茂木大輔のオーケストラ・コンサート No.5
ハイドン、その生涯と交響曲創作史
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2009年5月31日(日) 16:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮・話:茂木大輔
演奏:人間的楽器学管弦楽団 (コンサートミストレス:伊藤文乃)
 
 
ハイドン:オラトリオ「天地創造」Hob.XXI/2 (1798) より 序奏部

ハイドン:交響曲第72番ニ長調「4本ホルン」Hob.I/26 (1763)

ハイドン:交響曲第26番ニ短調「ラメンタチオーネ」Hob.I/26 (1768)

ハイドン:オラトリオ「トビアの帰還」Hob.XXI/1 (1775) より 第10曲b 
      ラファエルのアリア ”私が天の言葉を語るとき” (ソプラノ:半田美和子)

(休憩15分)

ハイドン:交響曲第70番ニ長調Hob.I/70 (1779)

ハイドン:交響曲第94番ト長調「驚愕」Hob.I/94 (1791)

ハイドン:弦楽四重奏曲ハ長調 Op.76-3 Hob.III/77「皇帝」 (1797) より 
       第2楽章主題 「皇帝賛歌」 (弦楽合奏版)

ハイドン:オラトリオ「天地創造」Hob.XXI/2 (1798) より 
      第9曲 ガブリエルのアリア ”そして新緑が目を悦ばせ(草花の創造)”
                                    (ソプラノ:半田美和子)

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲ヘ長調 Op.18-1 (1799) より 第1楽章
ハイドン:弦楽四重奏曲第83番「白鳥の歌」Hob.III/83 (1803) より 第2楽章
          (Vn1:伊藤文乃、Vn2:遠藤香奈子、Va:鈴木るか、Vc:西谷牧人)

ハイドン:オラトリオ「天地創造」Hob.XXI/2 (1798) より 
      第33曲 アダムとエヴァの二重唱 ”優しき妻よ、お前の傍らにあれば”
                          (ソプラノ:半田美和子、バス:押見春喜)

(アンコール)
ハイドン:交響曲第45番嬰ヘ短調「告別」 より 第4楽章
ハイドン:交響曲第44番ホ短調「悲しみ」 より 第3楽章
 
  

 毎年恒例になった茂木さんの解説付きのコンサートです。毎回興味深い話題と、スライドを使った分かりやすい解説、そして素晴らしい演奏が楽しめるため、早々にチケットを買って楽しみにしていました。今年はハイドン没後200年ということで、りゅーとぴあではハイドン・ツィクルスを開催しますが、その第1回が今日のコンサートです。今日5月31日は、ちょうどハイドンの命日に当たります。

 今週末は天候が優れず、どんよりとした天気です。早めにホールに着いたので、やすらぎ堤を散歩して帰ったら、ちょうど開場が始まっていました。ホワイエではCDや書籍の販売が行われていましたが、昨年のベートーヴェンのコンサートのDVDが販売されていたので、記念に買いました。
 客席は、1階席のサイドや2階正面のS席エリアに空席がありますが、2階両サイドは満席であり、演目を考えるとそれなりの入りと言えましょうか。全くの偶然ですが、私の隣席に知人がいてびっくりしてしまいました。

 楽員が入場して開演です。オケは臨時編成ですが、N響、東響、群響等を中心とする若手演奏家が集まっています。チェロの西谷さんやホルンの竹村さんなど、新潟でもお馴染みの顔や、ファンの多いN響の池田昭子さんもおられます。コンサートミストレスの伊藤さんは群響のコンミスだそうです。

