第45回記念 くにたちコンサート
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2024年6月15日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
第1部
ピアノ:石口あみ
  ショパン:24の前奏曲 より
      第21番 変ロ長調、第22番 ト短調、第23番 ヘ長調、第24番 ニ短調
フルート:高垣さらら、ピアノ:高木明子
  ゴーベール:ノクチュルヌとアレグロスケルツァンド
ピアノ:吉井愛貴
  リスト:パガニーニ大練習曲集 より 第6曲 主題と変奏 S.141
ピアノ:内田美果
  伊福部昭:「ピアノ組曲」より 佞武多
フルート:西山直子、チェロ:前田美華、ピアノ:高木明子
  ゴーベール:「三つの水彩画」より No.1 明るく晴れた朝に

(休憩15分)

第2部 河原忠之の「オペラ名曲選」
  ピアノ・司会進行:河原忠之
  バリトン:青山 貴、テノール:望月哲也、合唱:第45回記念くにたち合唱団
ヴェルディ:歌劇「運命の力」
  第3幕 我が運命を決める箱 (ドン・カルロ:青山 貴)
ヴェルディ:歌劇「ルイザ・ミラー」
  第2幕 静かな夕べに星空を見ていたとき (ロドルフォ:望月哲也)
ヴェルディ:歌劇「仮面舞踏会」 第1幕より
  リッカルド:望月哲也、レナード:青山 貴、オスカル:小菅 文
  サム/トム:鈴木至門、小川慧渉
チレア:歌劇「アルルの女」
  第2幕 フェデリーコの嘆き (フェデリーコ:望月哲也)
ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」
  第4幕 私の最後の時がやってきた (ロドリーゴ:青山 貴)
ヴェルディ:歌劇「椿姫」 第2幕 フィナーレ
  ヴィオレッタ:鈴木愛美、アルフレード:望月哲也、ジェルモン:青山 貴
  フローラ:北住順子、ガストン子爵:足立悠道
  トゥフォール男爵/ドビニー候爵:鈴木至門、医師グランヴィル:漆山律直

(アンコール)
プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」より 私のお父さん (鈴木)
プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」からの二重唱(?) (望月、青山) 
  
   
 今日は、毎年この時期に開催されている国立音楽大学新潟県同調会による「くにたちコンサート」に参加させていただくことにしました。
 「くにたちコンサート」は、国立音楽大学の同窓生の同調会会員による演奏会ですが、1978年に第1回が開催され、以後毎年開催されてきました。2020年は新型コロナ禍で中止されましたが、今年は第45回の記念演奏会として開催されることになりました。
 毎年の演奏会のほかに5年ごとに大学からのゲストを迎えて特別な記念演奏会が組まれています。前回の2018年の第40回記念演奏会も参加させていただきましたが、そのときは国立音大出身のピアノの山下洋輔さんとソプラノの本島阿佐子さんをゲストに迎えての演奏会でした。
 今回の第45回記念演奏会は、新潟で活躍する国立音大卒業生による演奏のほか、国立音大で教鞭をとっているピアノの河原忠之先生、バリトンンの青山 貴先生、テノールの望月哲也先生をゲストに迎えての「オペラ名曲選」が注目され、聴かせていただくことにしました。

 このところ暑さが厳しい日が続いていて、早くも夏バテ状態です。仕事も忙しく、疲労困憊。コンサートに出かける気力も失せてしまいそうでしたが、先日のヴォーチェ弦楽四重奏団に行けませんでしたので、今回は頑張って出かけることにしました。

 いつものルーチンワークをこなして家を出て、白山公園駐車場に車をとめました。上古町を歩き、楼蘭でいつもの絶品冷やし中華をいただきましたが、これを食べると元気が出ます。気分がふさぎこんでいた私でしたが、心身の疲労が一気に取れて、気分も爽快になりました。美味しいものを食べることって大事ですね。

