東京フィルハーモニー交響楽団長岡特別演奏会
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2026年2月21日(土)14:00 長岡市立劇場 大ホール
指揮:チョン・ミョンフン
ヴァイオリン:岡本誠司
コンサートマスター:近藤 薫
 
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

(ソリストアンコール)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番より ラルゴ

(休憩15分)

メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」



 
 

 東京フィルハーモニー交響楽団は、以前より長岡市で定期的に演奏会を開催しており、私も2000年5月の演奏会(指揮:現田茂夫)を最初に、2002年4月(指揮:船橋洋介)、2003年12月(指揮:チョン・ミョンフン)、2010年11月(指揮:船橋洋介)と聴かせていただきました。
 その後長岡市は、2015年度より東京フィルハーモニー交響楽団と事業提携し、毎年の演奏会のほか、メンバーによるコミュニティコンサートや子供向けコンサート、楽器のワークショップなどを行い、その関係は密接なものとなりました。
 私は2015年5月(指揮:チョン・ミョンフン)の事業提携記念演奏会を聴かせていただき、その後も2016年10月(指揮:バッティストーニ)、2017年7月(指揮:チョン・ミヨンフン)、2019年9月(指揮:バッティストーニ)、2022年9月(指揮:バッティストーニ)、2024年3月(指揮:バッティストーニ)、2025年1月(指揮:広上淳一)と聴かせていただきました。

 今回は事業提携10周年を記念しての特別演奏会で、指揮は名誉音楽監督のチョン・ミョンフンさんで、ソリストとして岡本誠司さんを迎えます。
 18日のサントリーホール、23日のオーチャードホールでの定期演奏会と同じプログラムで、その間を縫っての長岡公演となります。
 私がチョン・ミョンフンさんの指揮での演奏を聴くのは、2017年7月以来9年ぶりで、共演する岡本誠司さんの演奏を聴くのは、2025年3月のジャパン・ナショナル・オーケストラの新潟公演以来です。公演に際しての岡本さんからのメッセージも寄せられていました。

 東京フィルは、東京交響楽団が準フランチャイズとしている新潟市には来てくれませんので、新潟県内で東京フィルを聴くなら長岡遠征するしかありません。
 この東京フィルの演奏会は、首席指揮者のバッティストーニの一方的な事情により延期になり、その延期公演もキャンセルされて、広上淳一さんが代わりに指揮をした2025年1月の演奏会以来、1年ぶりになります。
 非常に魅力ある演奏会だと思うのですが、チケットの売れ行きは芳しくないような話もあり、集客を勝手に心配しながら今日の日を待ちました。

 今週は水曜日の午後から天候が崩れて雪になりましたが、その後は回復して好天となり、気温も上がって、春が来たかのような陽気になりました。
 今日も薄曇りながらも気温は上がり、過ごしやすい陽気になりました。掃除、洗濯、ネコのトイレ掃除と、与えられたルーチンワークを終えて、早めに家を出ました。
 いつものように高速は使わず、国道116号線経由で長岡入りしました。長岡市内の某所で休息と昼食をいただき、長岡市立劇場へと向かいました。大雪からだいぶ経ちましたが、市街地でもたくさんの雪が残っており、今年の大雪のひどさがうかがわれました。

 雪で狭くなった駐車場に車をとめて、館内に入りますと、すでに開場を待つ多くの人で賑わっており、当日券を買い求める人も多くおられました。13時15分に開場され、私も列に並んで入場しました。
 ロビーのガラス窓から見える景色は、雪で覆われていて、うず高く積もった雪は、日光に照らされて眩しく輝いていました。すぐに席には着かないで、ロビーの椅子に座ってこの原稿を書きながら開演を待ちました。
 
 開演10分前に席に着きますと、ステージ上ではコントラバスの皆さんが音出ししており、ステージ裏から管楽器の音が賑やかに聴こえていました。
 客席は左右と後方に空きが目立ちましたが、まあ、それなりの入りでしょうか。子供たちや動員されたような学生さんたちの団体もおられ、平均年齢を引き下げてくれていました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。弦は14型(14-12-10-8-6)でしょうか。コンマスは遠目でよくわかりませんでしたが、近藤薫さんのようにお見受けしました。
 チョンさんがゆっくりとステージに登場して一礼し、1曲目は、ウェーバーの「魔弾の射手」序曲です。弦楽合奏で始まりましたが、予想外にいい音を出していて驚きました。ホルンがゆったりと美しく響き、うっとりと聴き入りました。コントラバスとティンパニの暗い響きに変わり、劇的に音楽が展開しました。
 クラリネットが歌い、明るいメロディに変わり、躍動的に音楽が進みました。繰り返しがあり、不安げな静けさから明るく躍動的に熱を帯びて、高らかに歌い上げて終わりました。
 いつも通りの長岡市立劇場のデッドな響きで、正面後方のA席エリアで聴いていますと、遠くで団子状にオケが鳴っていましたが、演奏は素晴らしく、歌劇の序曲ならではの次々と場面展開するこの曲の魅力が存分に感じられ、聴き応えは十分でした。1曲目からブラボーを贈りたいほどの演奏でした。

