京都大学交響楽団第190回定期演奏会
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2012年1月22日(日) 14:00  サントリーホール
 
指揮:井上道義
 




ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」

(休憩20分)

マーラー:交響曲第9番 ニ長調

 
 

 昨日新日本フィルで聴いたばかりなのですが、またもやマーラーの9番です。今度は京大オケで、創立95周年の特別演奏会です。年2回の定期演奏会を戦時中も含め、毎年欠かさずに行ってきたというのは驚きです。実は大学の学生オケということで、あまり期待していなかったのですが、大きな間違いでした。

 チケットの売れ行きは良いようで、私が買ったときにはP席しか残がなく、サントリーのP席デビューとなりました。ホールは満席かと思いましたが、当日券も発売され、若干の空席もチラホラ。そちらに移りたくなりましたが、たまにはP席もいいかなと思い直しました。

 拍手の中団員が入場。ヴァイオリンは対向配置で左右に分かれますが、ヴィオラが左、チェロが中央〜右、コントラバスが右に配置されていました。対向配置とはいっても、昨日の新日本フィルや群響とは異なります。

 最初は「天体の音楽」。これを聴いてまずビックリです。これが学生オケなんて信じられませんでした。目を閉じて聴けば、どこかのプロオケと言われても信じることでしょう。
 いつも聴いている学生オケと言えば新潟大学管弦楽団ですが、レベルの違いに愕然としました。さすがに地方の大学と日本の一、二を争うメジャーな大学では大きな格差があるんでしょうね。昔は京都では、京都市交響楽団より上手だったという話も真実みがあります。

 そしてマーラーの9番。学生オケがこれほどの演奏をして良いのでしょうか。先年秋のベルリンフィル来日公演のときに、井上さんも聴きに来ていたことは記事に書きましたが、ベルリンフィルを聴いて、井上さんは刺身のようだと発言されたそうです。素材の良さだけで、指揮者は料理をしていないということ。京大オケの場合は安い素材でおいしい料理を作らなければならないので大変なんだとのこと。何となく分かる気がします。ベルリンフィルなら指揮者が何もしなくてもすばらしい音を出すでしょうね。でも、学生オケはそんなわけにはいきません。

 今回P席で聴いたのですが、これは良かったです。指揮者がどのように指示を出しているのか、それに団員がどう応えているのか一目瞭然でした。
 井上さんは指揮棒を持たずに、暗譜での指揮でした。体をクネクネさせたり、踊るような指揮をしたりしていますが、それには大きな意味があり、全身を使って指揮をしていることがよく分かりました。ひとつひとつの動きで的確に指示を出していることに気づきました。第3楽章だけは、なぜか赤い指揮棒(漆塗り?)を持っての指揮でしたが、きっと意味があるのでしょうね。
 P席は音響的に良くないものと決め込んでいましたが、そんなことはなく、各楽器が身近にきこえ、曲の構成がよく分かり、まさに目からうろこに感じました。

 学生とは思えないプロ並みの演奏ですが、プロにはない何かを持っています。学生ならではの情熱とでも言いましょうか、それが心を打つように思います。最後も絶望で終わるのではなく、明日への希望も感じ取ることができました。ただ死ぬのではなく、再び復活するために死ぬ、そんな感じを受けました。「復活」の歌詞のようですね。正直言って、昨日のハーディングより感動しました。
 

(客席:2階P6-35、A席:1500円)