 店を出て時計を見ますとすでに開場時間が過ぎていて、急ぎ足でりゅーとぴあ入りしました。インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、急いで入場しましたが、正面は埋まっていましたので、2階左に席を取りました。
 これまでは新潟市音楽文化会館で開催されてきましたが、新潟市音楽文化会館が改修工事中のため、今回は広いりゅーとぴあ・コンサートホールに変更になったものと思います。客席は3階は使用されず、1階と2階のB・C・Dブロックのみが使用されました。正面はほぼ埋まって、なかなかの集客のようでした。
 開演までのわずかの間プログラムを見ていましたが、これまでの演奏会の出演者の一覧には見覚えのある新潟で活躍している音楽家の名前が多数あり、国立音大のパワーを感じました。

 開演時間となり、前半は新潟で活躍する国立音大卒業生による演奏です。最初はピアノの石口あみさんです。白地に銀のドレスで登場し、ショパンの前奏曲集から第21番〜第24番の4曲が演奏されました。
 第21番はゆったりと歌わせ、22番はダイナミックに、23番はさらりと力を抜いて爽やかに、24番は暗さに中に音の輝きがあり、最後の低音の響きも良かったです。各曲の対比も鮮やかに、聴き映えする音楽を創り出していて、トップバッターの重責を果たしていました。

 2番目は、フルートの高垣さららさんで、ピアノは高木明子さんです。高垣さんは鮮やかな水色のドレスで、木さんは落ち着いたクリーム色のドレスです。
 木さんのピアノに支えられて、緊張感を漂わせながらも、ゆったりと歌い、後半は軽快に駆け足しました。全体として線の細さを感じましたが、フレッシュさがあり、これからの熟成が楽しみに感じられました。

 3番目は、ピアノの吉井愛貴さんです。お名前は良く聞いていましたが、演奏に接するのは初めてです。ブルーのドレスで登場し、入念に椅子を調整して演奏開始です。
 お馴染みのパガニーニの主題提示の後、各変奏の対比も鮮やかに、パワーとともに繊細さも感じられる演奏は聴き応えがあり、もっと演奏を聴きたく思われました。

 4番目は、ピアノの内田美果さんです。これまで何度か聴かせていただいていますが、音楽療法でも活躍されています。椅子が交換されて背もたれなしになりました。
 黒いシックなドレスで登場し、伊福部昭のピアノ曲「佞武多」という曲を演奏しました。同じメロディを強弱を変えながら何度も繰り返すという、いかにも伊福部という印象の曲です。民謡的な哀愁も感じさせる和の雰囲気が漂う曲で、変奏曲というべきか、ミニマル・ミュージックというべきか良く分かりませんが、最後はスピードアップ、パワーアップし、演奏の良さもあって、なかなか楽しめました。
 
 前半最後の5番目は、お馴染みのフルートの西山直子さんのほか、チェロの前田美華さん、ピアノの高木明子さんという珍しい組み合わせです。西山さんはピンク、前田さんはイエロー、木さんはクリーム色のドレスです。
 煌びやかなピアノとともに、安定感のあるフルートと、豊潤なチェロが心地良く感じられました。「三つの水彩画」という曲名の如く透明感のある爽やかな曲で、ゆったりと音楽を楽しみました。

 休憩後の後半は、ゲストの河原さんの司会進行・ピアノによる「オペラ名曲選」です。河原さんは国立音大教授のほか、新国立劇場オペラ研修所の主任講師もされておられ、新潟での演奏を何度か聴く機会がありました。
 ステージは円弧状のひな壇が組まれ、上段に12人、中段に13人、下段に1人の合唱団の団員用の譜面台がずらりと並んでいました。
 河原さんが登場して、挨拶とお話しがたっぷりとあり、その後にオペラの場面についての詳しい解説があり、演奏が進められました。

 1曲目は、ゲストのバリトンの青山 貴さんが登場しました。青山さんは様々なオペラで活躍されており、国立音大の非常勤講師も務めておられます。
 河原さんのピアノとともに、ヴェルディの「運命の力」から「我が運命を決める箱」が歌われましたが、声量豊かで、ドラマチックな歌声がコンサートホールに響き渡り、まさにオペラの世界が眼前に広がるかのようでした。ブラボーの声が上がるほどの感動を与えてくれました。

 2曲目は、ゲストのテノールの望月哲也さんの登場です。望月さんも様々なオペラで活躍されており、国立音大の准教授をされておられます。
 力強いテノールがオペラの劇的な場面を高らかに歌い上げ、大きな感動を誘い、その実力をまざまざと見せ付けてくれました。

