多摩河原にて
十月三十日。曇。 午前九時宿を立つ。 多摩の河原に出る。 肌寒い風が耳を吹く。 北方の山々が天に接する。 一直線に雲。 子供が二人。 何だか拾つて居る。 「何拾つてるの」 と問うたら 「たきぎ」 と女の子が答へた。 僕等は土手を川上に歩む。 子供は川下へ行く。 多摩川の流れの音が寒い。
渡辺与平