第12回浜松国際ピアノコンクール入賞者ガラコンサート in りゅーとぴあ
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2025年6月21日(土)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ピアノ:鈴木愛美、ヨナス・アウミラー、小林海都
 
小林海都(第3位) 
ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23
ショパン:ワルツ 第2番 変イ長調「華麗なる円舞曲」Op.34-1
ドビュッシー:前奏曲集より
 「帆」
 「妖精はよい踊り子」
 「亜麻色の髪の乙女」
 「ヴィーノの門」
 「風変わりなラヴィーヌ将軍」

ヨナス・アウミラー(第2位) 
ショパン:即興曲 第2番 嬰ヘ長調 Op.36
ブラームス:6つのピアノ小品 Op.118より 第2曲「間奏曲」イ長調
リスト=アウミラー:交響詩 第3番「前奏曲」(ピアノソロ版)

(休憩20分)

鈴木愛美(第1位、聴衆賞、室内楽賞受賞) 
シューマン:幻想小曲集 Op.12
 第1曲「夕べに」
 第2曲「飛翔」
 第3曲「なぜに」
 第4曲「気まぐれ」
 第5曲「夜に」
 第6曲「寓話」
 第7曲「夢のもつれ」
 第8曲「歌の終わりに」

(アンコール)
ラフマニノフ:6手のための3つの小品 より ロマンス
 
 

 今日は、昨年11月に浜松市で約1ヶ月に渡って開催された第12回浜松国際ピアノコンクールの上位入賞者によるガラコンサートです。出演するのは、コンクール史上初の日本人優勝者となった鈴木愛美さん、第2位のヨナス・アウミラーさん、第3位の小林海都さんの3人です。
 このコンクールは1991年に始まり、3年に1度開催されており、若手演奏家の登竜門として知られています。このコンクールの入賞をきっかけに、世界的に活躍する演奏家を数多く輩出しています。
 世界的にもハイレベルなコンクールであり、このコンクールの第1位・第2位入賞者は、5年に1度開催されるショパン国際ピアノコンクールの予選が免除されます。この権威あるコンクールに日本人が第1位と第3位を受賞するというのは画期的なことですね。
 コンクールの優勝者には、全国での優勝者記念ツアーが組まれており、単独のリサイタルやオーケストラ公演のソリスト、ガラコンサートなど、今年の2月から来年の3月まで、26公演が予定されています。新潟公演は、第1位〜第3位の上位入賞者3人によるガラコンサートとして開催され、大変お得な公演ともいえましょう。
 鈴木さん、小林さんの活躍ぶりは知っていましたが、実際の演奏を聴くのは今回が初めてです。ちなみに、小林さんは、7月13日に上越市でリサイタルを開催される予定になっています。

 今週は梅雨の中休みで、6月というのに真夏の暑さが続いています。今日も朝から晴れ渡り、ギラギラ太陽が容赦なく照りつけ、気温はぐんぐんと上がりました。
 いつものルーチンワークを終えて、着飾って出かけた暴君を見送り、猛暑の中に車を進めました。白山公園駐車場に車をとめて、静かな空気が流れる上古町に足を延ばし、馴染みの楼蘭で昼食を摂り、りゅーとぴあへと向かいました。
 県民会館を覗いて、某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあに入館しますと、ロビーは多くの人たちで賑わっていました。チラシ集めをして、開場とともに入場し、ロビーの椅子に座って、この原稿を書きながら開演を待ちました。

 開演時間となり、ホールに入って席に着きました。上位入賞者が一堂に会する魅力あるコンサートであり、盛況になるものとばかり思っていたのですが、客席には空席が目立ちました。新潟のような地方都市では、若手演奏家はネームバリューが乏しく注目されないのでしょうか。
 ともあれ、2階正面前方の私の席の周辺は混雑しており、A席・B席エリアはかなり埋まっていて、空席が多い場所と密集した場所とのコントラストが興味深く感じられました。

 開演時間となり、トップバッターの第3位の小林海都さんが登場しました。小林さんは1995年生まれで、2021年9月のリーズ国際ピアノコンクール第2位をはじめ、数々のコンクールの入賞歴があります。
 ショパンのバラード第1番で開演しました。ゆったりとためを作って始まり、柔らかく、優しく歌い、そして流麗にスピードアップしました。清らかに曲が流れ、透明感のある上品さを感じさせる音の美しさに酔いしれました。
 続いては、ショパンのワルツ第2番「華麗なる円舞曲」です。軽やかに、少しスピーディにリズムを取って、アクセントを付けながら演奏して楽しませました。
 次は、ドビュッシーの前奏曲集から5曲演奏されました。「帆」は、幻想的な響きから不安げな、ミステリアスな世界へと誘い、「妖精はよい踊り子」は、妖精たちがせわしなく駆け回り、「亜麻色の髪の乙女」は、ゆったりと、メロディアスに、美しくしっとりと幻想の世界を彷徨いました。「ヴィーノの門」は、重々しく、暗さの中でもがき、「風変わりなラヴィーヌ将軍」は、大きくアクセントを付けて、威張ってみたり、滑稽に踊ってみたり、酔っ払いのように千鳥足で歩いたりして、威厳を示して終わりました。それぞれの曲の対比も面白く、ドビュッシーの世界を楽しみました。

