大阪フィルハーモニー交響楽団第498回定期演奏会
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2016年5月20日(金) 19:00  フェスティバルホール
 
指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
ピアノ:アンナ・ヴィニツカヤ
コンサートマスター:田野倉雅秋



チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18

(ソリストアンコール)
ショスタコーヴィチ:ワルツ スケルツォ

(休憩20分)

ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲
 
 

 今週は神戸への出張があり、夜の予定を検索しましたらこの演奏会があることが判明し、せっかくの機会ですので、聴かせていただくことにしました。

 日本にはたくさんのオーケストラがありますが、そのオケの実力を推し量るには、本拠地での定期演奏会を聴くのが一番だと思います。
 大阪フィルは、昨年9月に新潟に来演しており、そのときは高関健さんの指揮で、「新世界」、「未完成」、「運命」という名曲プログラムで楽しませてくれました。そのときは、アウェイであるりゅーとぴあの響きに慣れなかったためか、少し荒っぽいサウンドに聴こえましたが、今回はホームであるフェスティバルホールでの演奏ですので、期待が高まりました。また、2013年4月に開館した二代目フェスティバルホールも見てみたかったので、一石二鳥という感じでした。
 そして今日の指揮者のウルバンスキは、昨年の第92回東響新潟定期で快演を聴かせてくれて新潟でもお馴染みであり、来週の東響新潟定期にも登場します。今日はその前哨戦ということでお手並み拝見というところです。

 さて、フェスティバルホールは大阪の中之島にあり、地下鉄四つ橋線・肥後橋駅(西梅田駅から1つめ)からすぐですが、JR大阪駅や阪神梅田駅からなら歩いても10分ほどで行けます。フェスティバルタワーという高層ビルの低層階がホールとなっています。
 1階のエントランスに入りますと、赤いじゅうたんの大階段に圧倒されます。階段を上った2階がエントランスホワイエとなっており、ここから長いエスカレーターで5階のメインホワイエに上がっていきます。大阪を代表するホールだけあって、3層吹き抜けのホワイエなど、なかなか豪華な作りで、私のような田舎者は圧倒されそうです。
 レセさんの制服は真っ赤なジャケットです。じゅうたんの色、客席の色に合わせたものでしょうか。派手であり、大阪らしさを感じさせます。

 開演前のホワイエでは、事務局員によるプレトークが行われました。大阪フィル定期の名物だそうであり、曲目や出演者についての説明と質問コーナーが設けられています。
 ここで、ウルバンスキの天才振りを聞かせてくれました。今日の演目のルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲は非常に複雑な曲であり、演奏される機会も少ないのですが、ウルバンスキは初日の練習から暗譜で指揮したそうです。楽譜に書かれた練習番号まで完全に暗記しており、団員は度肝を抜かれたとのことです。
 また、質問コーナーも面白かったです。演目に関係なく、内容を問わない質問に対してその場で答えてくれるというもので、オケと客との良好な関係が伺われました。こういう趣向は新潟でもあったら面白いですね。

 開演時間ぎりぎりまでプレトークは盛り上がり、開演を告げる鳥の鳴き声とともに入場しました。私の席は1階席の中央右よりです。A席ですが、S席の設定がありませんので、最高ランクということになります。

 拍手のない中、団員が静かに入場。コンマスが礼をして拍手が贈られました。ウルバンスキが登場して、最初は「ロメオとジュリエット」です。指揮台に譜面台はなく暗譜での指揮です。
 ダイナミックな切れの良い演奏は爽やかさを感じさせました。ただし、巨大なホールの音響は澄んでいて、残響も豊富で、透明感があって美しいのですが、音が拡散され、マスとしての迫力、音量感が希薄に思えました。りゅーとぴあの狭い空間で聴く豊潤なサウンドに慣れてしまっているせいかもしれません。

 続いては美しいヴィニツカヤとの競演で、ラフマニノフです。今度は譜面台が用意されました。音響的には、席がホールの中ほどにも関わらず、遠くでオケやピアノが鳴っているような印象でした。演奏は、濃厚でロマンチックでしたが、知的で、節度あるもので、コテコテの演奏でなくて良かったです。美男美女の組み合わせはヴィジュアル的にも良かったのではないでしょうか。
 ソリストアンコールのショスタコーヴィチの小品は、軽快で、ユーモアあふれるものであり、思わず心が和むようでした。選曲のセンスの良さを感じました。

 休憩後はルトスワフスキです。指揮台に譜面台はなく、プレトークで事務局員が話していたように、複雑極まりないこの曲を、暗譜で指揮していました。定期演奏会ならではの曲でしたが、ウルバンスキの明快な指揮で、魅力ある曲に仕上げてくれて、楽しませていただきました。
 細かな指揮者の指示出しに、オケは見事に反応し、演奏は完璧だったのではないでしょうか。ホールの響きに私の耳も慣れ、迫力ある中にも解像度が高く、音に包み込まれるような音響を堪能しました。大阪フィルの実力の高さを実感することが出来ました。
 この定期演奏会は2700席のホールで2回開催されます。これがほぼ満席というのですから、大阪フィルの人気のほどが伺えます。

 さて、チェロのトップのトップの近藤さんは、アンサンブル・ベガ等で新潟でもお馴染みで、友人に会えたような親近感を感じました。そして、ハープは客演でしたが、何と山宮るり子さんのお名前がクレジットされていました。遠くで顔を確認することは出来ませんでしたが、こんなところでも活躍されていたんですね。
 
 来週の東響定期がますます楽しみになるような充実した演奏会でした。ウルバンスキの活躍は今後も見逃せません。

 

(客席:1階 20-47、A席:¥6000)