マグデブルグ歌劇場 ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
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2003年9月23日 新潟県民会館 大ホール
 
 
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
 
指揮:天沼裕子
管弦楽:マグデブルグ・フィルハーモニー管弦楽団
合唱:マグデブルグ歌劇場合唱団
バレエ:マグデブルグ歌劇場バレエ団

アイーダ:アレーナ・ヴァレテイン=ヴァイゼンベルク
ラダメス:ローレンス・バクスト
アムネリス:ウィンディーネ・ドライシッヒ
ランフィス:ポール・スケトリス
アモナズロ:ウルス・マルクス
エジプト国王:ヴォルフガング・クローゼ

 
 
 

 秋晴れの秋分の日の夕方の開演。随分と肌寒くなり、上着が必用な気候となりました。「アイーダ」の新潟初公演ということで、随分と話題となり会場は満員の盛況です。

 マグデブルグ歌劇場と言っても全く知りません。もちろん日本初公演です。人口20数万人というドイツの地方都市の歌劇場です。招聘元は北国新聞社と富山新聞社。北国新聞社のある金沢といえばオーケストラアンサンブル金沢(OEK)。このOEKの初代常任指揮者は天沼裕子さん。そして天沼裕子さんが専属指揮者(カペルマイスター)を努めるのがマグデブルグ歌劇場。こういうつながりで招聘されたとのことです。
 まあ、こんなことはどうでもいいですが、ドイツの地方歌劇場の実力拝見といきましょう。なお、指揮者以外にもコンサートマスターを初め日本人が全部で6人所属しているとのことです。これらの人たちにとっては凱旋公演というところでしょうか。今回の日本公演は全8公演あり、ダブルキャストが組まれていますが、残念ながら新潟は2番手の歌手の出演です。

 さて、ステージにはピラミッドが描かれた赤い幕が引かれています。オーケストラピットに入りきらないのか、ステージ右横に打楽器群、ステージ左横にハープが陣取っています。スリムな容姿の天沼さんが登場し公演開始です。舞台装置は簡素であり、階段状の大道具がある他は背景画と吊るし画しかありません。しかし、これでも充分雰囲気は伝えられています。
 出演者は、ちょっと太めのアムネリスはいいとしても、さらに2回りほど太めのアイーダ。ちょっとイメージが狂いますが歌は良いです。アムネリスは弱々しい声で、エジプト王女としての貫禄がありません。ラダメスは刑事コロンボそっくり。好演してくれて美声をホールいっぱいに響かせていました。初めはイメージのずれが気になったのですが、徐々に音楽劇に引き込まれていきました。アイーダトランペットが鳴り響くあの第2幕の凱旋行進曲も大いに盛り上げてくれました。合唱団が歌い、バレエダンサーが踊り回り、これぞグランドオペラだと、素人の私は喜んでいました。群衆の顔をオペラグラスで見てみますと、日本人らしき顔が多かったです。エキストラとして日本で調達されたのでしょうか。

 休憩の後、後半の3幕、4幕と続きます。後半は暗い場面が多いです。地下牢でアイーダとラダメスが死ぬのですが、舞台装置がないので地下牢という雰囲気がありません。この辺は仕方ないでしょう。2人の死の場面で、白い衣装で踊るバレエが美しかったです。2人が死に静かに幕が下りました。そしてカーテンコールへ。

 何せ、アイーダの実演を見るのが初めての私なので、初めは歌手の粗が気になったりしたものの、慣れてしまった後は大いに楽しむことができました。オーケストラの演奏もすばらしかったです。デッドな県民会館もいい響きをさせていました。メジャーな歌劇場じゃないですけれど、値段分は充分に楽しめたと思います。一流歌劇場の公演をテレビで見るよりは何倍も楽しめました。指揮者としての天沼さんは全く知らなかったのですが、今後の活躍を大いに期待させました。

 ホールを出ると益々冷え込んでいました。もう秋なんだなあと痛感しつつ、車へと急ぎました。

 その後1階席前方で聴いた友人によりますと、歌手の声が聴こえにくく、オケのバランスも悪くて聴きにくかったといいます。私の聴いた2階席では歌手の声も良く通り、オケのバランスも良くいい響きでした。座席によって随分と違うものだと思いました。総じて、県民会館は2階席前方がいいように思います。
 

(客席:2階8-11)