材料特性一覧(参考)     2025/12/26


材料について
観点 構造材料(Structural Materials) 機能性材料(Functional Materials)
主な役割  形をつくる・支える・壊れないようにする  特定の機能を発現する(電気・磁気・光・熱など) 
重視する性質 強度・硬さ・靱性・耐熱性・耐食性 電気伝導性・磁性・光応答・圧電性・触媒性など
代表例 鉄鋼、アルミ、チタン、コンクリート、炭素繊維 半導体、圧電体、強誘電体、磁性材料、光触媒、電池材料
外部刺激への応答 基本的に応答しない(形状維持が目的) 電場・磁場・光・熱・圧力などに応答して働く
用途 建築、橋梁、車体、航空機、機械部品 センサー、アクチュエータ、電子デバイス、電池、光デバイス
例えるなら 「骨格・フレーム」 「神経・筋肉・臓器」

Ⅰ 機械的性質

1 強度
材料名 引張強度(GPa) 備考
1 グラフェン(Graphene) 130 GPa 世界最強の材料
2 ロンザデライト(六方晶ダイヤモンド) 121〜130 GPa 隕石衝突で生成
3 カーボンナノチューブ(CNT) 約60〜100 GPa(参考値) 超高強度ナノ材料
4 ダイヤモンド 約60–120 GPa(理論値) 硬さは最強クラス
5 シリコンカーバイド(SiC) 約20–30 GPa 戦車装甲にも使用
6 ナノケブラー(Nano-Kevlar) 約3–4 GPa 自己組織化ナノ球体
7 クモ糸(Darwin bark spider silk) 約1.5 GPa 生物材料で最強
 出展  「The 10 Strongest Materials Known To Man」 (Stanford Advanced Materials, 2025年更新)

2 硬さ
材料名 ビッカース硬度(GPa) 備考
1 ダイヤモンド(Diamond) 70–150 GPa 現在知られる中で最も硬い物質
2 ウルツァイト窒化ホウ素(w-BN) 理論値:~114 GPa ダイヤ超えの可能性(理論値)
3 六方晶ダイヤモンド(Lonsdaleite) 理論値:~152 GPa 隕石衝突で生成、実物は微小
4 立方窒化ホウ素(c-BN) 48 GPa 工業用超硬材料
5 炭化ホウ素(B₄C) 30–38 GPa 軽量・高硬度、装甲材
6 炭化ケイ素(SiC) 25–30 GPa 耐熱・耐摩耗性
7 タングステン(W) ~4 GPa 金属で最も硬いクラス
ビッカース硬度:ダイヤモンドの四角錐圧子を押し込んでできた圧痕の大きさから材料の硬さを求める試験法

3 破壊靱性「き裂が進展しにくい性質」
単位:MPam1/2
材料 代表的な破壊靱性 KIC 特徴
1 マルエージング鋼 50–200 超高強度と延性を両立。金属中トップクラス
2 高靱性鋼(低合金鋼、構造用鋼) 100–200 橋梁・圧力容器などに使用
3 チタン合金(Ti-6Al-4Vなど) 55–115 高比強度・高靱性。航空機の主材料
4 オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304など) 120–200 延性が非常に高く、低温靱性も優秀
5 アルミニウム合金(7000系など) 25–40 軽量で航空機に多用
6 ニッケル基超合金(Inconelなど) 20–50 高温でも靱性が低下しにくい
7 銅合金(ベリリウム銅など) 20–40 延性が高く破壊靱性も大きい
8 高分子材料(PE、ナイロンなど) 2–6 衝撃吸収に優れるが金属より低い
9 CFRP(炭素繊維複合材) 10–30(繊維方向) 方向依存性が大きい
10 セラミックス(アルミナ、SiCなど) 2–5 高強度だが脆性が大きい

Ⅱ 化学的性質
4 耐食性
材料 耐食性の特徴 主な用途
1 白金(Pt) ほぼ全ての酸・塩・酸化環境に安定。最高クラスの耐食性 化学装置、電極、触媒
2 金(Au) 酸化しない。王水以外ではほぼ腐食しない 電子部品、装飾、接点
3 ジルコニウム(Zr) 酸・アルカリ・塩水に極めて強い。不動態皮膜が強固 化学プラント、原子炉
4 タンタル(Ta) フッ酸以外のほぼ全ての酸に耐える 化学装置、熱交換器
5 チタン(Ti)・チタン合金 不動態皮膜が非常に強く、海水・酸に強い 海水設備、化学装置、航空機
6 ハステロイ(Ni基耐食合金) 強酸・高温腐食に強い。化学工業の定番 化学プラント、排ガス処理
7 インコネル(Ni基超合金) 高温酸化・腐食に強い タービン、排気系
8 オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304/316) 不動態皮膜により耐食性が高い。特に316は塩水に強い 配管、食品機器、建築
9 フッ素樹脂(PTFE、PFA) ほぼ全ての薬品に耐える。非金属で最強クラス 化学配管、ライニング
10 ガラス・ガラスライニング 多くの酸に強いがアルカリに弱い 化学反応容器、タンク

