「英和対訳軍事関係用語集(3万5千語)」、これは本メルマガで2度に渡ってヘッダー広告として掲載したものだが、用語集作りは筆者/発行者にとっても人ごとではなく、いくつか質問をしているうちに編纂者より一部、無料で寄贈して頂いてしまった。この時点で初めて「現物」を見たわけだが、「3万5千語」、pdfファイルで881ページというのが、どれだけ凄いか、初めて実感した。
筆者の場合は軍事関係の仕事はやったことが無いので、「使える辞書」の基準として前にも書いた「辞書は使ってみなければ分らない」という基準は当てはめる事はできない。ただ、もう一つの基準として、専門用語に加え、関連して使用される一般用語も載っているかという基準は、編纂者の言からすると満たされているように思われる。ただしそのような基準以前に、編纂者によると、そもそも「軍事関係の辞典・用語集が極めて少な」く、「この30年間で5、6冊しか出版されていない」という現実がある。だとすれば、「万が一」(軍事関係の仕事をするハメになった場合)に備えて一部、手許に置いておいて決して損は無いのではないか。また、前、「後記」で「21世紀は戦争の時代だ」とも書いたしそれは現実化している。そして日本の多くのメーカーは、既に武器メーカーとして多くの戦争、軍事行動に参加しているという現実もある。昨日までテレビを作っていたプラントが、今日からミサイルを製造する事になるかもしれない。これらの事も「万が一」に含まれるのではないか。文系、テクニカル系を問わず、軍事用語は「特殊」なものではなくなる可能性すらある。
また、自衛隊のイラク派遣問題にしても、自衛隊に「万が一」の事があったらどうするのかといった、マヌケな議論がなされている。「自衛隊」はれっきとした軍隊であり、アメリカの同盟国としての日本がイラクに限らず軍隊を派遣し、死傷者が出たとしても、それは軍隊という性格上、当然の事であり、「万が一」という言葉の使用は、日本人の軍隊観が、今だ「平和憲法」という、アメリカによる戦後の占領政策を、国策と勘違いしている証左ではないだろうか。日本語には婉曲表現が多い。例えば海上保安庁は、ごく近年になって英文名称をJapan Coast Guard =日本国沿岸警備隊と改めたが、これもれっきとした軍隊であり、その軍事行動は国民も目撃している。「平和憲法」は理想に過ぎず、日本が国際社会の一員として機能していくならば、イラクに限らず海外派兵は今後、当然の事として行われるようになるのではないだろうか。日本の国内事情を考慮しても、軍隊の派遣に代わるものとしての経済貢献は、直接、経済を圧迫しており、近い将来、限界に達すると思われる。翻訳という仕事をする上でも、こうした婉曲表現の問題は、本来の軍事用語をそれとして見極め、国際社会に通用する適切な訳が求められることになるだろう。そうした意味でも、軍事用語集は、「21世紀」を考えた場合、「特殊用語」どころか「基本用語」にすらなる可能性がある。
編纂者は「3万5千語」を「一語一語吟味して収録の可否を決めていった」という。今回、次回と2回に分けて、編纂者に依頼して書いて頂いた「英和対訳軍事関係用語集作成の経緯」を紹介するが、特に2回目では、この用語集編纂のための並々ならぬ苦労や努力が綴られている。これを読むだけでも、一部2600円は安い、いや安過ぎる。この値段であれば、翻訳者一人に一冊、持っていて決して損は無いのではないか。「経緯」は、同じように用語集づくりをしている当メルマガ発行者としても共感を感じるものであり、また学ぶ点も多く、読者の中には同じようなプロジェクトに取り組んでいる方もおられると考え、掲載することにした。
なお、「用語集」はpdfファイル、英→和、C&V不可となっているが、検索機能が使えるので和→英訳の場合でも(マシンが速ければ)使用上、全く問題は無い。また、購入者サービスとして、追加用語集の送付など、様々な「アフターケア」が用意されている。
★「用語集」はpdfファイル、英→和、C&V不可。ただし検索機能が使えるので和→英訳の場合でも使用上、問題無し。購入者サービスも豊富。購入は下記URLから。サイトからサンプル(A行の全用語)がダウンロードできます。
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