バシュメット&モスクワ・ソロイスツ合奏団
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2005年10月26日  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮・ヴィオラ:ユーリ・バシュメット
ソプラノ:森 麻季
 
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調 BWV1051

J.S.バッハ:「あなたがそばにいたら」〜<アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳>より
ヘンデル :「オンブラ・マイ・フ」〜オペラ<セルセ>より
ヘンデル :「シオンの娘たちよ、大いに喜べ」〜オラトリオ<メサイア>より
ヘンデル :「涙の流れるままに」〜オペラ<リナルド>より
ヘンデル :「つらい運命に涙は溢れ」〜オペラ<エジプトのジュリアス・シーザー>より
                                             (ソプラノ:森 麻季)

(休憩20分)

武満 徹 :三つの映画音楽
       第1曲:「ホゼ・トーレス」より「トレーニングと休息の音楽」
       第2曲:「黒い雨」より「葬送の音楽」
       第3曲:「他人の顔」より「ワルツ」

モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲
                (ヴァイオリン:シュテパン・ヤコヴィッチ、ヴィオラ:ユーリ・バシュメット)

(アンコール) 
モーツァルト:協奏交響曲第2楽章より
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番より「プレリュード」、「メヌエット」、「?」
                                          (ヴィオラ独奏:バシュメット)
シュニトケ:「ポルカ」


 
 
 

 テレビ新潟開局25周年記念で、2500円という格安のコンサートです。初めは行く予定はなかったのですが、先日の東響定期のときにプレイガイドを覗いたら、まだチケットが売れ残っているようでしたので、値段も安いことだし、ということで行くことにしました。何しろ東京ではS席6500円のコンサートが2500円というのは内容はどうであれお得です。
 ヴィオラ奏者と言ってもなじみがないですが、バシュメットの名前だけはザルツブルグ音楽祭でゲルギエフ指揮ウィーン・フィルと共演したのをTVで見て覚えていました。(実はDVDでも発売されたので買ってしまいました。) また、ソプラノの森麻季さんも海外での活躍が華やかな美人歌手ということで、ミーハーな私は楽しみに感じていました。

 仕事を早めに切り上げ、「りゅーとぴあ」に急ぎましたが、駐車場は満車。仕方なく市役所に駐めて早足でホールへ。今日は隣の県民会館でロシア・ナショナル・バレエの公演があり、「りゅーとぴあ」のスタジオAでは「トロンボーンアンサンブルの夕べ」が同時刻に開催されており、混雑していたようでした。
 日中はコンサートホールでは東京交響楽団による新潟市内の小学5年生向けのコンサートと、一般向けのランチタイムコンサートが行われており、芸術の秋真っ盛りというところです。午後までコンサートホールは使われていたはずであり、バシュメットらはちゃんとリハーサルができたのだろうかと心配でした。

 今日の公演は1階と2階席のみの販売ですが、それでも空席が目立ちます。こんな格安コンサートなんだから、もっと混んでいるかと思っていたので寂しさを感じました。女子高生が団体で来ていて若々しく、華やいだ空気も漂っていました。東響定期とは明らかに客層が異なります。

 1曲目はブランデンブルグ協奏曲。バシュメットを含めてヴィオラ2、チェロ3、コントラバス1、チェンバロ1という編成。ヴァイオリンがない分、しっとりと落ち着いた音色です。ヴィオラが2人で掛け合うというのは初めての体験。チェロ、コントラバスの音色も美しかったです。最初からすばらしい演奏を繰り広げ一気に引き込まれてしまいました。

 続く5曲は森麻季さんの独唱が加わります。バシュメットは指揮に回り、第1ヴァイオリン5、第2ヴァイオリン4、ヴィオラ4、チェロ3、コントラバス1、チェンバロ1という編成に変わりました。緑のドレスに身を包んだ森さんの容姿はステージに映え、西洋人たちと並んでも引けを取ることはありません。少し細めの声ですが、繊細でリリカルな華のある歌声に心癒されました。特に「涙の流れるままに」は情感豊かで良かったです。伴奏に回ったモスクワ・ソロイスツの演奏も美しかったです。森さんのアンコールを期待しましたが、休憩に入ってしまいました。

 後半は武満の音楽で開始。やはりバシュメットは指揮者として登場。武満の音楽は食わず嫌いな点が多いですが、聴きやすい美しい音楽で有り難かったです。第2曲は疲れましたが、第1曲、第3曲は馴染みやすかったです。流麗な音楽の流れに心は和みました。

 後半2曲目はモーツァルトの協奏交響曲。指揮台は片づけられ、バシュメットは独奏兼指揮となりました。ホルン2、オーボエ2の管楽器が加わって音の厚みを付けていました。ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いはおもしろかったです。ヴィオラはなかなか表に出ることはないですが、こういう曲を聴くとヴァイオリンとの音色の違いがよくわかり、大変おもしろかったです。
 もちろんバシュメットの演奏はすばらしく、柔らかな甘美な音色に感銘を受け、ヴィオラという楽器のすばらしさも教えてもらいました。バシュメットは弾いたり振ったり大忙しでした。

 アンコール1曲目は先ほどの協奏交響曲第2楽章から。抒情的な美しい演奏にまたしても感動する。モーツァルトっていい曲書くんだなあと改めて感心した。
 拍手は鳴りやまず、続いてはバシュメットの独奏で無伴奏チェロ組曲からの演奏。これははもう素晴らしいとしか言いようがない。ヴィオラという楽器の奥深さを教えてもらった気がする。バシュメットのソロリサイタルを聴きたくなってしまった。
 カーテンコールしながら3曲独奏を披露。最後は合奏でポルカ。サービス満点な演奏に会場にいた人は皆満足したことであろう。

 終演は9時25分。これだけ盛りだくさんで上質な演奏がたった2500円で聴けたなんて、私としては今年最大の拾い物コンサートでした。観客の皆さんも上質。いつもの客層と違うので心配をしていたのですが、学生さん方を含めて真剣に聴いてくださっていました。拍手のタイミングも申し分なかったです。ブラボー屋さんがいなくて静寂を楽しめてありがたかったです。

 このところストレスがたまっていたのですが、安らぎの一時を過ごすことができて本当に良かったです。バシュメットは今後も注目していこうと思います。
 

(客席:2階C7−1、2500円)