りゅーと新潟フィルハーモニー管弦楽団第7回定期演奏会
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2025年3月9日(日)14:00 新潟市江南区文化会館 音楽演劇ホール
指揮:若林康之
 
吉松 隆:鳥は静かに...

ハイドン:交響曲第101番「時計」

(休憩15分)

ベートーヴェン:交響曲第8番

(アンコール)
J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
 
 りゅーと新潟フィルハーモニー管弦楽団は、新潟のフルート界の重鎮である榎本正一さんを指揮者として、2017年12月10日に第1回定期演奏会(創立記念特別演奏会)を開催してスタートを切りました。
 定期演奏会のほか、サマーコンサート、「合唱団にいがた」との共演などを行い、私も何度か聴かせていただいております。
 今回は第7回定期演奏会で、昨年3月の第6回定期演奏会以来、1年ぶりに聴かせていただくことにしました。今回のプログラムのメインは、ベートーヴェンの交響曲第8番です。
 2019年2月の第2回定期演奏会からベートーヴェン交響曲全曲演奏シリーズが始まり、今回はその5回目です。第1番から順に演奏してきており、順番から言えば今回は第5番になるはずですが、人気の定番曲の第5番、第6番、第7番を飛ばして、交響曲第8番が演奏されます。
 指揮は、旧下田村出身で、第5回定期演奏会から指揮している若林康之さんです。下田村で若林といいますと、ちょっとした知り合いがいるのですが、まさか、あの・・・。違いますよね。

 日曜日の朝、なかなかまとまらなかった昨日の公演の記事を書き上げてアップし、ひと息つきました。ネコのブラッシングをして戯れ、ゆっくりと簡素な昼食を摂り、江南区文化会館へ車を進めました。バイパス経由で、私の家から信号4つ、20分ほどで到着できました。
 江南区文化会館は、広大な無料駐車場があり、新潟市内のホールの中では、私にとって一番便利なホールです。館内には図書館や郷土資料館等があり、隣には大きな体育館(アスパーク)もあります。亀田出身の私にとっては地元でもあり、愛着を感じます。

 ホールに入りますと、既に開場待ちの列ができていましたので、私もその列に並びました。予定開場時間より少し早目に開場となり、中段左寄りに席を取りました。
 プログラムに記載されたメンバー表を見ますと、これまで同様に、賛助出演やお試し出演の方が多く、正団員は16人だけです。メンバーの中には、仕事上で大変お世話になっているKさんや、同業の大先輩のTさんの名前もありました。コンサートマスターは、先回と同様に、ゲストコンサートマスターの奈良秀樹さんです。

 開演時間となり、弦楽セクションだけが入場し、1曲目は吉松 隆の「鳥は静かに...」です。弦は 6-7-5-4-2 です。指揮台は置かれていません。黒シャツの若林さんが登場して演奏開始です。
 ヴィオラの連続音に導かれて、ヴァイオリンが美しくメロディを奏で、その調べにうっとりと聴き入りました。チェロとコントラバスが加わって音の厚みを増し、この上なく美しい弦楽アンサンブルの響きに感嘆しました。
 コンマスのソロが切なげに泣き、低弦が重厚に響いて、次第に音の厚みを増していく美しさに心奪われました。鳥が鳴くような第2ヴァイオリン主席のソロも悲しげで、胸が締め付けられるようでした。冒頭に回帰して静寂の中に曲は終わりました。
 なんと美しい曲であり、なんと美しい演奏でしょう。弦楽アンサンブルの美しさに感嘆し、この曲を聴けただけでも満足にすら感じました。

