佐渡裕指揮 兵庫芸術文化センター管弦楽団
←前  次→
2015年4月17日(金) 18:30  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:佐渡 裕
ピアノ:エフゲニ・ボジャノフ
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
コンサートマスター:豊嶋泰嗣
 


ウェーバー:舞踏への勧誘 op.65, J.260

ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 op.21

 (ソリストアンコール) ショパン:ワルツ 34-2

(休憩20分)

ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 op.73

(アンコール) すみれの花咲く頃
 
 

 一度聴いてみたかった兵庫芸術文化センター管弦楽団が新潟に来演するとあって、ちょっと楽しみにしていた公演です。指揮は、もちろん芸術監督の佐渡裕。テレビでおなじみということもあって、チケットの売れ行きも良いようでした。今回は、創立10周年記念の全国ツアーで、全12公演の3日目です。

 しかし、平日の開催で、それも18時半の開演とあっては、なかなかスケジュール調整が難しいところです。後半だけでも聴ければ良いかなと思ってチケットを買っていました。職場に根回しをして、何とか17時半に職場を出ることができ、大急ぎで車を飛ばし、開演時間ぎりぎりにホール入りすることができました。

 中に入りますと、サイド席に若干の空席がありますが、なかなかの入りとなっていました。おそらくは佐渡さん目当ての客が多いものと思われ、東響定期とはかなり客層が違うようでした。

 早速開演かと思ったのですが、佐渡さんだけ出てきて、長々とトークが始まりました。これまでの新潟への来演のこと、オケのこと、そして曲目の解説など15分位も話されていました。

 漸くオケメンバーが出て開演です。拍手に応えて全員揃うまで起立して待ち、コンマスが一礼してチューニングが始まりました。オケの配置は通常の配置ですが、右手前はヴィオラでなくてチェロになっていました。
 若手奏者の育成を目的としたオケであり、国内外の若手音楽家がメンバーとなっていますが、各セクションのトップにはゲストプレイヤー、スペシャルプレイヤーが配置され、要所を固めているようです。

 最初は「舞踏への勧誘」。ゲスト奏者のヴァイゲルさんの美しいチェロ独奏により、曲名のように音楽へと勧誘されました。
 オケの音色は、いつも聴いている東響とは明らかに異なり、若さあふれる華やかな音ともいえますが、厚みに欠けた、薄っぺらい音にも思えました。この辺は個人的好みにもよりましょうが、ホールの響きの良さのため、賑やか過ぎるようにも感じました。
 演奏そのものは文句はなく、上品というより粗っぽかったですが、華やかな舞踏の世界を楽しめました。最後をしっとりとチェロ独奏でしめて、コンサートの出だしとしては良かったと思います。

 続いてはボジャノフが登場して、ショパンの2番のコンチェルトです。ボジャノフといえば、2011年10月に、佐渡裕指揮のベルリン・ドイツ交響楽団との共演を、新潟長岡で連続して聴いたのが記憶に新しいところです。翌年は新潟でリサイタルをやったのですが、そちらは仕事で聴けませんでした。
 ピアノの椅子は極端に低く、弾く姿勢は独特です。演奏も独特で、緩急を大きく誇張し、独自のショパンを創り出していました。テンポを大きく揺らすので、別の曲に思えるほどです。ショパン作曲・ボジャノフ編曲とでもしたら良いのかもしれません。
 特に第2楽章は超スローであり、これまでの人生で、これほどゆっくりな演奏は聴いたことがなかったように思います。プレトークで佐渡さんが、あまりにゆっくりで、オケを合わせるのが大変だと話されていましたが、それが良く分かりました。
 ロマンチックなはずの第2楽章は、あまりのスローさで音楽は途切れ、せっかくの曲が台無しにされたようにさえ感じました。本人は自己陶酔しているようでしたが・・。
 第3楽章は何とか通常のスピードになり、最後は〆てくれました。オケもゆっくりさに耐え切れず、ピアノのない部分ではアクセル全開で飛ばして、鬱憤を晴らしていたように感じました。会場の大きな拍手とは裏腹に、白けた気分だったのは私だけでしたでしょうか。

 ソリストアンコールがあり、ショパンのワルツが演奏されましたが、これも大きくデフォルメされたもの。緩急自在の抜群のテクニックともいえますが、どう考えてもワルツじゃありません。

 休憩時間にたまたま出会った友人に感想を話しましたら、私と同じような感想を持っておられていてほっとしました。
 
 後半はブラームスの2番です。前半同様に、オケの粗さは感じましたが、若さとスピード感があり、エネルギーを爆発させるような、生き生きとした演奏に、気分良く楽しむことができました。東響を聴き慣れているためか、オケの質としてはどうかなあ、と感じる場面もありましたが、佐渡さんの指揮に見事に応えて、興奮のフィナーレを迎えました。

 アンコールは、兵庫にちなんでか、宝塚でお馴染みの「すみれの花咲く頃」。このときの弦のアンサンブルの素晴らしさ、濁りのない響きに驚嘆しました。始めからこの響きを聴かせてくれれば良かったのにと思わずにはいられませんでした。佐渡さんの鍵盤ハーモニカ演奏も交えて、サービス満点な演出に、気分よく終演を迎えることができました。

 終わりよければ全て良し。難点も感じたコンサートではありましたが、明るい気持ちで帰路に着きました。

 ちなみに、佐渡さんは今年の9月から、ウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任します。早速来年の5月には日本公演を行い、5月15日に新潟で演奏するそうです。

 

 (客席:2階C4-5、S席:会員割引:\8100)