今日は柏崎市文化会館アルフォーレで開催される新潟県民オペラ「トゥーランドット」全3幕です。演奏会形式で、イタリア語での上演です。
新潟県民オペラと題していますように、湯沢町出身の笛田博昭氏がカラフ役、加茂市出身の三浦克次氏がティムール役、燕市出身の渡辺康氏がパン役で出演し、オーケストラは新潟セントラルフィルハーモニー管弦楽団、合唱は公募による新潟県民オペラ合唱団、そして柏崎少年少女合唱団と、まさに新潟県民の手による“県民オペラ”といえましょう。せっかくの記念すべき公演ですので、柏崎に駆け付けて参加させていただくことにしました。
「トゥーランドット」は、誰もが知る「誰も寝てはならぬ」で有名ですが、実際のオペラ公演を観る機会はなく、私は2006年11月の新潟県民会館でのウクライナ国立歌劇場の公演を観たことしかありません。ちなみに、このウクライナ国立歌劇場の「トゥーランドット」は、来年1月に新潟県民会館で公演が行われます。
今回はオペラと言っても、オケはオーケストラピットではなく、ステージ上で演奏する演奏会形式ですが、全3幕を楽しめますので、大いに期待したいと思います。
今日は朝から小雨が降るあいにくの天候になりました。早めに家を出て、柏崎へと向かいましたが、高速は使わず、いつもの海岸沿いに行くことにしました。
家を出たときは雨は止んでいて曇り空でしたが、時おり小雨がぱらつく中に車を進めました。シーサイドラインは野積の手前で通行止めですので、弥彦・分水経由で寺泊に行き、某所ででひと休みして昼食を摂りました。
寺泊からは海岸の国道をひたすら走って柏崎入りしました。この道は信号がほとんどなく、交通量も少ないのでお勧めの道です。柏崎市内に入っても、各交差点をそのまま直進しますと、アルフォーレに到着できます。
柏崎と言えば、13年間単身赴任で暮らし、その後も週1回仕事で通い続けたなじみの町です。そんな柏崎の駅前に柏崎文化会館アルフォーレがあります。
非常に響きの良いホールで、ツィメルマンが絶賛し、ここでレコーディングしたことでも知られます。これまでも何度か聴きに来ていますが、落ち着きのある館内の雰囲気が素晴らしく、りゅーとぴあと並んで、私が大好きなホールです。
駐車場に車をとめて、館内に入りますと、ロビーは多くの人で賑わっていました。水分補給などしているうちに開場時間となり、私も開場とともに入場し、2階正面最前列の席に着きました。
席はSS席が設定されていましたが、私はS席です。2階の最前列ということで、見晴らしは良いと思ってこの席を選んだのですが、手すりがじゃまで残念でした。
1階の客席は前方が取り払われて、ステージが前方に張り出すように拡張されており、その部分でオペラが演じられるようになっていました。
その後方にオーケストラが並びましたが、左右に並ぶ多彩な打楽器群が目立ち、左にハープとチェレスタが並んでいました。
このオケの後方に合唱団席が設けられていました。そして後の壁には、横長の字幕のディスプレイが設置されていました。
ステージに新潟セントラルフィルの団員が順次出てきて音出しをして、気分が盛り上がりました。オケは通常配置の10型で、10-8-6-6-4
です。
メンバー表を見ますと、いつもの新潟セントラルフィルより豪華な名前が並び、コンマスは名古屋フィルのコンマスの日比浩一さんです。
そのほかヴィオラ、チェロ、コントラバスや、ティンパニなどの要どころには客演を迎えて強化を図っているようでした。
そのほか第1ヴァイオリンのコンマス横には佐々木友子さん、ほかに高橋百合さん、松村牧子さんなどが参加され、第2ヴァイオリン主席は庄司愛さんで、そのほか原山美香さん、井口歩さんなどがおられます。チェロ主席は客演の青嶋直樹さんで、その横には渋谷陽子さんが並び、ほかに前田美華さん、山田慧さんなどの名前もあります。コントラバスの主席は新潟出身の上田淳さんです。
管や打楽器にも、渡辺茜さん、古俣友絹さん、林佳保里さん、倉澤桃子さんなど、おなじみの名前がずらりと並び、さらにチェレスタは大瀧拓哉さん、ハープは山宮るり子さんと、新潟のオールスターが勢揃いする垂涎の豪華メンバーです。
オケが全員揃ったところで開演時間となり、開演のアナウンスが流れ、合唱団が入場しました。合唱団が着席して場内が暗転し、チューニングになりました。指揮者の柴田真郁さんが登場して、いよいよ第1幕の開演です。