 管楽器とティンパニが加わって、2曲目はハイドンの交響曲第101番「時計」です。若林さんが登場して、演奏が始まりました。
 第1楽章は、ゆったりと重厚に始まり、ひと呼吸置いて、明るく軽快に歩き出しました。小編成のオケながらも十分に厚みがあって、美しく響き、オケの仕上がりの良さが実感されました。メンバーを見渡しますと、失礼ながらかなりご高齢の方も混じっておられますが、音楽は生き生きと躍動感に溢れていて、パワーも十分でした。
 第2楽章は、ゆっくりとリズムを刻み、弦のピチカートの上に第1ヴァイオリンがお馴染みのメロディを楽しげに奏でて演奏が始まりました。時計が時間を刻む様子が楽しく、美しく演奏され、心も和やかになりました。
 突然曲調が暗くなるも、低弦がリズムを刻み続け、再び明るさを取り戻して、美しいファゴットやフルートとともに、優しげにヴァイオリンが歌い、ネジが切れて時計が止まるも、再び動き出し、力強く時を刻んで楽章を閉じました。
 第3楽章は、堂々と力強く始まり、ゆったりと踏みしめるようにステップを踏み、風格を感じさせました。フルートソロは絶品であり、いい味を添えてくれました。小休止をはさみながら、堂々とした音楽が繰り広げられました。
 第4楽章は、美しい弦楽アンサンブルに始まり、管とティンパニが加わって、高らかに歌い、力強く、エネルギー感に溢れていました。どんどんとパワーアップし、弦楽がフーガのように掛け合って、どんどんと熱量を上げて、フィナーレを迎えました。
 しっかりとした演奏で、曲の良さ、楽しみが十分に感じ取られました。大きな拍手が贈られて、前半のプログラムは終了しました。

 休憩後の後半は、ベートーヴェンの交響曲第8番です。弦は 6-6-5-4-2 です。若林さんが登場して演奏が開始されました。
 第1楽章は、堂々と始まりました。前半は感じられませんでしたが、小編成の弦楽と管楽器、ティンパニとの音量差が感じられ、弦が埋没する場面が若干ながら感じられました。
 一歩ずつ確かめるように、歯切れ良く音楽を奏で、熱量を上げ、ひと呼吸置いて仕切り直しをし、再びエネルギーを蓄えて、力強い足取りとともに楽章を閉じました。
 第2楽章は、管が刻むリズムに弦が加わりました。前半演奏された「時計」と比較されますが、ハイドンのような鈍重さはなく、足早に軽快に駆け進んで行き、快さを感じました。
 第3楽章は、ゆったりと歌わせるも、足取りは1歩ずつ踏みしめるようで、流麗さには欠けましたが、しっかりとした、堂々とした音楽が生み出されました。ホルンが鳴り、クラリネットが呼応し、ゆったりと音楽を奏でました。
 第4楽章は、速いヴァイオリンの合奏で始まり、力強くリズムを刻み、立ち止まって足元を確かめ、スピードを上げて走り出しました。ギアチェンジして力強さを増して熱を帯び、小休止をはさんで再び走り出し、スピードアップ、ヒートアップしてフィナーレへとアクセルを踏み、ティンパニの連打とともに曲を閉じました。

 大きな拍手に応えて、若林さんは各パートのところまで出向いて、それぞれのパートのパフォーマンスを讃えました。ここまでする指揮者は珍しいですね。
 指揮者とコンマスに花束が贈られ、鳴り止まない拍手に応えて、アンコールにバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」が演奏され、感動の演奏会は終演となりました。

 アマチュアならではの多少のアンサンブルの乱れはありましたが、ここまでの演奏なら、アマチュアとしては十分だと思います。曲の良さを十分に楽しむことができました。
 特に最初の吉松作品の弦楽アンサンブルにはうっとりし、2つの交響曲もしっかりした演奏であり、練習の成果が遺憾なく発揮されたものと思います。
 次回の第8回定期演奏会は、シューベルトの「未完成」とベートーヴェンの「運命」という鉄板のプログラムです。会場は今回と同じ江南区文化会館です。大いに期待しましょう。

 いい音楽を聴いた感動と喜びとともに外に出ますと、青空が見えて春の訪れを感じさせました。ホールから家まで18.2km。バイパスの渋滞がなく、20分で帰宅できました。私にとっては、やはり市内で一番便利なホールですね。

 
(客席:9-9、¥1000)