ズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
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2010年10月30日(土) 19:00  ザ・シンフォニーホール
 
指揮: ズービン・メータ
 
 

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

(休憩20分)

マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」 (花の章付き)

(アンコール)
ムソルグスキー:歌劇「ボヴァンシチナ」より 前奏曲
 
 

 出張で大阪に宿泊することになり、せっかくなのでコンサートを聴こうと検索したところ、この公演があることを知り、聴いてきました。メータもイスラエル・フィルもLP時代から聴いていますが、生演奏は初めてですし、大阪でのコンサートも初めてしたので、大変楽しみにしていました。

 会場のザ・シンフォニーホールは初めてしたが、JR大阪駅からブラブラ景色を眺めながら歩いていたら意外に早く着きました。LIONのビルの近くという情報しかなかったのですが、無事見つけ出すことができました。一度行けば分かりやすい場所ということになりますが、周りを建物に囲まれて目立たないので、せっかくの施設がもったいなく感じました。前の公園の林は静かで良い雰囲気ですが、雪国の感覚で考えると、開場までは外で待たないといけないのは悪天候のときは大変に思います。

 入場するとロビーがありますが、階段を上がると2階に飲食できるロビー、さらに階段を上がって1階席、さらに階段を上って2階サイド席、さらに上がって・・・と、客席に行くのに込み入った階段を上がる必要があるのがわずらわしく感じました。エレベーターはありますけれど。

 今回のチケットは一番高額な席ですがA席となっています。S席がないのが大阪流でしょうか。左サイド最後方の席で、ステージはやや斜めに見渡します。会場は8割程度の入りでしょうか。若干空席が目立ちました。ステージでは奏者が音出ししていました。

 拍手の中に楽員が入場し、いよいよ開演です。弦はヴァイオリンが左右に分かれる対向配置。左にチェロ、コントラバス、右にヴィオラ、その後方にハープ。管楽器は1列目にフルート、オーボエ、2列目にクラリネット、バスクラリネット、ファゴット、3列目にホルンが1列に並び、その後ろにトランペット、トロンボーン、チューバ、最後部に打楽器という配置です。指揮台に譜面台はなく、暗譜での指揮でした。

 メータが登場し、大好きな「春の祭典」の演奏開始です。若かりし頃、メータのLPを愛聴した覚えがあります。ホールのクリアな響きと相まって、奇をてらうことのない期待通りの演奏をしてくれました。
 艶のある芳醇な弦の音色は美しく、さすがと感じさせました。管楽器は名手揃いであり、良い音を出していました。それぞれのソロは文句なし。50年の付き合いで互いに信頼しているためか、メータは統制するのではなく、各奏者に自由に任せていたように感じました。
 その分、ときに音量的なバランスの悪さを感じないでもありませんでしたが、これまで聴いたことのないような響きも感じることができました。特にクラリネットは目立っていました。力いっぱいの打楽器も気持ちよかったです。特に東洋人らしい第2ティンパニの熱演が光っていました。よく整理されて分かりやすい「春祭」であり、最後も大音量でビシッと決めてくれて、気分さわやかでした。

 後半は「巨人」。前半同様に弦の芳醇な響きと見事なアンサンブル、管楽器の音色の美しさ、打楽器の迫力と、私が勝手にこう演奏してほしいと思う通りの演奏をしてくれて、うっとり聴き入りました。

 第1楽章が終わってびっくり。何と第2楽章として「花の章」が演奏されたのです。チラシに花の章付きとは書かれていませんでしたので一瞬どうしたのかと驚きましたが、さすがメータとうなった次第です。
 アンコールに「花の章」を演奏したのは聴いたことがありますが、第2楽章として演奏するのを実演で聴くのは初めてでした。これがまた美しい演奏でした。柔らかな弦の音色の上に浮き立つソフトなトランペット・ソロは絶妙でした。

 その後も期待通りの演奏が続き、強烈なシンバルの一撃とともに第5楽章へ。中間部の甘美な主題が大好きなのですが、見事に歌わせてくれました。金管の咆哮もバッチリ。打楽器も頑張ってます。このままクライマックスへ。
 と期待したのですが、息切れしたのか、一番大事なフィナーレの金管のファンファーレがイマイチ音量不足に感じました。終わりよければ全てよしで、ここまでにミスがあったとしても帳消しにしてくれる決めるべき最重要ポイントと個人的に思っているのですけれど。ホルンを起立させなかったのも問題です。

 ここまでの演奏が良かっただけに、最後の最後で、音量的にも視覚的にも盛り上がりに欠けてしまったのは残念でなりませんでした。総合的には名演奏に違いなく、会場は大盛り上がりではありましたが、へそ曲がりの私は、もうひとつを期待してしまうのでした。何度も言いますが、ホルンは立ってほしいなあ・・・。こんなことにこだわるのは私くらいかなあ・・・。

 カーテンコールが延々と続いて、アンコールが演奏されました。オケはすぐに楽譜を用意してスタンバイしていましたが、メータは出たり引っ込んだりを繰り返し、いい加減にしてと思う頃にコンマスとヒソヒソ話。第2ヴァイオリンのトップから指揮棒を渡されて、漸く演奏開始。熱演後のデザートにちょうど良いしっとりした演奏で良かったです。

 くどいようですが、最後にホルンが起立しなかったのが不満でしたが、総じて良い演奏会だったと思います。程よい大きさで、各楽器の分解能が良く、クリアなホールの響きも良かったです。周囲の環境や階段だらけの館内は問題ですが、すばらしいホールだと思います。
 

(客席:2階LG13、A席:19000円)