佐村河内 守 交響曲第1番「HIROSHIMA」 特別演奏会
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2013年8月13日(火) 14:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:大友直人
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:水谷 晃
 


佐村河内 守:交響曲第1番「HIROSHIMA」

   第1楽章
   第2楽章
   第3楽章
 
 

 テレビ番組で取り上げられて、今話題の作曲家・佐村河内守。私はこの交響曲のCDが発売されたときに初めて知りましたが、恥ずかしながら、初めは名前の読み方すら知りませんでした。新潟でお馴染みの大友さん指揮による東京交響楽団の演奏ということで、内容もわからぬままCDを買ったのですが、中身の重厚さに驚いたのを覚えています。
 その後、昨年3月の東響新潟定期のロビーコンサートで、大谷さん演奏による「シャコンヌ」に感激し、一気に佐村河内ファンになってしまいました。
 そして、その後テレビ番組で取り上げられて大ブレイクし、CDもベストセラーになったわけですが、この重苦しい曲をクラシックに慣れていない人たちが聴いても退屈するんじゃないかと心配してました。

 そんな心配をよそに、今年は大手興行会社による全国ツアーが始まりました。金聖響さん指揮(公演によってはアレクサンドル・アニシモフ指揮)で、各地のオケで演奏されます。新潟でも急遽公演が決まりましたが、こちらは全国ツアーとは違って、大友さんと東響の組み合わせです。CDのオリジナルメンバーということで期待が膨らみました。
 大友さん/東響の組み合わせでの公演は、新潟のほかは、18日にミューザ川崎で開催されますが、そちらは発売とともに完売。17日に追加公演が組まれたという人気振りです。
 新潟でも本来なら完売となっても不思議じゃないのですが、売れ行きは良くないという情報が伝わってきました。急遽公演が決まって、チケット販売が遅れた(一般発売は7月17日)ことのほかに、問題は開催日です。平日の昼間、それもお盆の13日というのは最悪です。最初聞いたときは信じられず、間違いかと思いました。東京ならいざ知らず、新潟のような田舎では、この日時にコンサートに行ける人は限られてしまうでしょう。私の音楽仲間でも、行きたくても行けないという人が何人もいました。おそらく、ここしか東響の空きがなかったというのが真相なんでしょうね。

 今日は火曜日。当然ながら仕事です。本来なら柏崎への出張の日だったのですが、根回しをして、休みにしてもらいました。お盆でもありますし、年に一回くらいは休みをもらっても許されるでしょう。

 午前中に実家の仏壇参りとお墓参りを済ませ、りゅーとぴあへと向かいました。駐車場に車をとめ、入場する前に、東堀のコンチェルトさんに寄って某コンサートのチケットを買ったのですが、これまであったプレイエルのピアノのほかにピアノがもう1台入っていました。今度はスタインウェイ。プレイエルと同様に木目がきれいなピアノです。今日入ったばかりとのことですが、今後のインストアライブが楽しみです。

 前置きが長くなってしまいましたが、汗を拭き拭きホールに入場しました。予想通り客の入りは思わしくなく、半分程度でしょうか。でも日時を考えればよく集まったとみるべきでしょう。会場には知人の姿も何人かあり、声をかけていただきました。

 開演前に作曲者の佐村河内さんが入場し、1階席左手に着席されて、大きな拍手が贈られました。その後、いつもの東響定期スタイルで拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待っています。ステージいっぱいの大編成のオケは壮観であり、何とホルンは9本もあります。今日のコンマスは、新しく就任した水谷さん。新潟初登場です。

 大友さんが登場し、無音の静寂の後、重々しい低弦の響きで演奏が始まりました。全3楽章からなる長大な交響曲で、それぞれの楽章が緩急様々な部分からなり複雑です。3楽章とも似通った曲調であり、スケールの大きな音楽が奏でられ、フルオーケストラの迫力を感じることができます。ただ、かなり長いので、2008年9月の初演時は、1、3楽章だけ演奏されたというのも理解できました。

 圧巻は、やはり第3楽章でしょう。極論いえば、これだけ聴けば十分という気もします。テレビで取り上げられる終盤の祈りと希望を感じさせるメロディは胸に響きます。思わず目に涙がこみ上げてきました。希望の鐘の音が心に響いて大音響のクライマックスを迎えました。
 第1楽章、第2楽章とも暗くて重い音楽が主体で、時折優しいメロディが垣間見えますが、すぐに暗くて激しい音楽にかき消され、緊張感と疲労感、閉塞感を感じさせます。第3楽章も同様に始まり、絶望的気分になったところで、甘美な癒しのメロディが、暗闇にさす一条の光のごとく湧き上がります。また消えてしまうのではないかという不安感を感じますが、希望の光はさらに輝き、確固たるものとなり、希望の鐘で燃え上がります。この辺の構成が聴く者に感動を与えるように思います。

 カーテンコールでは佐村河内さんがステージに上がってスタンディングオベーション。感動の中終演となりました。佐村河内さんは杖をついておられましたが、何度もステージに出て拍手に応えてくれました。

 この曲は、CDではなく、生演奏で聴いてこそ良さが分かるように思います。無音の静寂と、肌を振るわせるフルオーケストラの大音響。CDではとても味わえません。出張をキャンセルして聴きに来て良かったと思いました。

 プログラムはこの1曲のみ。でも、十分に満足なコンサートでした。でも、正直言えば、今週末の川崎では、交響曲第1番だけでなく、レクイエム・ヒロシマ(弦楽合奏版・世界初演)もやるんですよね。まあ、興業的にみて、後から公演が急遽決まった新潟で初演というわけにもいかないでしょうから、贅沢は言えませんね。
 曲のことばかり書きましたが、当然ながら東響の皆さんの演奏が素晴らしかったことは言うまでもありません。今週末の川崎では、さらに感動的な演奏を聴かせてくれることでしょう。


(客席:2階C3−7、S席:会員割引¥6300)