図1:レアアース製錬の全体フロー(①〜③で分離、④で金属化。⑤⑥は代替・補完ルート)
図2:水相と有機相の間をイオンが行き来し、段を重ねるごとに元素ごとの濃度差が広がる
水(水相)と油のような有機溶媒(有機相)を混ぜてはまた分けることを繰り返す方法。レアアースイオンは種類によって「水に残りやすいもの」と「有機溶媒側に移りやすいもの」の割合がわずかに違うため、この操作を何十段も繰り返すことで、少しずつ元素ごとに分かれていく。
図3:樹脂への吸着力の違いにより、元素ごとに異なるタイミングでカラムの出口から出てくる
樹脂を詰めたカラム(筒)にレアアース溶液を通すと、元素ごとに樹脂への吸着しやすさがわずかに違うため、出てくる順番にズレが生じる。このズレを利用して、隣り合う似た元素同士を丁寧に分離する。
図4:溶液に試薬を加えて固体(沈殿)にし、高温で焼くことで安定した酸化物の粉末にする
溶媒抽出やイオン交換で分けた溶液に特定の試薬を加えると、目的の元素だけがシュウ酸塩などの固体として沈殿する。これをろ過して取り出し、高温で焼く(焙焼する)と、扱いやすく安定した酸化物の粉末になる。
図5:高温で溶かした塩に酸化物を溶かし込み、電気分解で陰極に金属を析出させる
③でできた酸化物を高温で溶かした塩(フッ化物など)に溶かし込み、電気を流して分解する。すると陰極(マイナス側)にレアアース金属そのものが析出する。アルミニウムの製錬(ホール・エルー法)と似た原理。
図6:スクラップを砕いて酸で溶かし、再び溶媒抽出などの分離工程に合流させる
使用済みのネオジム磁石や電子部品のスクラップを砕き、酸などで溶かして(浸出)不純物を取り除いたうえで、①の溶媒抽出などの工程に合流させ、レアアースとして再資源化する。
図7:巨大な一体型工場ではなく、小型ユニットの組み合わせで生産量や場所を柔軟に変えられる
従来の①〜③の工程は巨大な一体型プラントで行われてきたが、コンテナサイズ程度の小型ユニットを組み合わせることで、必要な場所・必要な量だけ柔軟に分離・精製を行おうという次世代の考え方。
| 技術名 | しくみ | 長所 | 短所 | 主な用途・状況 |
|---|---|---|---|---|
| 溶媒抽出(Solvent Extraction) | 水相と有機相の間でレアアースイオンを可逆的に分配し、各元素を相互分離する | ・連続的な大量処理が得意 ・技術的に成熟しており信頼性が高い |
・多数の抽出槽(ミキサーセトラ)が必要で設備が巨大化 ・多量の酸・有機溶媒廃液が出る |
現在の世界的な主流技術。中国やマレーシアなどの分離プラントで広く稼働 |
| イオン交換・クロマトグラフィー | 樹脂(固定相)に対する各レアアースイオンの吸着力の差を利用して順次溶離・分離する | ・隣り合う元素同士を高純度に分離可能 ・比較的小規模な設備で運用できる |
・処理速度が遅く大量生産に向かない ・樹脂や溶離剤のコストが高い |
高純度(99.999%等)が必要な蛍光体材料や医療・研究用材料の精製に利用 |
| 沈殿法・焙焼(化合物の精製) | 混合溶液に特定試薬を加えてシュウ酸塩などを沈殿させ、加熱(焙焼)して高純度な酸化物にする | ・目的の化合物(主として酸化物)を確実に固体として回収できる | ・前工程(溶媒抽出等)での各元素の分離が不十分だと純度が上がらない | 湿式製錬の最終仕上げ工程として必須。磁石用の酸化ネオジム等の製造に使用 |
| 溶融塩電解(金属還元工程) | 分離精製されたレアアース酸化物を高温の融解塩(フッ化物など)に溶かし、電気分解して金属単体を得る | ・高純度なレアアース金属(単体)を直接、比較的安価に製造できる | ・高温維持と電気分解に多大な電力を消費する ・フッ素系ガスの発生対策が必要 |
乾式製錬の基幹技術。ネオジム磁石用の「ネオジム金属」やジスプロシウム等の製造に不可欠 |