オーケストラの演奏とともに第1幕が始まりました。そのオーケストラサウンドの美しさに感嘆し、素晴らしい合唱とともに音楽劇に引き込まれました。打楽器が盛大に鳴り響く迫力ある演奏、そして美しい弦楽アンサンブル。これまで聴いてきた新潟セントラルフィルから大きくレベルアップしており、在京のプロオケにも引けをとりません。児童合唱は歌う場面だけ左袖に出てきて、歌い終わるとすぐに下がりました。
笛田さん演じるカラフが山田さん演じるトゥーランドットにひと目ぼれしますが、トゥーランドットは氷をイメージさせる水色のドレスでした。三浦さん演じるティムールとその従者の砂川さん演じるリューとカラフが再会しますが、リューはブルーのドレスでした。3人の大臣のピン、ポン、パンは譜面を見ながらの歌唱でした。
トゥーランドットは、3つの謎に正解したものを夫としますが、不正解だと断首の刑に処せられます。カラフはこれに挑戦しようとし、これを止めようとするリューのアリアが素晴らしく、砂川さんに大きな拍手とブラボーが贈られました。カラフは続くアリアでリューをなだめますが、この笛田さんの歌うアリアが素晴らしく、さすがと唸らせました。
迫力あるオケと合唱で、壮大に盛り上がり、第1幕は終了しました。客席からはブラボーと大きな拍手が沸き起こり、各出演者とオークストラ、合唱団の素晴らしいパフォーマンスを讃えました。
20分間の休憩を終えて、指揮者とピン、ポン、パンが登場して、第2幕が始まりました。前半はこの3人のアンサンブルが聴かせどころでしたが、お見事でした。
壮大なオケと合唱に導かれて、皇帝とカラフが登場して、ストーリーが展開します。児童合唱とともにトゥーランドットが登場しますが、児童合唱は歌い終わるとすぐに引っ込みました。トゥーランドットのアリアが美しく、山田さんの声量の素晴らしさに感嘆しました。
トゥーランドットが3つの質問をして、カラフが次々に応えて勝利しますが、トゥーランドットはこれを拒み、カラフは夜明けまでに自分の名前がわかれば命を捧げると申し出るというストーリーですが、各出演者とも素晴らしい歌声でした。壮大なオケと合唱団の素晴らしさも際立っていて、圧倒的な高揚感を感じさせてくれました。
「誰も寝てはならぬ」の一節が流れ、トゥーランドットが舞台から去り、オケが迫力いっぱいに鳴り響き、合唱が壮大に歌い上げて第2幕が終わりました。
2度目の休憩が終わり、いよいよ第3幕です。合唱団が「ネッスン・ドルマ」と歌い、カラフのアリア「誰も寝てはならぬ」が歌われました。このオペラの一番の見せ場ともいえましょうが、笛田さんの見事な歌声がホールに響き渡り、大きな感動をもたらしました。
カラフの名前を教えろとリューは迫られて拷問を受けますが、口を割らず、自ら命を断ちます。このときのリューのアリアも聴かせどころですが、砂川さんの切々とした歌声は心に沁みて、大きな感動をもたらしました。死んだリューを悼むティモールの悲しい歌声も素晴らしかったです。
カラフがトゥーランドットに口付けし、カラフは自分の名前と身分を明らかにし、名前を知ったトゥーランドットは勝利したはずでしたが、その名前は「愛」と高らかに宣言し、氷の心を持ったトゥーランドットが改心して、めでたしめでたしとなりますが、素晴らしい感動でした。
迫力ある合唱と、これでもかというくらいに音量豊かに鳴り響くオケに圧倒され、鳥肌が立つようなフィナーレで音楽劇は終演となりました。
何度もカーテンコールが繰り返され、笛田さんは客席に投げキッスをし、場内が明るくなって、最後はステージと客席とで手を振り合い、コンマスが礼をして、感動と興奮の公演は全て終了しました。
舞台装置や、特別な衣裳のない演奏会形式の公演で、合唱団のほか、ピン、ポン、パンは終始楽譜を見ながらの歌唱で演技はなく、カラフやトゥーランドットも、ときどき楽譜を見ながら歌っていました。
これが奏功していたと思われ、歌唱は素晴らしく、舞台装置や小道具、演技を含めたオペラとしてではなく、独唱者と合唱団と共演するオーケストラコンサートとして、十二分に楽しめました。
各独唱者の歌声の素晴らしさは期待通りでしたが、オケと合唱の素晴らしさには驚嘆し、大きな感動をいただきました。
新潟のオケ、新潟の合唱団が、これほどの演奏をしてくれるとは思いもよらず、期待の何倍もの感動をいただきました。今年のベスト10候補にノミネートしたい素晴らしい公演でした。
大きな感動とともに外に出ますと、小雨が降っていました。海岸道路を北上し、信号のほとんどない道を快適なドライブで進み、1時間40分ほどで帰宅できました。
(客席:2階1-18、S席:¥5500) |