ロレンツォ・ギエルミ オルガン・リサイタル
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2024年5月25日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
オルガン:ロレンツォ・ギエルミ
 
オール・バッハ・プログラム

プレリュード ハ短調 BWV546/1

ライプツィヒ・コラール集より
「いと高き所にいます神にのみ栄光あれ」BWV662
「いと高き所にいます神にのみ栄光あれ」BWV663
「いと高き所にいます神にのみ栄光あれ」BWV664

協奏曲 ニ短調 BWV596 (原曲=A.ヴィヴァルディ op.3-11)

(休憩20分)

プレリュードとフーガ ニ長調 BWV532

「最愛のイエスよ、われらここに集いて」BWV731(27のコラールより)

「心よりわれこがれ望む」BWV727
「われいずこに逃れゆくべき」BWV694(キルンベルガー・コラールより)
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565

(アンコール)
ジュゼッペ・ゴネッリ:ソナタ

 今日は、ルネサンス、バロック音楽の第一人者というイタリアを代表するオルガン奏者のロレンツォ・ギエルミの演奏会です。13年振り2度目の新潟での演奏会です。
 前回の2011年9月に開催された演奏会は、私も聴かせていただき、りゅーとぴあのオルガンから、これまでにない美しい響きと、仰々しくない軽やかな演奏に魅了されました。特にバッハの音楽に大きな感動をいただきました。
 今回はオール・バッハ・プログラムということで、コラールやフーガ、協奏曲など、多彩な様式のオルガン音楽を選んで演奏するとのことで期待が高まり、チケットを購入して楽しみにしていました。りゅーとぴあでのオルガン演奏会を聴くのは、3月16日の「石丸由佳ラスト・リサイタル」以来になります。

 雲が多いながらも、暑すぎることもなく、爽やかな土曜日になりました。いつものように、洗濯、掃除、カメの水替え、ネコのトイレ掃除と、ルーチンワークをこなし、買い物に出かけた暴君を見送って、おもむろに家を出ました。
 駐車場に車をとめて、白山公園から上古町を歩き、いつもの桜蘭で極上の冷やし中華をいただいて、幸せ気分でりゅーとぴあ入りしました。

 館内に入りますとすでに開場されており、私も列に並んで入場し、3階正面に席を取りました。客の入りは、いつものオンガンコンサートに比してかなり良さそうで、1階席から3階席まで、満遍なく席が埋まり、1階中央、2階正面、3階正面前方はびっしりでした。

 開演時間となり、場内が暗転し、ギエルミさんが登場して開演です。以後、拍手を挟むことなく、5曲続けて静かに演奏が進められました。

 最初の挨拶代わりの「プレリュード ハ短調」は、華やかながらも決してうるさくないオルガンの美しい音響がホールを満たし、ふくよかなサウンドが快く感じられました。

 続いてライプツィヒ・コラール集よりの3曲が演奏されましたが、BWV662は、素朴な音色が快く響き、BWV663は、水平トランペットを駆使して、左右交互に響き渡るステレオ効果が面白く、BWV664は、明るく軽やかに歌わせました。

 前半最後は「協奏曲 ニ短調」です。ヴィヴァルディの「2台のヴァイオリンとチェロのための協奏曲」が原曲だそうですが、第1楽章は、華やかな音色で流麗に、たたみかけるようにメロディが流れ、これまで聴いたことのないようなオルガンの響きが美しく感じられました。第2楽章は、静かに、ゆったりと歌わせ、しみじみと心に響きました。第3楽章は、軽やかに、生き生きとした音楽が、噴水の如く淀みなく流れ出て、協奏曲としての楽しさを、オルガンで具現化してくれました。

 休憩後の後半は「プレリュードとフーガ ニ短調」で開演しました。明るく軽やかに、夏の日の太陽のように音楽が流れ、暗雲に襲われて重厚な響きに押しつぶされそうになりましたが、再び猛スピードで疾走し、目が回りそうでした。こんなにも躍動的なオルガンは初めてであり、興奮せずにはいられません。客席からも拍手が沸きあがりました。

 拍手に応えて「最愛のイエスよ、われらここに集いて」を、一転してゆったりと歌わせ、しみじみとした音楽が心に染み渡りました。
 続けて「心よりわれこがれ望む」を、しっとりと、もの悲しく、切々と訴えるように演奏し、「われいずこに逃れゆくべき」を、悲しさの中にも軽やかに歌い上げました。速いパッセージの中に長い音が混在して、面白い音楽になっていました。

 プログラム最後は「トッカータとフーガ ニ短調」です。バッハの中でも最もポピュラーな曲であり、しばしば耳にしますが、個性的なメロディの作り方で、これまでのこの曲のイメージを一転させるような、重々しくなくスピーディな仕上がりで、実に気分爽快な音楽でした。こんなにも軽やかで心踊るような「トッカータとフーガ」は初めてです。熱く燃え上がるような演奏に、ブラボーを叫びたくなるような高揚感を感じました。

 大きな拍手に応えて、ギエルミさんが「小さいイタリアの音楽」と日本語で曲目紹介をして、アンコールにジュゼッペ・ゴネッリの「ソナタ」を演奏し、水平トランペットも賑やかに、明るく華やかな音楽を奏でて、感動の演奏会を締めくくりました。
 オール・バッハ・プログラムの最後に、ギエルミさんの母国であるイタリアの作曲家・ゴネッリの明るい小品を演奏して、洒落たデザートをプレゼントしてくれた演出もお見事でした。

 前回の演奏会にも感じましたが、りゅーとぴあのオルガンから、これまでに聴いたこともない音をつむぎ出し、生命感・躍動感に溢れる音楽を創り出してくれるとは驚きでした。卓越した演奏技術と音楽性に圧倒され、りゅーとぴあのオルガンが持つ無限の可能性を再認識し、それを引き出すのがオルガン奏者の実力であり、真骨頂であることを目の当たりにしました。
 オルガンの演奏会で、これほどの胸の高鳴りを感じることはめったになく、良い音楽を聴いた喜びと満足感を胸に、ホールを後にしました。早いですが、今年のベストコンサート候補に上げておきたいと思います。

 なお、ギエルミさんはオルガン奏者だけでなく、チェンバロ奏者としても活躍しており、明日は兵庫県立芸術文化センターで、バロック・ヴァイオリン奏者の平崎真弓さんとのデュオで、チェンバロを演奏されます。西宮までの移動やリハーサルを考えますと、なかなかの強行軍と思われます。
 さらに、28日、29日と東京で平崎さんとのデュオコンサートがあり、6月1日には、東京芸術劇場で今日と同じプログラムでのオルガン・リサイタルが開催されます。きっと素晴らしい演奏を聴かせてくれることでしょう。

 りゅーとぴあでは、夕方から2つの公演が予定されており、どんどんと人が集まってきていました。賑わって何よりと思います。
 
 
(客席:3階 I 4-8、\2500)