 ここで河原さんによる詳しいオペラの解説があり、その間にステージに合唱団が入場しました。左にソプラノが8人、中央にテノールとバスが10人、右にアルトが10人並び、女性陣は華やかなドレス姿でした。ソプラノのうち、小菅文さんが下段に1人でおられました。

 3曲目は、ヴェルディの「仮面舞踏会」の第1幕の場面が演じられました。イタリア語の歌詞ということで、合唱団員は楽譜を見ながらの歌唱ということになったものと思います。
 合唱団とオスカル役の小菅さんの美しい歌声とともに演奏が始まり、リカルド役の望月さん、レナード役の青山さんにより、オペラの劇的場面が演じられました。合唱が加わりますとさらに感動的ですね。

 ここで河原さんによる望月さんへのインタビューがあり、新潟の印象や、国立音大についての話などをされました。

 4曲目は、チレアの「アルルの女」からの「フェデリーコの嘆き」が、望月さんにより、情感を込めて切々と歌われ、しみじみとした感動を誘いました。あまりにもこの曲が有名になりすぎて、オペラ自体はほとんど上演されないとのことでした。

 5曲目は、ヴェルディの「ドン・カルロ」から、青山さんにより「私の最後の時がやって来た」が歌われました。声量豊かな迫力ある歌声に圧倒されました。

 ここで、河原さんにより青山さんへのインタビューがあり、新潟の印象や、国立音大についてのアピールなどが行われました。

 河原さんによる詳しい解説が続いている間に合唱団が入場し、最後はヴェルディの「椿j姫」の第2幕のフィナーレの部分が演じられました。
 合唱団のレイアウトが若干変更され、左の下段にフローラ役の北住順子さん、中央下段にガストン子爵役の足立悠道さん、ドゥフォール男爵/ドビニー候爵役の鈴木至門さん、医師グランヴィル役の漆山律直さんが並びました。
 北住さんの歌に始まり、男声の歌声、さらに合唱が加わり、舞台装置こそありませんが、オペラの世界がステージ上に創り出されました。ソプラノの2人はタンバリンを鳴らし、男声陣は足踏みをするという演出もあり、演奏効果を高めていました。
 アルフレード役の望月さんが出てきて歌い、赤いドレスが麗しいヴィオレッタ役の鈴木愛美さんが登場してリリカルに歌い、最後にジェルモン役の青山さんが歌って、劇的な場面を歌い上げました。
 イタリア語の歌詞は全く分かりませんが、事前の河原さんによる詳しい解説がありましたので、場面が良く理解でき、感情移入もできました。
 望月さん、青山さんの素晴らしさはいうまでもありませんが、鈴木愛美さんをはじめ、新潟で活躍する出演者の歌声も素晴らしく、合唱もさすがという素晴らしさでした。さすがプロの歌声ですね。
 ピアノを演奏しながら指揮もする河原さんの素晴らしさも特記すべきでしょう。さすがにオペラを知り尽くし、オペラの伴奏ピアニストとして、指揮者として活躍されているだけはありますね。
 司会進行をし、オペラについての詳しい解説をして、休みなくピアノを演奏するという大変さは想像に難くありませんが、そんなことは全く感じさせません。すごいとしか言いようがありません。

 大きな拍手に応えた後、主役のヴィオレッタを演じた鈴木さんの挨拶があり、アンコールにプッチーニの「私のお父さん」が美しく歌われて、鈴木さんの魅力を知らしめてくれました。
 そして最後は、望月さん、青山さんが登場して、迫力ある二重唱で客席を沸かせて、感動の演奏会は終演となりました。

 国立音大で学ばれ、新潟で活躍する音楽家の皆さんの素晴らしい演奏もさることながら、やはり後半の「オペラ名曲選」は聴き応えがありました。大活躍した河原さんあってのことであり、大きな拍手を贈りたいと思います。

 終演は16時半。休憩を入れて2時間半という内容たっぷりな演奏会でした。大きな感動と満足感を胸にホールを後にし、国立音大の発展を祈念しながら、駐車場へと向かいました。

 来年は、そして、その先の50回記念演奏会はどうなるのだろうかと期待は高まります。
 
 
(客席:2階D5-31、¥3000)