東京交響楽団 第46回新潟定期演奏会
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2008年2月17日(日)17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:飯森範親
ヴァイオリン:庄司紗矢香
 
ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 作品21

ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲

(ソリストアンコール)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番より ラルゴ

(休憩20分)

ベートーヴェン:交響曲 第2番 二長調 作品36

 
 

 さすがに2月、肌寒い日々が続いていましたが、今日は青空が顔を見せてくれました。気温は高くないのですが、太陽の光を浴びると温かく感じます。いいことのない日々が続き、心はすさむばかりですが、今日は音楽で気分転換です。前回から2ヶ月半。久しぶりの東響新潟定期です。飯森さんと庄司さんの共演ということもあってか、チケット完売となりました。東響の新コンマスの高木さんの新潟初登場というのも期待を持たせました。
 ホールに着くと既に開場していました。チケット完売だけあって、客席やホワイエは賑わっています。予定になかった飯森さんのプレトークが行われ、今日の演目についての解説がされました。ベートーヴェンはベーレンライター版で演奏するそうです。ストラヴィンスキーは庄司さんのリクエストだそうですが、ベートーヴェンの間にストラヴィンスキーを挟み込んだ意味について、飯森さんは理由付けしようとされていましたが、結局今ひとつ理解できませんでした。飯森さんの話は面白かったのですが、開演時間が過ぎてしまい、あわててステージを後にされました。

 いつものように拍手の中楽員が入場。新潟初登場の高木さんに大きな拍手が贈られました。編成は小さく、ヴァイオリンは6人ずつです。対向配置で、コントラバスは中央の最後部に4人並んでいました。ティンパニは右奥にバロックティンパニと通常のティンパニの2組が置かれ、ベートーヴェンではバロックティンパニが使われました。指揮台には譜面台が置かれていません。

 最初はベートーヴェンの交響曲第1番。明るく軽快で、颯爽とした演奏です。メリハリを効かせたピリオド奏法。早めのテンポが快く、春風のような爽やかさを感じました。日頃聴くのを敬遠しがちな1番ですが、新鮮な感動を与えてくれました。冬の新潟の空同様に、暗い気分で臨んだコンサートですが、一気に春が来たような喜びを感じることができました。

 2曲目はストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲です。1曲目と同様の対向配置ですが、オケの編成は少し大きくなり、弦が若干増え、金管がステージ右手に増員されました。チューバが第2ヴァイオリン後方の一番手前、客席のすぐ前に来たのは珍しい配置ですね。今度は指揮台に譜面台が出されました。スコアはミニサイズです。
 くすんだゴールドにモスグリーンの落ち着いた色合いのドレスの庄司さんとともに、飯森さんが登場。指揮棒を忘れて取りに戻ったのはご愛敬。なかなか聴く機会のない曲であり、馴染みにくく感じていましたが、落ち着いた庄司さんの演奏と東響が見事に噛み合って、緊張感のある演奏を聴かせてくれました。哀愁漂う第3楽章は心に染みました。高木さんとの掛け合いも良かったです。盛大な拍手とブラボーの声。飯森さんに促されてアンコールが演奏されましたが、これがまたすばらしい演奏。なんて美しい音色なんでしょう。りゅーとぴあの響きの美しさにも改めて感動しました。
 これまで庄司さんは新潟で2回演奏されています。2001年7月にアシュケナージ指揮フィルハーモニア管とメンデルゾーンの協奏曲を、2004年3月にC.デイヴィス指揮ロンドン響とシベリウスの協奏曲を演奏して新潟の聴衆に感銘を与えてくれました。少女の面影と初々しさを感じさせてくれた庄司さんも聴く度に大きく成長されました。今日はシックなドレス姿もあって、堂々とした風格すら感じさせました。演奏技術もさることながら、音色の美しさは素晴らしく、音量も十分。きっと楽器もいいものなんでしょうね。もっともっと聴きたいところですが休憩時間に入ってしまいました。また次の機会に期待しましょう。今日の演奏会は前半だけで大満足に感じました。

 休憩の後はベートーヴェンの第2番です。第1番と同様の編成に戻り、指揮台の譜面台は片づけられました。第1番ほどではありませんでしたが、これまた颯爽とした演奏でした。明るさだけでなく、陰影も感じさせましたが、メリハリの効いた爽やかさがあって、気分よく聴くことができました。前半の2曲があまりに良すぎたので、後半の第2番の感動が薄れた感がありますが、これもまたいい演奏だったと思います。

 ベートーヴェンの交響曲の中で、一番地味で演奏の機会が少ない2曲をあえて選んだ飯森さんに、初めは疑問を感じていましたが、曲の新たな魅力を知らしめてくれた斬新な演奏に感嘆しました。有名曲じゃないところで思いっきり冒険を試みたという事が正解かも知れません。熱のこもった飯森さんの指揮ぶり、それに敏感に反応する若きコンマスと東響の面々。すべてがいい方向に収束し、名演を生み出したように思います。落ち込んだ気分を高揚させてくれて満足感でいっぱいです。庄司さんの演奏もすばらしく、その実力を再認識させてくれました。早くも今年のベストコンサート候補に上げられそうな名演奏だったと思います。飯森さんもなかなかやりますなあ・・・。

 外に出ると雪模様。駐車場まで小走りしましたが、いい演奏を聴いた後は心躍ります。

(客席:2階C5-35、S席:定期会員 4000円)