Ⅲ 物理的性質
5 耐熱性
(実用上限温度ベース)
材料 実用上限温度の目安 特徴
1 炭素系材料(黒鉛・C/Cコンポジット) 3000℃級(不活性雰囲気) 極めて高い耐熱性。ロケットノズル・再突入体に使用
2 タングステン(W) 2500–3000℃ 金属で最高の融点。高温強度が非常に高い
3 タンタル(Ta) 2000–2500℃ 高融点金属。耐食性も優秀
4 モリブデン(Mo) 1800–2200℃ 高温強度が高く、真空炉部材に使用
5 SiC(炭化ケイ素)セラミックス 1600–1800℃ 酸化に強く、軽量で高強度
6 Al₂O₃(アルミナ)セラミックス 1500–1700℃ 電気絶縁性と耐熱性が高い
7 ニッケル基超合金(Inconel, Rene など) 1000–1200℃ タービンブレードの主材料。クリープ耐性が非常に高い
8 ジルコニア(ZrO₂) 1000–1200℃ 熱遮蔽コーティング(TBC)に使用
9 チタン合金(Ti-6Al-4V など) 500–600℃ 高比強度だが耐熱性はニッケル基に劣る
10 ステンレス鋼(耐熱鋼) 600–700℃ 酸化耐性が高く、ボイラー・排気系に使用