 ピアノの椅子が交換されて鍵盤が掃除されて、続いては第2位のヨナス・アウミラーさんです。1998年にドイツで生まれ、2021年のブラームス国際コンクール優勝をはじめ、数々のコンクールの入賞歴があり、ジュリアード音楽院、クリーブランド音楽院で修士課程を修了したそうです。
 ショパンの即興曲第2番で開演しました。柔らかく始まり、次第に力を増して堂々と歌い、そして繊細に揺れ動き、光り輝き、優しく静かに終わりました。
 続いては、ブラームスの6つのピアノ小品から「間奏曲」です。ロマンチックに切なく歌い、胸を熱くして締め付けられるようで、甘美な世界に溺れそうになりました。
 次は自分自身で編曲したリストの交響詩第3番「前奏曲」のピアノソロ版です。静かに始まり、不安な空気が流れ込み、静寂をかき乱しました。聴き馴染みのある前奏曲のメロディが盛大に奏でられ、穏やかさと強さが交互に絡み合い、次第にエネルギーを高めて、再び静けさに戻り、安らぎの沈黙から、暗雲が沸き上がり、嵐がやってきました。暴風が吹き荒れ、雷鳴が轟き、稲妻が光りました。
 そして嵐は過ぎ去り、安らぎが訪れました。子守唄を聴きながら、明るく平和を楽しみ、その喜びに胸が高鳴りました。歓喜の歌を歌い、雄たけびを上げ、高らかに力強く、堂々と胸を張って行進しました。
 圧倒的な演奏にブラボーが沸き上がり、今回の演奏の中で、もっとも熱い興奮をもたらしてくれました。自分自身の編曲というのも素晴らしく、注目されるピアニストに思われました。

 休憩後の後半は、優勝者の鈴木愛美さんです。2002年に大阪で生まれ、東京音大を主席で卒業し、現在は大学院に特別特待奨学生として在籍中だそうです。2023年のピティナ・ピアノコンペティション特急グランプリ、第92回日本音楽コンクールピアノ部門第1位などの受賞歴があり、これから国際舞台への飛躍が期待されます。
 華やかなドレス姿かと思ったのですが、黒いパンツスーツ姿で登場し、シューマンの幻想小曲集の8曲が続けて演奏されました。
 第1曲「夕べに」は、ゆったりと、優しく歌い、第2曲「飛翔」は、激しく感情を高ぶらせ、第3曲「なぜに」は、しっとりと、ゆったりと、第4曲「気まぐれ」は、力強くリズムを刻み、第5曲「夜に」は、足早に進み、揺らぎが激しい流れとなって、聴く者の心に中に激流が流れ込んできました。
 第6曲「寓話」は、ゆったりと、そして軽やかに、その緩急の対比も鮮やかで、思いっきりゆったりと歌わせて、静かに終わりました。
 第7曲「夢のもつれ」は、軽やかに、スピーディに流れ落ち、小気味良い軽やかさが気持ちよく、ゆったりと歌って、再び泉が沸き出るように流れて行きました。
 第8曲は、少し激しく訴えかけて、力強いパワーとともにリズムを刻みました。軽やかに駆け抜けて、壮大さを感じさせるも静けさが訪れ、一歩一歩足元を確かめて静かに終わりました。
 曲調もあって、客席に興奮をもたらすということにはなりませんでしたが、しっとりとした感動を与えてくれて、大きな拍手が贈られました。

 ピアノの椅子が3脚用意されて、アンコールは3人による連弾で、ラフマニノフの「6手のための3つの小品」より「ロマンス」が演奏されました。低音部がアウミラーさん、中音部が小林さん、高音部が鈴木さんと、肩を寄せ合って、6手による演奏で楽しませてくれました。曲自身もラフマニノフらしい美しい曲で、3人の妙技を楽しませていただきました。

 選曲も多彩で、テクニックをひけらかして圧倒するということもなく、それぞれの個性を示しながら、静かな感動をを与えてくれました。3人の若き演奏家が、これからどのように羽ばたいていくのか注目していきたいと思います。、
 

(客席:2階C2-9、S席:¥4000)