ゲルギエフ指揮 ロンドン交響楽団
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2008年11月29日(土) 18:00  いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
 
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
ピアノ:アレクセイ・ヴォロディン
 

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調 op.30

(休憩20分)

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」ハイライト
  モンタギュー家とキャピュレット家 (第2組曲第1番)
  少女ジュリエット (第2組曲第2番)
  修道士ローレンス (第2組曲第3番)
  メヌエット (第1組曲第4番)
  仮面 (第1組曲第5番)
  ロメオとジュリエット (第1組曲第6番)
  タイボルトの死 (第1組曲第7番)
  別れの前のロメオとジュリエット (第2組曲第5番)
  アンティル列島の娘たちの踊り (第2組曲第6番)
  ジュリエットの墓の前のロメオ (第2組曲第7番)

(アンコール)
プロコフィエフ:「三つのオレンジへの恋」より 行進曲

 
 

 今週末は土曜・日曜と東京で所用がありました。日帰りでこなすこともできなくはありませんでしたが、土曜は宿泊することにしました。泊まるとなるとコンサートですが、東京でのコンサートを検索しましたが、なかなか興味を引くものがありません。範囲を東京から拡大すると、つくばでファジル・サイのコンサートがあります。これは興味深く感じましたが、さらに調べたら、いわきでゲルギエフ指揮のロンドン交響楽団の公演があることが判明しました。ゲルギエフ・ファンを自認する私ですので、思い切って遠征することにしました。最近オープンしたホールにも興味がありました。日曜の用事は午後ですので、土曜の所用を早めに切り上げれば、時間的に不可能ではなく、日曜の朝にいわきを発てば午後の所用にも悠々間に合うことがわかりました。ネットでチケットと大浴場付きの安宿を手配し、計画は実行に移されました。

 今回のゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団の日本公演の目玉はプロコフィエフ・チクルスです。サントリー・ホールでは12月2日から5日の4夜連続で、コンチェルトを交えて交響曲の全曲演奏がなされます。第4番はオリジナル版と改訂版を演奏するという懲りようです。いわき公演ではプロコフィエフだけでなく、ラフマニノフの協奏曲が演奏され、マニアックすぎず、プログラム的には楽しみやすいように思います。
 日本公演ツアーは、11月27日の札幌公演に始まり、京都(28日)、いわき(29日)、東京(30日、2日〜5日)、豊田(7日)、東京(8日)、福岡(9日)、宮崎(10日)と回って、全12公演が行われますが、途中休みは2日だけです。移動距離と時間を考えると休みなしの強行軍であり、曲目も多種多様です。来日前によほど演奏がこなされているのでしょう。しかし、札幌の翌日が京都、その翌日がいわき、その翌日が東京と、楽器の運搬も含めてどうやって移動しているのでしょうね。

 上野より常磐線のスーパーひたちに乗って2時間15分。いわきに快適に到着しました。いわき駅より徒歩10分程度でホールに着きました。ホールは「いわき芸術文化交流館・アリオス」といい、最近オープンしただけあって大変きれいであり、豪華な印象です。多目的ホールですが、4層構造の客席で、両サイドにはバルコニー席があります。各階を回ってみましたが、4階席から見下ろすとステージは奈落の底のように感じます。高所恐怖症の方は怖いかもしれません。客席は全部で1705席ですが、客席の天井は高く、ホールの容積としては大きいように感じます。ステージの天井もやたらに高く、オーチャードホールに似た感じです。ホワイエは狭く、飲食コーナーも狭いのが難点に感じました。レセプショニストがいますが、サントリーやりゅーとぴあのようなエレガントさがなく、学生アルバイトのようで、垢抜けません。

 パラパラの拍手の中楽員が入場し、チューニングの後にコンマスが登場しました。オケの配置は最近ゲルギエフが好む対向配置です。第1、第2ヴァイオリンが左右に分かれ、チェロが左、ヴィオラが右、コントラバスは第1ヴァイオリンのすぐ外側に1列に並んでいました。

 ピアノのヴォロディンとゲルギエフが登場し、前半はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番です。ゲルギエフは指揮棒を持たず、お得意のフィンガーテクニックでオケを操ります。ヴォロディンは初めてでしたが、汗を拭き拭きの熱演でした。今年で31歳の若手ですが、演奏はすばらしく、熱気あふれるものでした。私の隣のお姉さんは盛んにブラボーを叫んでいましたが、確かにブラボーに値する名演奏だったと思います。アンコールを期待しましたが、休憩に入ってしまいました。

 さて、ホールの響きはたいへんクリアであり、残響時間はかなりありそうです。各楽器の音の分離が良く、濁りを感じませんが、低音域の量感が欠け、ピラミッドサウンドにならないのが残念に感じました。ピアノも力強い演奏と思うのですが、所々オケに埋没して聞こえました。オーケストラ演奏ということでは専用ホールに劣るように感じましたが、これは私の席(1階席前1/3、右側)によるのかもしれません。

 休憩後の後半は「ロメオとジュリエット」です。この曲はキーロフ(マリインスキー)との演奏で新潟でも聴いていますが、演奏そのものは良かったと思います。ただし、サウンドとしては前記しましたようにオケの厚みに乏しく、迫力が乏しかったといわざるを得ません。わがホームグランドのりゅーとぴあで聴きたかったなあ、などと感じました。

 アンコールは1曲のみ。もう少しやるのかと期待しましたが、短い曲1曲だけで終演となってしまいました。明日のサントリー公演に向けて急いで移動するのかもしれませんね。

 ということで、相変わらずゲルギエフの熱気あふれる指揮ぶり、わかりやすい演奏で楽しめました。はるばるいわきまで遠征した甲斐は十分にあったと思います。これでゲルギエフを聴くのは何回目か分からなくなってしまいましたが、毎回期待を裏切ることなく感謝しています。
 

(客席:1階14-40、S席:17000円)