6 電気伝導性
(常温)
電気伝導率:MS/m(メガジーメンス毎メートル)
参考として抵抗率:μΩcm
材料 電気伝導率(MS/m) 抵抗率(μΩ⋅cm 特徴
1 銀(Ag) 62.1 1.59 すべての金属で最高の電気伝導性
2 銅(Cu) 59.6 1.68 実用材料として最重要の導体
3 金(Au) 45.2 2.44 酸化しないため接点に最適
4 アルミニウム(Al) 37.7 2.65 軽量で送電線に多用
5 カルシウム(Ca) 29.0 3.91 軽金属の中では高い導電性
6 タングステン(W) 18.2 5.65 高融点金属で導電性も良い
7 金属ナトリウム(Na) 21.0 4.75 軽金属で高導電性(反応性が高い)
8 鉄(Fe) 10.0 9.71 構造材として重要
9 ニッケル(Ni) 14.3 6.99 耐食性と導電性のバランスが良い
10 グラフェン(理論値) 〜1000(方向依存) 2D材料として最高クラスの導電性
7 絶縁性
材料名 絶縁耐力の目安(kV/mm) 特徴
1 ポリイミド(PI) 200〜300 高耐熱(400℃級)、フレキ基板に使用
2 ポリエチレン(PE) 300〜700 電線被覆、誘電率が低く高周波に強い
3 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:テフロン) 60〜120 耐薬品性・耐熱性に優れる
4 エポキシ樹脂 15〜40 プリント基板・封止材に使用
5 シリコーンゴム 20〜25 柔軟で耐熱性が高い
6 ガラス(ソーダライム) 9〜13 高温に強く、化学的に安定
7 紙(オイル含浸紙) 8〜12 変圧器の絶縁に使用
8 空気 約3 最も基本的な絶縁媒体
9 真空 20〜40(条件依存) 電界強度は高いが放電条件に敏感
8 熱伝導率
(常温)単位:W/(mK)
材料 熱伝導率(代表値) 特徴
1 ダイヤモンド(天然・CVD) 1000–2200 物質中で最高の熱伝導性。電子デバイスの放熱に最適
2 グラフェン(面内方向) 2000–5000(理論値) 2D材料として最高クラス。方向依存が極端
3 銀(Ag) 430 金属で最高の熱伝導性
4 銅(Cu) 400 実用金属として最重要の熱伝導材
5 金(Au) 320 導電性・耐食性も高いが高価
6 アルミニウム(Al) 237 軽量で放熱部品に多用
7 ベリリウム(Be) 200 軽量で高熱伝導だが毒性に注意
8 シリコン(Si) 150 半導体材料として重要。熱伝導性も高い
9 グラファイト(黒鉛:面内方向) 120–200 異方性が大きいが面内は非常に高い
10 マグネシウム(Mg) 160 軽量金属としては高い熱伝導性
9 磁性
エネルギー積BHmax⁡  (kJ/m3) 値が大きいほど「強い磁石(高い磁気エネルギーを蓄えられる)」になります。
磁石材料 BHmax(代表値) 特徴
1 ネオジム磁石(Nd₂Fe₁₄B) 200–440 kJ/m³ 現在最強の永久磁石。モーター・発電機・HDDに使用
2 サマリウムコバルト(SmCo) 120–200 kJ/m³ 高温でも減磁しにくい。航空宇宙・軍需用途
3 アルニコ磁石(AlNiCo) 10–88 kJ/m³ 高温安定性が高いが磁力は弱め
4 フェライト磁石(SrFe₁₂O₁₉) 7–40 kJ/m³ 安価で耐食性が高い。スピーカー・モーターに多用
5 ボンド磁石(NdFeB系・フェライト系) 5–100 kJ/m³ 成形自由度が高いが焼結品より弱い
6 鉄クロムコバルト(FeCrCo) 8–20 kJ/m³ 延性があり加工しやすいが磁力は低い
10 強誘電体
(自発分極 Ps ベース)
単位:自発分極 μC/cm2
材料 自発分極(代表値) 特徴
1 BiFeO₃(ビスマスフェライト) 90–100 μC/cm² 室温で強誘電性+反強磁性を持つマルチフェロイック
2 PbTiO₃(チタン酸鉛) 70–80 μC/cm² 非常に大きな分極。高温で安定
3 PZT(Pb(Zr,Ti)O₃) 50–70 μC/cm² 圧電材料として世界で最も使われる強誘電体
4 BaTiO₃(チタン酸バリウム) 25–30 μC/cm² セラミックコンデンサの主材料。環境負荷が低い
5 KNbO₃(ニオブ酸カリウム) 25–30 μC/cm² 鉛フリー強誘電体として注目
6 LiNbO₃(ニオブ酸リチウム) 70 μC/cm²(方向依存) 光学デバイスで重要。非線形光学特性が強い
7 LiTaO₃(タンタル酸リチウム) 50 μC/cm²(方向依存) SAWフィルタなど通信デバイスに使用
8 HfO₂系強誘電体(HfO₂:ZrO₂など) 10–30 μC/cm² 次世代半導体メモリ(FeRAM・FeFET)で急成長
9 PVDF(フッ化ビニリデン) 6–13 μC/cm² 高分子強誘電体。柔軟でフィルム化が容易
10 Triglycine sulfate(TGS) 3–5 μC/cm² 古典的強誘電体。赤外センサに使用
11 超伝導
(臨界温度 Tc ベース)
単位:Tc(K)=絶対温度(ケルビン) ※常圧での代表値。
材料 Tc(K) 特徴
1 HgBa₂Ca₂Cu₃O₈+x(Hg-1223) 133 K 常圧で最高 Tc を持つ銅酸化物系超伝導体
2 Tl₂Ba₂Ca₂Cu₃O₁₀(Tl-2223) 125 K 高 Tc のタリウム系銅酸化物
3 Bi₂Sr₂Ca₂Cu₃O₁₀(Bi-2223) 110 K テープ線材として実用化が進む
4 YBa₂Cu₃O₇(YBCO) 92–93 K 液体窒素温度で超伝導。実用材料の代表
5 Bi₂Sr₂CaCu₂O₈(Bi-2212) 85–95 K 高磁場応用に強い
6 La₂₋xBaₓCuO₄(LBCO) 30–40 K 初期の高温超伝導体
7 MgB₂(マグネシウムジボライド) 39 K 金属系で高 Tc。安価で実用性が高い
8 Nb₃Sn(ニオブスズ) 18 K 強磁場マグネットの主力材料
9 NbTi(ニオブチタン) 9.2 K MRI・加速器で最も使われる実用超伝導体
10 鉛(Pb) 7.2 K 古典的な超伝導体
12 屈折率(透明材料)(可視光・常温)
屈折率 n(589 nm 付近)
材料 屈折率 n(代表値) 特徴
1 TiO₂(ルチル) 2.6–2.9 透明材料として最高クラスの屈折率。光触媒・白色顔料
2 ダイヤモンド(C) 2.42 高屈折率+高分散で宝石としても有名
3 ZnSe(セレン化亜鉛) 2.40 CO₂レーザー光学系で重要
4 ZnS(硫化亜鉛) 2.30–2.40 可視〜赤外の光学窓材
5 GaN(窒化ガリウム) 2.30–2.40 LED・レーザーの主材料
6 サファイア(Al₂O₃ 単結晶) 1.76 高強度・高耐熱の光学材料
7 ZrO₂(ジルコニア) 2.1–2.2 高屈折率のセラミックス。光学用途もあり
8 高屈折率ガラス(フリントガラス) 1.7–1.9 光学レンズで重要。分散が大きい
9 石英ガラス(SiO₂) 1.458 透明性・耐熱性が高い。光ファイバの主材料
10 一般ガラス(ソーダライム) 1.50 最も一般的な透明材料


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