ブラームス ホルン三重奏の調べ
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2025年9月14日(日)14:00 新潟市江南区文化会館 音楽演劇ホール
ホルン:上間善之、 ヴァイオリン:佐々木友子、 ピアノ:石井玲子
 
ブラームス:F.A.E.ソナタ より スケルツォ
シューマン:ロマンス Op.94、No.2
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作
シュトラウス:告別
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番(ヨアヒム編)
バルトーク:ルーマニア民族舞曲
  第1番 棒踊り
  第2番 腰帯踊り
  第3番 足踏み踊り
  第4番 角笛の踊り
  第5番 ルーマニアのポルカ
  第6曲 速い踊り

(休憩15分)

ブラームス:ホルン三重奏曲
  第1楽章 アンダンテ
  第2楽章 スケルツォ:アレグロ
  第3楽章 アダージョ・メスト(悲しげに)
  第4楽章 フィナーレ:アレグロ・コン・ブリオ

(アンコール)
ブラームス:子守歌
 

 今日は新潟で活躍するヴァイオリンの佐々木友子さんとピアノの石井玲子さんが、東京交響楽団主席ホルン奏者の上間善之さんを迎えてのコンサートです。
 佐々木さんと石井さんは、それぞれが研鑽を積んでいたときにブラームスのホルン三重奏曲に惚れ込んでいたそうで、今回上間さんを迎えてこの曲を演奏する演奏会を企画したとのことです。

 新潟で最も活躍しているヴァイオリニストの一人である佐々木友子さんと、演奏者として教育者として活躍されている石井玲子さんは、改めて紹介することもないでしょう。このお二人が上間さんを迎えて、どのような音楽を作ってくれるのか楽しみでした。
 特にメインのブラームスのホルン三重奏曲は新潟で演奏される機会は滅多にないものと思われますので、私の残された人生を考えますと、この曲を聴く貴重な機会であることは間違いありません。

 ということで、楽しみな演奏会だったのですが、所用もあって当初はこの演奏会に行く予定はありませんでした。しかし、予定が変わって夕方まで時間ができたため、急遽出かけることにしました。

 簡素な昼食を摂り、13時過ぎに家を出て、新潟西バイパス〜新潟バイパス〜亀田バイパスと快適に進み、家から信号4つで江南区文化会館に到着できました。
 駐車場はいつになく混雑していましたが、空きを見つけて駐車し、館内に入りました。ちょうど開場が始まるところで、当日券を買って入場しましたが、自由席でなく指定席になっていてびっくりしました。
 室内楽ということで、正面前方に席を取り、この原稿を書きながら開演を待ちました。ステージにはスタインウェイとその前方に譜面台が設置されていました。

 開演時間となり、紺色のドレスの佐々木さん、黒いドレスの石井さんが登場しました。お二人とも容姿端麗であり、前方に席を取った甲斐がありました。
 1曲目は、ブラームスの「F.A.E.ソナタ」から「スケルツォ」です。暗くて激しいピアノとともに緊迫感のある出だしに始まって、ヴァイオリンが泣き叫び、途中は穏やかに歌うも、再び激しくなり、緩急を繰り返して力強く終わりました。ヴァイオリンとピアノのぶつかり合いが緊迫感を生んでいました。最初から聴き応えある演奏に圧倒されました。

 佐々木さんが退場して石井さんによる挨拶と曲目紹介がありました。佐々木さんが再登場して、2曲目はシューマンの「ロマンス」です。ゆったりと優しくメロディが流れ、そして情熱的に思いを訴えかけ、美しいヴァイオリンの調べに、うっとりと聴き入りました。

 2人が退場し、石井さんだけ再登場して、3曲目はショパンのノクターン第20番「遺作」です。ゆったりと、しっとりと、メランコリックなショパンの世界に酔いしれました。

 石井さんが下がり、上間さんと石井さんが登場して、4曲目はシュトラウスの「告別」です。シュトラウスといってもどのシュトラウスなんだろうと思いましたが、リヒャルト・シュトラウスの父のフランツ・シュトラウスの代表作なんだそうです。
 力強いピアノに始まり、ホルンが歌いました。朗々と、少し悲しげに、ピアノと呼応しながら、ゆったりと、ふくよかなサウンドで歌いました。ピアノも素晴らしく、ソフトなホルンの響きが心地良く感じられました。