 ステージが整えられ、弦が若干減り、2曲目はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番です。岡本さんとチョンさんが登場して演奏開始です。
 ティンパニと管に導かれて独奏ヴァイオリンが悲しげに歌い、第1楽章が始まりました。良く響く低弦のピチカートとともにヴァイオリンが歌って曲が展開しました。
 岡本さんのヴァイオリンは音量豊かで艶があり、叙情性と力強さを併せ持ち、朗々と歌わせて、熱き思いを吐露し、バックを支える熱くてキレのあるオケともに、少し速めに、美しく、情熱的に音楽を作り上げました。
 オケがスピードを落としてゆったりとなり、切れ目なく第2楽章へ移りました。切なく美しくメロディを歌わせ、私好みの演奏に、うっとりと聴き入りました。
 ロマンチックで感傷的なこの楽章の美しさを見事に具現化してくれて、思いっきりゆったりと、切々と歌い上げて聴く者の心の琴線をくすぐり、感情を高ぶらせて熱く盛り上げました。
 管と呼応してしっとりと歌い、切れ目なく第3楽章が始まりました。熱く燃えるオケとともに、力強くヴァイオリンが歌いました。たたみ掛けるように情熱的に歌い、朗々とメロディを奏でて、スピードアップ、エネルギーアップしてフィナーレとなりました。

 熱い演奏に大きな拍手が贈られました。ブラボーを叫んでくれと期待しましたが、長岡の皆さんは大人しいようでした。かといって私がブラボーを叫ぶ勇気はなく、力の限りに拍手して、素晴らしい演奏を讃えました。

 カーテンコールが繰り返された後に、ソリストアンコールが演奏されました。バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番のラルゴでしたが、ヴァイオリンが優しく美しく響き、協奏曲の興奮を鎮めてくれて、極上のデザートになりました。

 休憩後の後半は、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」です。第1楽章は、低弦とヴィオラの少しもの悲しいメロディで始まり、ヴァイオリンがしっとりと歌い、曲が展開しました。ホールの響きにも慣れて、弦楽の美しさにうっとりと聴き入りました。
 熱く音楽を奏で、切々とした思いを訴え、それが大きな力となって、さらに熱を帯びて行きました。さざ波が大きなうねりとなり、揺らぎを繰り返して、激しさを増し、再び静けさから熱を帯びて揺らめきました。そして、静けさの中に、低弦のピチカートとともに終わりました。
 切れ目なく第2楽章となり、軽やかに木管が歌い、躍動感に溢れて曲が進みました。スピーディで心地良く、心も踊るようで、ウキウキ・ワクワクさせるような軽快な音楽に気分も爽快になりました。
 切れ目なく第3楽章となりました。ゆったりとした美しい音楽に、うっとりと聴き入りました。ホルンが悲しげに歌い、感情の高ぶりを見せながら美しい波を作りました。
 うねりとともに、優しく穏やかに、癒しの音楽を奏でて、秘めた思いを高ぶらせ、ゆったりと、しっとりと終わりました。
 続けて第4楽章へ。一転して激しくリズムを刻み、感情を爆発させました。激しさの中に木管が美しく歌いました。エネルギーを高めて熱く歌い、心地良く軽快なリズムとともに、強弱を付けながら走り抜けました。うねりを作って、ひたすら走り、その心地良い躍動感に心も踊りました。
 静けさからクラリネットが歌い、ファゴットが呼応して、ゆったりと落ち着きを見せ、静寂の中から、日の出のように明るく音楽が沸き上がり、ホルンが歌い、ベルアップしてファンファーレを奏でて、明るく盛り上がってフィナーレとなりました。
 ホールに興奮と感動をもたらして、大きな拍手が贈られましたが、ここでもホールにブラボーは聴こえませんでした。ブラボーを叫びたい衝動と葛藤しながら、手を眼前に掲げて力の限りに拍手しました。
 カーテンコールが繰り返され、各パートに大きな拍手が贈られて感動の演奏会は終演となりました。地方公演ですので、もしかしたらアンコールがあるかもと思いましたが、東京での定期演奏会と同じプログラムですので、当然ながらアンコールはありませんでした。

 この曲を生演奏を聴く機会はめったにありませんでしたが、文句のない最良の演奏であり、曲の素晴らしさを再認識することができたのは大きな収穫でした。
 日頃は東京交響楽団ばかり聴いていますが、東京フィルの実力の高さを実感し、このような熱い演奏を引き出した、チョン・ミョンフンさんの素晴らしさに感動しました。さすが名誉音楽監督だけあって、オケとの信頼関係も強固なんだと思います。

 前半の協奏曲での岡本さんの演奏も素晴らしく、堂々としながらも繊細に叙情的に歌い上げ、何も言うことのない見事な演奏で、大きな感動をいただきました。
 ドイツロマン派の音楽を3曲たっぷりと聴くことができて、プログラム的にも満足できるものでした。ホールの特性上、音響的には難がありましたが、そんなことは些細なことと感じさせるような熱い演奏に、大きな感動と満足感をいただきました。今年のベスト10候補に挙げるべきの見事な演奏会だったと思います。

 感動とともに外に出ますと、薄雲はきれいになくなっていて、快晴の空が広がっていました。まさに春のような日差しが快く感じられ、気分も爽やかに車を進めました。
 長生橋を渡って、喜多ICから国道8号線に上がり、すぐに左折して広域農道1号線を進みました。水田に積もった雪が眩しく輝き、青空をバックに、山々が美しく映えていました。
 そのまま与板を通って、信濃側沿いに進み、大河津分水を渡って、分水〜吉田〜巻と快適に進んで、55km、1時間半で家に着きました。

 長岡遠征した甲斐のある素晴らしい演奏に出会って幸運でしたが、りゅーとぴあで聴いたら感動も倍増だったと思います。
 チョン・ミョンフンさんは長岡には何度も来ていますが、新潟市には来てくれません。新潟市での演奏を聴いたのは2001年5月のチョン・キョンファとの姉弟共演だけですので、是非ともりゅーとぴあで演奏していただきたいですね。

 

(客席:28-14、A席:¥6000)