計算式と考え方を表示する
① 屋根上の滑走フェーズ
雪庇止めがない区間では、屋根の勾配 θ・雪と屋根材の摩擦係数 μ から、重力による加速度と摩擦抵抗の差で滑走距離 s だけ加速すると考えます。
- 加速度 a = g・(sinθ − μ・cosθ) (この値が負になる場合は a = 0 とし、滑り出さないケースとして扱う)
- 軒先での速度 v₀ = √(2・a・s)
② 雪庇止め越流後の雪-雪滑動フェーズ
雪庇止めを積雪深が越えた場合、上側の雪が雪庇止めより低い側の積雪表面を滑って移動すると仮定します。この区間では屋根材は主な接触面ではないため、雪と雪の滑動係数 μss を使います。
- 雪-雪の加速度 ass = g・(sinθ − μss・cosθ)
- 各雪庇止めの越流直後は、衝突・破断によるエネルギー損失を残存率で近似します。
- 雪質から自動推定する場合は、乾雪・しまり雪・湿雪・ザラメ雪・圧雪/凍結などの違いを μss に反映する教育用モデルとします。
③ 軒先を離れてからの放物運動
軒先の張り出し(d, H)から、速度ベクトル (v₀cosθ, v₀sinθ) で飛び出したと仮定し、Δt = 0.005秒刻みの数値積分(オイラー法)で軌道を計算します。
- 空気抵抗OFF:重力加速度 g のみが働く、通常の放物運動
- 空気抵抗ON:風速との相対速度の2乗に比例する抵抗力(抵抗係数k)を追加
- 風向・屋根の向きの設定から、軒先に沿った成分だけを追い風/向かい風として反映し、直交する風向は影響なし(0)として扱う
- 着地時間・着地距離・着地時の速度は、この軌道が地面(y=0)に達した点から算出
④ 着地範囲(雪庇の分裂・ばらつき)
実際の雪庇は空中で分裂・崩壊しうるため、以下の範囲でパラメータをランダムに変化させ20回試行し、着地位置の最小〜最大を「着地範囲」として表示します。
- 初速:基準値の70〜130%
- 放出角度:基準値 ±4°
- 張り出し長さd:基準値 ±0.3m
- 抵抗係数k:基準値の60〜140%
⑤ 摩擦係数μの自動推定
「屋根材質・積雪状態から自動推定する」を使う場合、以下の式でμを求めます。
- μ = 屋根材質ごとの基準値 × 積雪状態による倍率 + 積雪深による微調整
- 材質基準値の例:ガルバリウム鋼板0.15/トタン0.20/化粧スレート0.35/瓦0.45/防水シート0.30/その他0.40
- 積雪状態倍率:乾雪0.85/湿雪1.5/圧雪・凍結層0.5
⑥ 積雪荷重(参考表示)
建築基準法施行令の考え方に沿った簡易換算です。軌道計算そのものには使っていません。
- 屋根形状係数 = √cos(1.5β) (β=屋根勾配、60°以上は0)
- 積雪荷重 q = 積雪深(cm) × 20N/m²/cm × 屋根形状係数
- 雪庇推定質量(軒1mあたり) = q × 張り出し長さd ÷ 重力加速度g
①〜⑥の係数・分布幅はいずれも教育用に妥当と考えられる範囲を仮置きした参考値で、実測データや構造計算に基づくものではありません。