村治佳織&村治奏一 ギター・デュオ・コンサート
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2025年9月27日(土)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ギター:村治佳織、 村治奏一
 
第1部
[デュオ]
 ベリナティ:ジョンゴ
 マリアネッリ/牟岐礼編:映画「プライドと偏見」から 夜明け
 モリコーネ/鈴木大介編:映画「ニューシネマ・パラダイス」から 愛のテーマ

[村治佳織ソロ]
 村治佳織:エターナル・ファンタジア〜薬師寺にて
 J.S.バッハ/ラッセル編:主よ、人の望みの喜びよ
 ディアンス:タンゴ・アン・スカイ
 久石 譲/小関佳宏編:映画「ハウルの動く城」から 人生のメリーゴーランド

(休憩20分)

第2部
[村治奏一ソロ]
 ロジャース/閑喜弦介編:マイ・フェイヴァリット・シングズ
 マンシーニ/鈴木大介編:ひまわり
 ジョビン/ディアンス編:フェリシダーヂ

[デュオ]
 コビアン/飯泉昌宏編:酔いどれたち
 ピアソラ/飯泉昌宏編:リベル・タンゴ
 藤井眞吾:ラプソディー・ジャパンより 抜粋

(アンコール)
[村治佳織ソロ]
 「ファイナル・ファンタジー」より ザナルカンドにて
[デュオ]
 映画「ディア・ハンター」より カヴァティーナ
 

 今日は村治佳織さんと村治奏一さんのデュオコンサートです。日本の女性ギタリスのトップランナーの村治佳織さんと、その弟で中堅どころの村治奏一さんによる姉弟デュオということで、個別の演奏のほかに、息の合った二重奏が聴けるものと期待されました。

 村治佳織さんの演奏は、これまでに何度か聴く機会がありましたが、個人的には2022年5月に秋葉区文化会館で開催されたリサイタル以来ですので、3年4か月振りになります。一方村治奏一さんは、新潟での演奏会はありましたが聴く機会はなく、今回が初めてです。

 この姉弟二人によるデュオコンサートは、これまで各地で何度も開催されており、今月も9月5日に東京・銀座、9月13日に北九州市で開催されていますので、こなれた演奏が聴けるものと期待されます。それぞれのソロや二重奏と、大いに楽しませていただこうと思います。

 実は、今日は長岡リリックホールで、毎年この時期に開催されている仲道郁代さんのリサイタルがあり、見事に日時が重なってしまいました。
 仲道さんの30年来のファンであり、ともに年齢を積み重ねてきた私としましては、毎年長岡市で開催されるリサイタルは欠かせないのですが、苦渋の選択で、今年は村治さんを選ばせていただきました。どうして同じ日時になってしまったのだろうと残念でなりません。

 昨日は雨が降っていましたが、今日は朝から晴れ渡り、青空がすがすがしい土曜日になりました。たまたまテレビ朝日の「題名のない音楽会」に村治佳織さんが出演されており、その演奏を楽しみ、某所で昼食を摂ってりゅーとぴあへと向かいました。

 白山公園駐車場に車をとめて、県民会館で某コンサートのチケットを買いましたが、ロビーには明日の吹奏楽コンクールに参加すると思われる団体の姿もありました。りゅーとぴあに入りますと、まだ開場まで時間がありましたが、すでにロビーは混雑していました。
 東ロビーでひと休みしようと思いましたが椅子に空きはなく、外に出て公園を散策しました。快晴の空が広がり、まさに秋晴れでしたが、日差しは強く、汗ばんできましたので、館内に戻りました。

 ちょうど開場となり、私も入場しましたが、受付はいつものレセさんではなく、いかにもアルバイト風の若い女性たちで、慣れない手つきでした。
 ホールに入って席に着き、この原稿を書きながら開演を待ちました。いつもは2階席を選ぶのですが、今回はヴィジュアル目当てで、1階席を選びました。
 客席は、3階席とステージ周りの2階席は使用されませんでしたが、ほぼ満席の盛況となりました。ステージには、椅子が2脚並べられ、マイクとPA用の小型スピーカーが後方に設置されていました。

 開演時間となり、青いドレスの村治佳織さんと村治奏一さんが登場し、佳織さんが左、奏一さんが右に着席しました。前半最初は、デュオでの演奏です。

 1曲目は「ジャンゴ」です。ギターをパーカッションのように叩いたりして、軽快で熱い演奏にホールの空気をつかみました。PAが使用されましたが最低限で、自然な響きで違和感はありませんでした。

 ここで奏一さんの挨拶があり、続いて佳織さんの挨拶がありました。落ち着いた語り口で、新潟は1年4か月ぶりで、前回は長岡市でのコンサートだったことなど話され、詳しい曲目紹介がありました。

 映画音楽を2曲続けて演奏するとの話があり、最初は「プライドと偏見」から「夜明け」が演奏されました。切ないメロディがしっとりと流れ出て、美しいギターのサウンドに聴き入りました。

 続いては「ニューシネマ・パラダイス」で、お馴染みのメロディを情感豊かに演奏し、中間部は熱く歌わせて、曲の魅力を存分に知らしめてくれました。

 泰一さんが退場し、佳織さんのソロになりました。佳織さんのトークの間に譜面台が片付けられました。曲目説明の中で、次の曲で使用されるトレモロ奏法についての説明もありました。