 石井さんと上間さんによるMCがあり、上間さんからホルンについての解説がありました。フレンチホルン、ナチュラルホルンのことなど興味深く拝聴しました。
 上間さんが退場して、石井さんから、これから演奏するブラームスのハンガリー舞曲とバルトークのルーマニア民族舞曲についての説明がありました。

 佐々木さんが登場して、5曲目はブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」で、ヨアヒムによるヴァイオリンとピアノの編曲版です。
 力強いピアノとヴァイオリンで熱い演奏が繰り広げられました。ホールの響きも美しく、力強いサウンドに魅了されました。

 ここで佐々木さんによりヴァイオリンの説明がありました。ソ・レ・ラ・ミの4本の弦があること、次の曲で用いられるピチカートやフラジオレットとう演奏手法のことなど、ほのぼのとした語り口で説明してくれました。

 そして、前半最後は、バルトークの「ルーマニア民族舞曲」です。第1曲はヴァイオリンとピアノが力強く歌い、第2曲は軽やかに、第3曲はフラジオレットを駆使した神秘的なサウンドを聴かせ、第4曲はゆったりと、第5曲は激しく胸を高ぶらせ、第6曲はリズミカルに激しくステップを踏んで、生き生きと演奏しました。
 各曲の対比も鮮やかに、民俗色豊かな音楽を楽しませてくれて、ホールに感動をもたらし、大きな拍手が贈られて休憩時間になりました。

 休憩後の後半は、いよいよブラームスの「ホルン三重奏曲」です。新潟で聴けるチャンスはなく、貴重な演奏になります。この曲は、1865年のブラームスの母が亡くなった年に完成した曲で、「亡き母に捧げる悲歌」とも呼ばれているそうです。

 3人が登場して椅子に座って演奏が始まりました。第1楽章は、ヴァイオリンで始まり、ピアノ、ホルンが加わりました。3人が別々に歌い、そして重なり合いました。ゆったりと音楽を奏で、激しさを見せて互いに嘆きあうも、再び穏やかにゆったりとホルンが歌い、ヴァイオリンが呼応しました。感情の波を繰り返して情熱を高ぶらせて、ゆったりと終わりました。
 第2楽章は、力強く始まりました。激しく走り回るように躍動する音楽が奏でられました。中間部は一転して哀愁に満ちて悲しげに歌いました。そして静けさから再び走り出して、躍動するリズムとともに、力強く歌いました。スピードアップしてエネルギーを高めて、大きな盛り上がりの中に終わりました。
 第3楽章は、母への思いが込められた悲しみの楽章です。悲しげなピアノに始まり、ホルンとヴァイオリンが切々とメロディを奏でました。暗く、嘆き悲しむような、しっとりとした音楽が流れ出ました。我を忘れて泣き叫ぶようで、暗さに満ちた音楽に胸が締め付けられ、ホルンの柔らかな調べに涙しました。悲しみが大きな感情の高まりとなり、静かに終わりました。
 第4楽章は、軽快に始まり、明るさを取り戻して走り回るかのようでした。3人が激しくぶつかり合い、呼応し、スピード感豊かに走り抜け、雄たけびを上げて熱く盛り上がりました。激しくリズムを刻んで、小休止の後にどんどんと加速して、ホルンが叫び、エネルギーを高めてスピードアップしてフィナーレとなりました。

 3人の渾身の演奏によってホールに大きな感動と興奮がもたらされ、大きな拍手が贈られました。拍手に応えてのアンコールはブラームスの「子守歌」でした。しっとりと優しく演奏し、興奮を鎮める極上のデザートをプレゼントしてくれました。

 期待以上の素晴らしい演奏に、大きな満足感をいただいてホールを後にしました。ほかのイベントと重なったようで、駐車場を出るのに一苦労でしたが、いい音楽を聴けた満足感とともに、気分良くバイパスを走りました。
 

(客席:2-14、当日券:¥3500)