今回の東響新潟定期は、昨日のオペラシティ・シリーズと同じ演目で、1988年、ロシア生まれという若き指揮者エメラニチェフと英国の熟練のピアニストスティーヴン・ハフの共演です。
エメラニチェフは、もちろん初めてです。この若さでモダンとバロック・オーケストラの両方を指揮し、オペラも指揮しているといいますからたいしたものですね。定番の名曲をどのように指揮してくれるか楽しみでした。
そして共演するハフも生で聴くのは初めてです。サン=サーンスのピアノ協奏曲集とチャイコフスキーのピアノ協奏曲全集のCDを持っているのですが、それぞれの曲のベストの演奏と個人的には感じており、実際の演奏を聴いてみたいと以前より思っていました。実は今シーズンの東響新潟定期の中でも最も楽しみにしていました。
古町7番町から古町通りをゆっくり歩き、りゅーとぴあ入り。隣の県民会館には若者たちで賑わい、劇場は開場待ちの長い列ができていました。ホールに入りますと、ポピュラーな演目もあってか、いつもより客の入りは良いようでした。
拍手の中に団員が入場。オケは小型で、弦5部は10-10-8-6-4といういわゆる10型でした。ヴァイオリンは左右に別れる対向配置ですが、ヴィオラが左、チェロが右、コントラバスは最後列という変則的な配置でした。コンマスは水谷さん、次席は廣岡さん。ロビコンに出られた4人のお姿はなく、休憩中でしょうか。
長髪でイケメンの指揮者が登場して「フィンガルの洞窟」で開演です。明るく軽快な演奏で、爽やかさを感じさせました。東響のアンサンブルも素晴らしく、途中のクラリネットの二重奏も美しかったです。1曲目から魅了されました。
ステージにピアノがセットされ、続いては「皇帝」です。1曲目の印象と同様に、快活で明るく、輝きのある演奏でした。元気に突進する指揮者と堂々と渡り合う熟練のピアノ。互いに競り合いながらも、結局はピアニストがコントロールしているようでした。さすがにハフさんですね。
宝石がきらめくような第1楽章、思いっきり謳わせて恍惚の世界へといざなう第2楽章。そして、エンジン全開に駆け抜けていく第3楽章。
もっと爆発するかと思いましたが、適度に抑制し、乱れることなくフィナーレへと突進しました。東響の各奏者とも最高のパフォーマンスを発揮し、バロックティンパニの渋い音が演奏を〆ていました。
ピアノ、指揮者、オーケストラが三位一体となり、青春を謳歌するかのような、生き生きとした躍動感あふれる音楽を作り出しました。
休憩後の後半はブラームスです。オケは弦が増員されて編成が大きくなり、通常の14型となり、弦5部は14-12-10-8-7でした。ロビコンで活躍された皆さんも席に着き、青木さんはヴィオラのトップに、ロビコンでヴィオラを弾いた第1ヴァイオリン・フォアシュピーラーの木村さんは第2プルトに着席されました。ティンパニは通常のものになりました。
演奏は前半以上に生命感、躍動感にあふれ、光り輝く音楽がホールを満たしました。一貫して速いテンポで、淀みなく流れる音楽は心地よく、爽快な気分にさせます。苦虫をかみつぶしたような、渋いブラームスのイメージはなく、爽やかな風が吹く緑の草原を、踊りながら走り回る若者の姿をイメージしました。
圧巻は終楽章。ホルンの決めどころがばっちりと決まり、歓喜の歌を歌い上げました。世間の荒波に暗く沈んだ心に、一条の光がさすようなホルンのファンファーレ。やがて光は輝きとなり、暗い洞窟の暗闇から光り輝く外界へと解放されました。
みなぎるパワーを振りまきながら、元気いっぱいに飛び回る若き指揮者とともに、東響の皆さんは踊り狂い、熱く爆発する音楽をホールいっぱいに響き渡らせました。
こんなブラームスを聴けるなんて、何と幸せなことでしょう。何も言うことはありません。聴く者の心を揺り動かす音楽のパワーに圧倒されるばかりでした。音楽ってすばらしいなあ、と燃え上がる感動を抑えきれませんでした。指揮者とともに、熱く爆発した東響の皆さんにブラボーを贈りたいと思います。
鳴り止まない拍手に応えて、最後は指揮者に促されてオーケストラ全員揃っての礼。P席に向かっても礼をして、さらに大きな拍手が贈られました。
定番曲が並び、クラシックコンサートの王道を行くようなプログラムでしたが、新鮮な輝きを感じる良い演奏会でした。今年のベストコンサート候補に挙げておきたいと思います。
台風が襲来中で、外は荒れ模様かと思ったのですが、まだ穏やかな天候でした。これから強風が予想され、新幹線も止まりました。東響の皆さんの帰りの足はなく、新潟泊まりでしょうか。ご苦労様です。明日ゆっくりお帰りください。
(客席:2階C*-*、S席:定期会員) |