| リサイクル精錬(都市鉱山) | 使用済みネオジム磁石や電子部品のスクラップから化学処理によりレアアースを回収・再資源化する | ・鉱石からの製錬に比べ環境負荷(放射性副産物リスク等)が極めて低い ・国内資源の確保に直結 |
・回収スクラップの収集・分別コストがかかる ・不純物の除去プロセスが複雑 |
日本が強みを持つ分野。ハイブリッドカー(HEV)・EVの廃モーターやエアコンからの回収技術が進化 |
| モジュール型精製(次世代技術) | 従来の巨大工場ではなく、コンテナサイズ等の小型ユニットを連結させて柔軟に分離・精製を行う | ・環境負荷が小さく小回りが利く ・地政学的リスクに応じた分散型生産が可能 |
・スケールメリットが出にくく高コスト化の懸念 ・多くがまだ実証段階 |
脱・中国依存を目指す欧米の新興企業などが中心となってパイロットプラントを開発中 |
| トピック | 概要 | 今後の見通し |
|---|---|---|
| 重レアアース向け新規吸着剤 | NEDOの事業で、ジスプロシウムやテルビウムといった重レアアースを選択的に回収できる新しい吸着剤が開発され、実際の廃部材からも高い選択性で重レアアースを取り出せることが確認された。 | 2026年3月に技術確立の見込みとされており、使用済みネオジム磁石など未利用資源からの重レアアース回収を国内で行う体制づくりが進められている。 |
| 新型抽出装置・低温電解還元法 | 従来のミキサーセトラ式に比べて処理速度が4倍、設備規模を1/3〜1/4に抑えられる新しい抽出装置が試験され、目標を大きく上回る結果が得られた。あわせて、テルビウムをより低い温度で取り出せる新しい電解還元法の開発も進む。 | 国内での分離精製コストを従来法より約3割抑えられる条件が見えてきており、装置の小型化・省電力化にもつながると期待されている。 |
| エマルションフロー式抽出の実証拡大 | 「混ぜる・置く・分離する」の3工程を送液のみの1工程でまとめて行う新方式の溶媒抽出技術(エマルションフロー)について、2026年4月に500Lスケールの実証プラントが完成・稼働を開始した。レアアース・レアメタルの高純度回収やリサイクルへの応用を見込む。 | ラボスケールからパイロット・実機スケールへと段階的にスケールアップが進んでおり、商業化に向けた重要な節目とされる。今後は連続運転などの性能評価が続けられる。 |
| 三井金属、国内にレアアース研究開発拠点を新設 | 三井金属は2026年2月、福岡県大牟田市に「九州先端材料開発センター」を新設すると発表した(4月1日付で設置、総工費約100億円)。既に保有する溶媒抽出などの分離技術をもとに、鉱石由来に加え南鳥島沖のレアアース泥の精製技術も研究対象とする。 | 2028年度の完成を目指しており、対象元素や精製拠点の国内外での配置などは今後検討される。国のレアアース泥事業と歩調を合わせ、国内サプライチェーン強化につなげる狙い。 |
| 南鳥島沖レアアース泥の採取成功と分析結果公表 | 2026年1〜2月、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が、南鳥島沖の水深約6000mの海底からレアアースを含む泥を連続的に引き揚げることに世界で初めて成功した。この泥は中国の陸上鉱山に比べて格段に品位が高く、放射性物質の含有量も低いとされる。2026年7月24日には、採取した泥の詳細な分析結果と環境モニタリング結果が公表された。 | 2027年2月には、採鉱した泥を陸揚げして分離・精製・製錬まで含めた約1か月間の本格的な採鉱試験を予定。2028年3月までに経済性を含めた総合評価を行い、国産レアアース産業化に向けた最終判断が行われる見込み。 |
※本セクションはNEDO・JAMSTEC・三井金属等の公開資料および各種報道をもとに要約したものです。プロジェクトは開発・実証段階のものを含み、今後の進捗により内容が変わる可能性があります。