プラハ交響楽団
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2001年1月24日 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:ボフミール・クリンスキー
ヴァイオリン:千住真理子
ピアノ:中村紘子
 

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64 (ヴァイオリン:千住真理子)

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 (ピアノ:中村紘子)

(休憩)

ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95 新世界より

(アンコール)
ドヴォルザーク:スラブ舞曲第1番

 

 
 

 昨年末、プラハ放送交響楽団を聴いたばかりですが、今度はプラハ交響楽団です。1月6日から始まった日本公演の最終公演に当たります。前半の7公演がイルジー・ビエロフラーヴェクの指揮、後半の5公演をボフミール・クリンスキー、2公演を小松一彦が指揮しています。ソリストには、ヴァイオリンの千住真理子、ピアノの中村紘子、チェロのイルジー・バールタが参加し、それぞれメンデルゾーン、ラフマニノフ、ドヴォルザークのコンチェルトを演奏しています。
 他の公演は当然ながらソリストは1人ずつですが、新潟公演だけは千住真理子と中村紘子の2人と豪華です。地元のテレビ局(TeNY)の開局20周年記念で、21世紀の幕開きコンサートと銘打たれた特別公演でした。客席は満員の大盛況。ステージと客席に生花が配され、華やいだ雰囲気です。

 さて、千住真理子さん登場でコンサートの開始。真っ赤なステージ衣装が目に鮮やかです。千住あんはデビュー当時からのファンであり、我が青春のアイドルでです。山本直純氏がやっていた「オーケストラがやって来た」によく出ていましたよね。あれから随分の年月が経っていますが、相変わらずの美貌です。
 演奏は、凛として筋の通ったカチッとした演奏です。ロマン的、メランコリックな感傷は排除され、協奏曲として聴き応えのある演奏でした。その分流麗さ、柔らかさが欠け、私の席では(Cブロック)ではヴァイオリンの音色が金属的・刺激的に聴こえたのが少し残念でした。今後のさらなる活躍に期待したいです。

 次は中村紘子さん登場。薄黄緑色の爽やかな衣装。さすがに大御所という存在感を発散し、出だしから圧倒されました。重戦車が戦場を進むがごとく、重々しく力強いピアノ。一瞬あれっ?と思うほどの驚き。乱暴・野蛮にすら感じました。ゆっくりとしたテンポで第1楽章が進みます。オケは踏みつけられ、ホールもこのピアノの響きに負けてしまっていました。まさに先制攻撃を仕掛けられ、今日の勝負はあったという感じ。その後は、きらびやかでダイナミックな中村さんの熱情がほとばしり、オケも情感豊にサポートしていましたが、力負けし、演奏が乱れ、合わないところも垣間見られました。
 中村さんはこの日本ツアーで4回目の登場になりますが、他の3回は指揮者がビエロフラーヴェクで、クリンスキーとの共演は今日が初めてであったということも影響していたのかもしれません。出だしは、響きすぎるホールがピアノの力に負け、低音の濁りが気になったのですが、後半は美しいピアノの響きを堪能できました。中村さんのエネルギーの前にいささか疲労感を感じましたが、心地よい疲労感です。デザート代わりに軽いアンコール曲を期待しましたが、アンコールなしに会場の熱狂的な拍手の中で前半は終了しました。

 前半の2曲で既にお腹いっぱいという感じであったのですが、後半は新世界です。これがまた好演。さすが本場物、奇をてらうこともなく、変に力むこともありません。何の不安定さもなく演奏が進みます。やや早めのテンポで、若々しい躍動感に充ちた颯爽たる演奏でした。まだ40代前半の若い指揮者ですが、情熱あふれる指揮ぶりに好感が持てました。(余談ですが、この指揮者は、マジックのナポレオンズの背の高い方に似ています。)

 アンコールのスラブ舞曲もスピーディなダイナミックな演奏でした。久し振りにいい演奏を聴いたという実感でした。チェコ・フィルプラハ放送響、そしてプラハ響とチェコのオケを聴いてきましたが、今回が一番満足できました。

 時刻は9時半、外へ出ると、空には星が見えました。大雪も一段落し、つかの間の晴れ間。逆に放射冷却で明日の冷え込みは厳しそう。まだ春は遠いです。
 

(2階Cブロック7-14)