東京出張の夜、恒例のコンサートに出かけました。今回は今年オープンしたばかりのミューザ川崎の見学がてら、ノセダ指揮のBBCフィルハーモニックです。
　ノセダと言えば師匠のゲルギエフ張りの熱演を新潟でも披露してくれたのが記憶に新しいです。私にとってLP、CDではおなじみの「惑星」ですが、コンサートでの全曲演奏は聴いたことがありませんでした。そんな訳でノセダ／BBCフィルがどんな演奏をしてくれるのか大いに楽しみでした。

　天気は崩れ、冷たい雨が降りしきり、コートなしでは肌寒さを感じます。ホールはJR川崎駅西口から直結してはいますが、屋根がわずかしかないため、横殴りの雨で濡れてしまいました。
　ミューザ川崎は「音楽のまち・かわさき」のシンボルとして市制80周年記念に川崎市が建設したもので、今年の7月1日にオープンしたばかりの真新しい施設です。新潟を準フランチャイズとしてなじみ深い東京交響楽団の本拠地となるということでも話題になりました。ちなみに、「ミューザ」とは、「Ｍｕｓｉｃ」と人が集まる「座」を合わせた造語です。

　玄関から長いエスカレーターを上った先にホールロビーがあります。当日券を買い入場し、ホールをひとめぐりしました。噂のスパイラル型の客席の偉容は異様です。１階席から客席を見渡すとまさに「スパイラル」。どうしてこんなデザインにしたのだろうかと不思議に思います。正面最後部は１階から数えると５層目になります。最上部の４階バルコニー席からステージを見下ろすとまさに奈落の底。わが「りゅーとぴあ」の３階席どころではありません。
　1997席のホールの空間は広く、座席周りもかなり余裕があります。床が板張りで柔らかさを感じます。正面にはスイスのクーン社製の巨大なパイプオルガン。豪華なホールには違いないですが、左右非対称なホールは斬新すぎて田舎者の私にはどうもしっくりきません。座席も座席表上は１階席〜４階席となっていますが、らせん状になっていますので、階の区切りがわかりにいです。正面２層目は１階席だったりしますので、席選びには注意しましょう。

　さて、開演の時間ですが、客席は空席が目立ち７割程度の入りです。楽員が登場してチューニング。女性の数が多いのにびっくりしました。
　ノセダが颯爽と登場して演奏開始。１曲目の威風堂々からダイナミックな演奏で盛り上がります。パイプオルガンも加わって、豪快にオケを鳴らします。さすがノセダ。期待に違わぬ演奏をしてくれました。
　ホールの響きはちょっと堅く、無機質的。柔らかな重厚なサウンドとはいきません。ホールの容積が大きいので音は飽和しません。木の床で、柔らかな響きを期待しましたが、いまいち。これからエージングされて変わっていくのでしょう。

　２曲目は神尾さんが登場してメンデルスゾーン。18歳という期待の若手です。典型的日本人の容姿は親近感が沸きます。実は神尾さんの演奏を聴くのは今回が２回目。前回は７月の東響新潟定期でプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第２番をボレイコの指揮で演奏。どんな演奏だったか思い出せないということは、印象が薄かったのでしょうか。今日の演奏は堂々たるもので、期待は裏切りませんでしたが、「この若さにしては・・」という注釈が付いてしまいます。まだまだこれから。今後の活躍を期待したいです。

　後半は惑星。１曲目の火星で打ちのめされました。ここまでやるかという豪快な演奏。その後も娯楽としての音楽を堪能させてくれる私好みの演奏でした。終曲の海王星の女声コーラスの神秘的響きは幻想の世界へと誘いました。合唱団が最後までステージに出ないのでどうなるのか心配していましたが、ステージ右手の舞台裏から合唱が響いてきました。こういう演出は生のコンサートでしか味わえない喜びです。
　会場は大いに沸きましたが、合唱団はカーテンコールでもステージに上ることはありませんでした。拍手を贈ってあげたかったのにねえ・・。

　アンコールは小品を２曲。初めて聴く曲でしたが、耳に良くなじむ曲でした。総じて期待通り大いに楽しめたコンサートでした。やっぱりコンサートはいいなあ・・、と心高らかに外へ出ると氷雨が降り続いていました。

　このコンサートはＮＨＫが収録していましたので、いつか放送されるだろうと思います。これまた大いに楽しみであす。
　

（客席：１階１C-10-15、S席12000円）