プラハ放送交響楽団
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2000年12月6日  Bunkamura オーチャードホール
 
指揮:ウラディミール・ヴァーレク
チェロ:ニーナ・コトワ
 

ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」作品92

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調作品104 (Vc:ニーナ・コトワ)

(アンコール) 
ロシア民謡による即興曲

(休憩)

リスト:交響詩「レ・プレリュード」

シベリウス:交響詩「フィンランディア」

スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より"モルダウ"

(アンコール)
ドヴォルザーク:スラブ舞曲第15番

 

 
 
 今日は出張で東京泊まりです。仕事が終わった後、渋谷の安宿にチェックインし、例によって、コンサートに繰り出すことにしました。ストレスが溜まりに溜まっているので、ここはスカッと気分転換図りたいところです。こういうときはやっぱりオーケストラです。我ながら文化的だなあ。

 本日のオーケストラの公演を調べてみましたら、このプラハ放送響とサントリーホールでデュトワ指揮N響の定期公演があります。どちらにしようか迷ったのですが、ホテルに近いBunkamuraに出かけることにしました。

 プラハ放送響は11月20日に新潟公演(りゅーとぴあ)があったのですが行けませんでした。結局は仕事で行けなかったのですけれど、行くつもりもなかったです。指揮者のヴァーレクは昨年11月にチェコ・フィルを率いて新潟公演を行っています。そのときの感想は別項に記していますが、期待はずれだったのです。今回の新潟公演はモルダウ、新世界、そしてなぜかサンサーンスの「オルガン付き」という豪華メニューで期待感もあったのですが、ヴァーレクの印象が良くないため無理してまで行くことはないという結論でした。
 しかし、コンサートに行ったこのHPの読者のH氏によると、昨年のチェコフィルとはうって変わって、すばらしい名演を聴かせてくれたとのことで、行けば良かったと残念に思っていました。また職場の音楽仲間の話によると、本日共演するチェロのニーナ・コトワはスーパーモデルもしていたというナイス・バディの超美人とのことで、中年男としてはこれは重要な判断材料となりました。

 さて、そういうわけでオーチャードホールに到着し当日券のS券をゲット。東京公演は昨日の未完成・運命・新世界という文部省推薦メニューに引き続いての公演です。会場はわずかに残席がある程度で盛況です。
 席は1階席中央なのにステージが遠いです。1階席はほとんど傾斜がなくて、平土間に椅子を並べたという感じで、見晴らしは良くないです。音楽を視覚的に楽しむという雰囲気がなく、やたら空間が大きいこのホールは嫌いです。サントリーホールなどは椅子に座っているだけでワクワクして幸せな気分になるのに・・。

 ともあれ、謝肉祭で演奏開始。まずまず、それなりの演奏で楽しませてくれました。例によってヴァーレクの指揮振りはロボットのような機械的な動き。しかし、音楽は流れ、オケは鳴っていなかったですけれど、去年とは違うぞという感じで、これからの演奏に期待をもたせてくれました。

 そして2曲目、コトワの登場。オペラグラスでじっくり観察。長身のスリムな体型。東欧系の美人です。さすがファッション雑誌の表紙を飾り、スーパーモデルとして活躍していたことだけはあります。視覚的には充分堪能。
 さて、演奏ですが、出だしのホルンのソロから変でした。相変わらずオケは鳴りません。独奏チェロの音は力強さに欠けオケに埋もれてしまいます。協奏曲としてのぶつかり合いは感じられなかったです。緩徐楽章でも美しさは感じられなません。ちょっとがっかり。そう言えば、偶然今日のN響定期でもトルルス・モルクのチェロで同じドヴォルザークの協奏曲が演奏されているはず。そっちはどんな演奏してるんだろうかと頭の中を邪念がよぎりました。音楽に没頭できませんでした。カーテンコールも盛り上がらなかったのですが、アンコールを披露して前半を終了しました。

 さて、後半は3大交響詩ということで、有名曲が3つ。前半よりは幾分オケが鳴るようになりましたが、音の洪水の中に身をゆだねるというオーケストラの醍醐味は味わえなかったです。ただし、モルダウは昨年のチェコフィルで聴いたときよりずっといい演奏でした。弦の美しさは感じられました。曲の最後は両手を真横に上げるのがヴァーレク流でしょうか。カーテンコールは盛り上がらなかったですが、アンコールのスラブ舞曲でようやくブラボーの声がかかりました。昨年のチェコフィル同様に今回も15番でした。

 やっぱりヴァーレクは私には合わないのかなあ。演奏自身はいいと思うのに、どうして感動できないんでしょうか。オケが鳴らないせいと思います。これは多分にホールのせいもあるでしょう。1階19列目中央といういい席のはずですが、ぜんぜん音は良くないです。やたら天井が高く奥行きもあって広すぎる空間、平土間に椅子を並べたような座席、無機的なデザイン。基本はシューボックス型ホールで音響はいいはずなのですが、絶対的に容積が大きすぎるんだろうと思います。1階席中央で聴いていて、オケが遥か遠くで団子状に鳴っているようにしか聴こえないのです。私のホームグランドである新潟の「りゅーとぴあ」(新潟市民芸術文化会館)は良く鳴るし、たとえ3階席でもオケが間近に感じられます。やっぱり「りゅーとぴあ」はいいホールなんだなあと改めて感じました。

 今回の日本ツアーは23日間で19公演をこなすという超過密スケジュールです。オケも疲れているに違いないです。今日は16公演目、疲労もピークだろうと思います。同じ曲を飽きるほど演奏しているに違いありません。一期一会の緊迫感が感じられないのも無理はないのかもしれません。欲求不満な気持ちのまま、客引きの兄さん姉さんを振り払いながら、道玄坂の雑踏を宿へと向かいました。