土曜日に東京出張の予定がありましたが、どうせならコンサートでもと思い、休みをいただいて金曜日から東京に出かけました。めぼしいコンサートがありませんでしたが、唯一このコンサートだけ興味を引き、料金も安かったため、ネットでチケットを購入しました。
早めに東京に着いたので、新宿南口のTレコード店で安い輸入盤を買い込みました。この店は以前新潟にもあり、豊富な品揃えで重宝していたのですが、撤退して久しいです。この秋にできるショッピングセンターに出店するらしいので楽しみにしていますが、当然ながら東京ほどの品揃えはないでしょうね。
その後Wホテルにチェックインして甲州街道沿いにぶらぶら歩いてホールに向かいました。オペラシティは初めてですが、キョロキョロと高層ビルや頭上を走る高速道路を眺めながら歩いていたらほどなく到着しました。時間はたっぷりあったので、ついでに隣の新国立劇場も見学しました。玄関前の雰囲気がいいですね。いつかはオペラを見に行きたいものです。
レストランで食事を取り、オペラシティのコンサートホールへの長い階段を上りました。このエントランスの演出はいいですね。階段隅に赤い数字が点滅していますが、どういう意味があるのでしょうか。
ホールに入ると木の床、木の壁で柔らかな落ち着いた雰囲気があります。席数は1632とのことですが、あまり大きくは感じられません。基本はシューボックス型ですが、ピラミッド型の三角の高い天井が特異的です。館内を一回りして席に着きましたが、ゆったり感は乏しいように思われました。
さて、アジア・ユースオーケストラ(AYO)ですが、音楽監督のリチャード・パンチャスがユーディ・メニューインに呼びかけて設立したものであり、1990年8月に第1回コンサートが開かれています。毎年アジア各地で厳しいオーディションが開かれ、そこで選ばれた102人のメンバーによってオーケストラが編成されています。今年は約2000人もの応募があったとのことですが、選ばれた15〜27歳の若き音楽家達が、日本、中国、香港、台湾、韓国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、タイ、シンガポールの10ヵ国から集まりました。そのうち日本人は20人です。白人は指揮者だけとパンチャス氏も話していました。みんな同じ肌の色、黒髪で、親近感が湧きます。香港での1日9時間、3週間の合宿の後、香港、上海、寧波、天津、北京で計8公演した後、福岡、広島、神戸、名古屋、海老名、東京と日本で計9公演行われ、今日がその最終公演になります。2つのプログラムがありますが、もうひとつのプログラムは、オッコ・カム氏指揮によるシベリウス:フィンランディア、チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲(Vc:スー・ベイ)、ブラームス:交響曲第1番です。
楽員が入場し、まずパンチャス氏が日本語で挨拶をし、AYOの意義について説明がありました。日本に在住したことがあるとのことで、流暢な日本語に驚きました。そしていよいよ演奏開始です。ステージいっぱいの100人のオケは迫力があります。
最初は「魔法使いの弟子」。すばらしい音、すばらしいアンサンブルにまず驚きました。ユースということを感じさせず、在京のオーケストラに引けを取らないように思います。元気の良い生き生きした鳴りっぷりの良さに感激しました。こんなに良く鳴るオケはゲルギエフ/マリインスキー以来のように思います。続く「展覧会の絵」もダイナミックに演奏し、各独奏者の頑張り、熱演も伝わってきました。後半の「シェエラザード」もホールいっぱいに豊潤なサウンドを満たしてくれました。コンマスの独奏もお見事でした。
アンコールに「展覧会の絵」から短く演奏した後、パンチャス氏の挨拶がありました。今年の最終公演で、明日には解散するため、思いは大きかったと思います。国毎にメンバーを起立させ、労をねぎらいました。みんな同じアジア人。音楽というと欧米へ目が行きがちですが、アジア人でもこんなにレベルの高い演奏ができるんだということを実感させてくれました。そして、最後は「ニムロッド」を演奏して終演となりました。この曲は毎年最後の曲として演奏しているのだそうです。楽員同士握手をしたり抱き合ったりし、涙の中ステージから去っていきました。
実に爽やかな、若さあふれる、内容あるコンサートでした。最終公演ということもあって演奏への思い入れも違っていたのかも知れません。若者たちの音楽への情熱を強く感じ、ひとつひとつの音が心に響きました。
また、初めてのホールでしたが、柔らかな響きは心地よく感じられました。ホール周囲の環境も良く、飲食店も豊富にあって、田舎者にはうらやましく思われました。
いい音楽を聴いた後は心が晴れます。足取り軽くホテルへの帰路につきました。今夜はひとりで缶ビールで乾杯です。
(客席:1階17-32、S席:4000円) |