 最初は佳織さん自身の作曲による「エターナル・ファンタジア〜薬師寺にて」です。薬師寺東塔の修理が終わった記念に作曲したものの、奉納公演がコロナ禍で中止になってしまったそうです。でも曲としては残ったとのことでした。
 曲目の解説にあった通り、トレモロが駆使された曲で、しっとりと心に染み入るような美しいイサウンドに魅了されました。

 続いてはバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」です。様々な楽器・編成によって演奏される定番曲ですが、ギターでの演奏もしっとりと美しく、心に響きました。

 再び佳織さんのトークがあり、ドイツのゲヴァントハウスでバッハのCDのレコーディングをしたこと、そして来月発売される7年ぶりのアルバムの話がありました。今度は初めてゲーム音楽を取り上げたアルバムで、15曲収録したそうです。

 続いての曲は、ギターの定番曲の「タンゴ・アン・スカイ」です。アンコールで演奏することが多いのですが、今回は通常のプログラムとして演奏することにしたそうです。情熱を秘めたタンゴのリズムが快く響きました。

 前半最後は「ハウルの動く城」から「人生のメリーゴランド」です。久石譲の名曲を情感豊かに演奏し、優しく響くワルツに、しみじみと感傷に浸りました。

 大きな拍手が贈られ、佳織さんはゆっくりと、前方・右方・左方の各方向に何度も丁寧に礼をして、笑顔で拍手に応えてくれました。素晴らしいですね。

 休憩後の後半は奏一さんのソロで始まりました。曲目紹介があり、1曲目は「サウンド・オブ・ミュージック」から「マイ・フェイヴァリット・シングズ」です。ギター用の編曲も良くて、原曲のメロディを使用しながらも、全く違ったギターのオリジナル曲のように感じて、楽しませていただきました。

 再び奏一さんのトークがありましたが、昨年3回新潟に来ており、そのうち1回は演奏ではなく、講演会だったこと、1回はギャラリー蔵織での演奏会で、もう1回は長岡での佳織さんとのデュオコンサートだったとのことでした。

 曲目解説があり、2曲続けて演奏されました。最初はヘンリー・マンシーニの名曲「ひまわり」です。情感豊かに、ゆったりと切々と忍び泣くような演奏でした。ウクライナの広大なひまわり畑が眼前に広がるかのようで、映画の場面が思い起こされました。

 続いては「フェリシダーヂ」です。曲調は一転し、スピード感のある熱い演奏で、興奮を誘い、心をワクワクさせてくれました。

 奏一さんが一旦退場し、艶やかな真っ赤なドレスに衣裳換えした佳織さんとともに再登場してトークがあり、この間に譜面台が設置されました。
 二人が使用しているギターの説明がありましたが、佳織さんが使用するギターは白っぽく、地震や水害で打撃を受けた能登の復興を祈念して、能登産のヒバを使用して、君島さんという人が今年に製作したものだそうです。
 一方、奏一さんのギターは、1959年にドイツで作られたギターだそうです。私の印象では、佳織さんのギターは明るい印象があり、奏一さんのギターは、柔らかくふくよかな感じを受けました。

 次に演奏する曲目解説がありましたが、100年前の曲と、その後50年経った後のピアソラの名曲との説明があり、最初は「酔いどれたち」です。初めて聴く曲でしたが、哀愁に満ちたタンゴの美しいメロディが流れ出て、優しく心の琴線を揺らしました。

 続いてはお馴染みの「リベルタンゴ」です。編曲の面白さがあり、2台ギターならではの楽しみを感じさせ、ギターのオリジナル曲としても楽しめるものでした。

 再び二人のトークがありましたが、台東区生まれで、両国国技館が近く、大相撲の力士と身近に育ったそうです。佳織さんは稽古に励む力士たちに負けないようにギターの練習をするよう父に指導されたそうです。そして、今日信濃川の川べりを散歩したこと、川べりでサングラスを水の中に落としてしまいましたが、無事拾うことができたことなど、楽しく語ってくれました。

 曲目紹介があり、最後は「ラプソディー・ジャパン」です。日本の童謡がメドレーで演奏されました。さくらさくら〜花〜ずいずいずっころばし〜故郷 と、情感豊かに演奏し、しみじみとした感動とともに予定のプログラムは終演になりました。

 大きな拍手に応えて、佳織さんだけが登場し、アンコールとして、最新アルバムに収録し、今朝放送された「題名のない音楽会」でも演奏された「ファイナルファンタジー」の曲が演奏されました。奏一さんの編曲だそうですが、ゲーム音楽という枠を外しても、ギター曲として魅力あるものであり、大きな感動を誘いました。

 拍手に応えて、今度は二人で登場し、今やギターのスタンダードナンバーとなった「カヴァティーナ」が演奏されました。甘く、ゆったりと、胸が熱く締め付けられるような演奏で、最後を締めくくるに相応しい感動の音楽をプレゼントしてくれました。

 拍手に応えて、客席に向かって各方向にゆっくりと何度も礼をしてくれました。あまりにも丁寧な礼で、こちらも恐縮してしまうほどで、お二人の人柄の良さが伝わってきました。二人と客席とで手を振り合って、感動の演奏会は終演となりました。

 クラシックギターの柔らかなサウンドと、魅力ある曲の数々、そして楽しいトークと、期待に違わぬコンサートで、大きな満足感とともにホールを後にしました。
 外は爽やかな秋晴れでしたが、いい音楽を聴き、私の心も晴れ晴れでした。駐車場を出て、眩しい西日に向かって車を進め、現実世界へと戻りました。
 

(客席:1階13-17、¥6000)