小黒亜紀ピアノリサイタル
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2015年3月1日(日) 13:30  だいしホール
 
ピアノ:小黒亜紀
 


スカルラッテイ:ソナタ ニ短調 K.9/L.413
スカルラッテイ:ソナタ ホ短調 K.531/L.430
スカルラッテイ:ソナタ ニ短調 K.35/L.386

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 Op.13 「悲愴」

リスト:リゴレットパラフレーズ

(休憩15分)

朗読/弾き語り(ノーマ・コーネット・マレック、佐川睦・訳、小黒亜紀・作曲)
 最後だとわかっていたなら
リスト:コンソレーション 第3番 変ニ長調

リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調

ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35 第2巻

(アンコール)
ショパン:子犬のワルツ
ラフマニノフ:前奏曲23-5

 

         

 
 

 新潟の若手ピアニストの中で、実力・人気とも絶大なのが小黒亜紀さんです。可憐な容姿とは裏腹の、力強く情熱あふれる演奏が、聴く人の心を虜にします。最近ではナレーションの勉強もされ、新たな世界にも踏み出しています。

 これまでも様々な場面で演奏を聴く機会がありましたが、聴くたびに演奏内容は充実・発展を続け、新潟にこのような演奏家がいる喜びを感じています。
 このリサイタルを前に、コンチェルト・インストアライブで今回のプログラムの一部を聴くことができましたが、すでに完成度は高く、リサイタルへの期待は高まるばかりでした。チケットは早々に完売となり、小黒さん人気の高まりに驚くとともに、ファンとしてはうれしくなりました。

 今日は東響新潟定期の日で、12時半からロビーコンサートがあり、時間的にはしごすることが可能でしたが、小黒さんの演奏に集中するため、ロビコンには行かず、早めにホール入りして開演を待ちました。

 チケット完売だけあって、空席はほとんどありません。客の年齢層は幅広く、小黒さんが幅広い年代に愛されていることが分かります。

 前面に大きなリボンの付いた緑色のドレスの小黒さんが登場して、スカルラッテイのソナタを3つ続けて演奏しました。軽やかに、爽やかに演奏し、春風が吹き抜けるかのようでした。

 続いてのベートーヴェンは、最初の一音を聴いて、すごいと感じました。このホールのピアノは何度も聴いていますが、こんな音を聴くのは初めてのように感じました。ずしりと響く低音に濁りが全くないのです。その後は小黒ワールドに突入です。速めのテンポで駆け抜けて、ダイナミックに音楽が奏でられ、グイグイと攻め込んできます。第二楽章は柔らかに歌い、怒涛の終楽章で燃え上がりました。

 リゴレットパラフレーズは、一転して、きらめく宝石箱のような、クリアな音のうねり、輝く音の洪水に身を委ねました。

 休憩後は、朗読の先生である小柳さんの挨拶と小黒さんのインタビューがあり、本日の目玉というべき弾き語りでスタートしました。小黒さんはクリーム色のドレスに衣裳替えです。
 詩そのものも感動的なのですが、小黒さんの語りと曲の美しさがあいまって、胸に切々と染み渡り、感動の涙を誘いました。インストアライブ以上の胸の高鳴りを感じました。何度聴いても良い曲ですね。作曲家としての小黒さんも注目すべきと思います。朗読の後は切れ目なしにコンソレーションが演奏され、うっとりと聴き入りました。

 次は一転してハンガリー狂詩曲。再び小黒ワールド全開です。抑えられていた感情が弾けるように大爆発です。だいしホールが誇るベーゼンドルファーが壊れちゃうんじゃないかというほどに、すさまじい演奏でした。

 次のパガニーニの主題による変奏曲もエンジン全開です。各変奏を対比させ、味付けは絶妙です。天に突き抜けるが如くのきらめく高音。そして重厚ながらも濁りなく響く低音。ベーゼンドルファーから変幻自在な音を紡ぎだし、音の絵巻を繰り広げました。

 アンコールに子犬のワルツを猛スピードで演奏し、ラフマニノフで締めくくって興奮のリサイタルは終演となりました。

 可愛らしくチャーミングな笑顔。お嬢様的容姿とは裏腹の攻撃的ピアノ。このギャップが小黒さんの魅力です。単に大音量に弾くのではなく、繊細さを併せ持ち、輝きのあるクリアな音も魅力です。

 まだ3月になったばかりですが、おそらく今年のベストコンサート候補に上げるべき演奏だったと思います。こんなピアニストが新潟にいるなんて、凄いことじゃないでしょうか。これからも応援していきたいと思います。

 

(客席:E-6、\2000)