり。すばらしいことと思います。
ステージには立派な生花が飾られて、初リサイタルの祝祭気分を盛り上げていました。私の席周辺は、笛田さんの知り合いの方が多いらしく、開演までの間お話しが賑やかでした。
時間となり、笛田さんとピアノの五十嵐さんが登場して、レオンカヴァッロの「朝の歌」で開演しました。最初から声量の豊かさに圧倒され、もう少し後方に席を取ればよかったかなと思うほど。この声なら、大きなオペラ劇場でも隅々まで声が通ることでしょう。
以後、五十嵐さんの司会進行で演奏が進められました。なかなかの実力者のようで、ピアノ演奏のほかに、ローマなまりのトークで笛田さんをしっかりとサポートしていました。笛田さんは風邪で調子が良くないと話されていましたが、そんなことは感じさせない見事な歌声でした。
その後前半は、レハールの「君はわが心のすべて」、ビクシオの「マリウ愛の言葉を」と3曲続けて歌った後、ピアニストのヴィンチェンツォ・スカレーラ氏に勧められて取り組んでいるというトスティの「アマランタの4つの歌」で新境地を開き、今年のNHKニューイヤー・オペラコンサートでも歌ってブラボーが湧き上がったプッチーニの「ラ・ボエーム」からの「冷たき手を」で、ホールを埋めた聴衆は感動の渦に誘い込まれ、圧倒された中に休憩に入りました。
後半は、五十嵐さんが笛田さんとしては珍しいフランス物だと話されていましたが、マスネの曲を3曲歌った後、プッチーニの「トスカ」となりました。予定プログラムでは「妙なる調和」だけでしたが、五十嵐さんの気転で、定番の「星は光りぬ」も歌ってくれました。
続いては誰もが知る名曲で楽しませてくれましたが、最初の「帰れソレントへ」は当初のプログラムにはなく、きっと歌ってくれるだろうということで五十嵐さんが打ち合わせなくピアノ演奏を始めて、途中から笛田さんが出てきて歌ってくれました。その後「カタリ・カタリ」、「ゴッドファーザー」と歌ってホールは大盛り上がりでした。
最後はテノールの定番「誰も寝てはならぬ」の圧倒的な歌声で予定されたプログラムは終了。当然ながら、ホールはブラボーの嵐となり、アンコールが4曲歌われました。
「グラナダ」で熱狂した後、客席とともに歌った「ふるさと」では、私の周囲の人の見事な歌声にも驚きました。アンコールの曲目を見れば想像できましょうが、観衆を熱狂させるに最適な曲。「女心の歌」そして、最後の「オーソレミオ」で興奮の中に終演となりました。
終演後に笛田さんは2階ロビーに出てきて、一人一人見送ってくれました。期待にたがわぬパワー溢れる歌声に感動をいただき、幸せな気分でホールを後にしました。当然今年のベストコンサート候補に挙げておきましょう。
(客席:3-9、¥3000) |