 オープニングは、ハイドンが生まれる前の暗闇を見立てて、「天地創造」の序奏が演奏されました。その後は茂木さんの解説を交えながら作曲年代順に演奏が続けられました。
 交響曲の最初は、編成が小さくなって、楽団紹介のための交響曲である第72番が演奏されました。番号は72番ですが、これは間違いで、1763年に作曲された初期の曲とのことです。4本のホルンが活躍したり、各楽器の独奏があったりと、見て聴いて楽しい曲です。コンミスの伊藤さんやフルートの宮崎さんの見事な演奏ときれいな音色にうっとりと聴き入りました。東響の西谷さんのチェロも良かったですし、コントラバスの独奏も面白かったです。
 次の第26番は、第2の創作期である「疾風怒濤期」の作品であり、受難曲の旋律が使われた3楽章からなる短調の曲で、小さな編成で軽快に演奏されました。
 次に口直しという感じで、珍しい「トビアの帰還」からのアリアが歌われました。ソプラノの半田さんのリリカルな歌声に聴き惚れるとともに、美しい声に劣らぬ素晴らしい容姿に見とれてしまいました。

 15分間の休憩が入って、後半最初は、円熟期(劇場期)の代表として第70番が演奏され、次いで晩年のロンドン交響曲の代表として、有名な第94番が演奏されました。茂木さんの話の後に、スライドによる解説付きで演奏されるので、飽きることもなく、眠気も起こさずに集中して楽しめました。
 その後、ハイドン作品の中で最も愛されていると言えるドイツ国歌になった「皇帝賛歌」が弦楽合奏で演奏されました。そして、半田さんが再登場して、「天地創造」からのアリアを歌って再び魅了されました。
 次は、ハイドンの弟子であるベートーヴェンの弦楽四重奏曲と、同時期に作曲されながら未完に終わったハイドン最後の作品となる弦楽四重奏曲が続けて演奏されました。各奏者とも見事な演奏で、弦楽四重奏単独のコンサートを聴いてみたいほどの良さを感じました。
 そして最後を締めくくる曲として、ハイドンの創造を讃えて、「天地創造」のアダムとエヴァの二重唱が歌われました。新潟出身という押見さんのバスは、半田さんの美しさの前では影が薄かったかもしれません。

 アンコールは、演奏者が次々と舞台から去っていくパフォーマンス付で有名な第44番「告別」と、ハイドンが非常に愛し、自分が死んだら演奏してほしいと遺言したという第44番の第3楽章が演奏されて、本当の終演となりました。

 4時に開演して15分間の休憩を挟んで、終演は7時15分を過ぎていました。これだけ長時間で内容豊富でありながら、飽きることなく、興味深く聴くことができ、満足感でいっぱいでした。これまで興味を持てず、食わず嫌いだったハイドンの魅力を味わうことができました。107曲あるハイドンの交響曲はどれも同じようなものばかりだろうと誤解していましたが、そんなことはなく、個性的な特徴があることに驚きました。今日のコンサートを聴くと聴かないでは、ハイドンに対する認識が大きく違うようにも感じました。茂木さんのすばらしい解説とプログラミングに感謝するばかりです。
 また、演奏者のすばらしさも賞賛すべきでしょう。コンミスの伊藤さんがすばらしく、見事に臨時編成のオケをまとめ上げていました。各楽器の首席奏者の演奏のすばらしさも特記されます。曲によって編成が変わったのも楽しめました。小編成のときも大編成のときも、ホールいっぱいの美しいサウンドを聴かせてくれました。各楽器のバランスもよく、新潟出身というティンパニの石川さんも頑張ってました。既に三鷹での公演を終えているのですが、前日から新潟でリハーサルを重ねていたそうであり、ホールの響きを見事につかんだ演奏だったと思います。そして、ソプラノの半田さんが花を添えていたのもすばらしかったです。

 この内容でS席で4000円です。安い席もありますし、会員ならさらに割引されますから、本当にお得なコンサートでした。これを聴かなかったら悔やんだことでしょう。三鷹と共同のプロジェクトでしたが、今後三鷹での活動が終わるとの話も聴きました。新潟での活動がどう継続されるか気になるところですが、早くも次の企画が待ち遠しく感じられます。
 

(客席:2階C2-9、S席、会員割引:3600円)