ピアノ音楽の調べ 〜バロックから近現代〜 | |
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2025年3月1日(土)14:00 マルタケホール | |
ピアノ:小林浩子、深海侑希 | |
深海侑希 スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K.9 L.413 スカルラッティ:ソナタ ホ長調 K.380 L.23 小林浩子 ベートーヴェン:ピアノソナタ第12番 変イ長調 "葬送" 作品26 より 第1楽章 深海侑希 リスト:リゴレット・パラフレーズ S.434 (休憩15分) 連弾:深海侑希、小林浩子 フォーレ:ドリー 1. 子守唄 2. ミーアーウー 3. ドリーの庭 6. スペインの踊り 連弾:小林浩子、深海侑希 ドビュッシー:小組曲 1. 小舟にて 2. 行列 3. メヌエット 4. バレエ (アンコール) 連弾:小林浩子、深海侑希 ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ |
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今日は新潟県出身のピアニスト二人のコンサートです。ともに新潟中央高等学校音楽科を卒業後、昭和音楽大学で学ばれたという共通点があります。 小林浩子さんは、演奏も人柄も素晴らしく、デビュー当初からのファンであり、様々な機会で演奏を聴かせていただいていますが、毎回期待を裏切らない演奏で楽しませてくれます。東京に拠点を移されていますが、新潟を代表するピアニストとして活発な演奏活動をされており、その目覚しい活躍ぶりは私が紹介するまでもないでしょう。 一方深海侑希さんは、前に演奏を聴く機会があったようには思いますが、ちゃんとしたコンサートは聴いたことがなく、今回じっくりと聴かせていただこうと思いました。 今回の演奏会のテーマは「バロックから近現代へ」で、バロック時代から近現代の音楽まで、様々な時代の音楽を取り上げてくれます。大いに楽しませていただきましょう。 今日は、りゅーとぴあでは作家の林真理子さんを迎えてのオペラコンサートが開催され、これも興味はありましたが、趣旨が良く分からず、こちらのコンサートを選びました。今回は紙チケットではなく、初めて電子チケットを購入しました。便利には違いないですが、味気なくも感じます。 今日から3月。いよいよ春ですね。3週間前は大雪で苦労していたことが嘘のように、気温が上がって青空が広がり、春の到来を思わせる好天となりました。 晴れ渡って気温も上がり、過ごしやすい陽気の中、新潟駅前へと車を進め、マルタケビルに隣接した立体駐車場に車をとめました。新潟駅で時間調整してマルタケビルへと向かいました。 エレベーターで8階に上がり、ロビーで開場を待ちました。ロビーの窓からは新潟駅が一望されて、眺めが良いですね。 開場時間となり、QRコードを提示して入場し、4列目左寄りに席を取りました。小さいホールですので、混雑するかと思ったのですが、客席には余裕があり、ゆったりできました。小さなステージには、小型のスタインウェイB型が設置してあります。 このホールに来たのは、昨年5月の新潟クラシックストリートでの大島みなみさんと小林浩子さんの演奏会以来ですので、随分と久しぶりです。 開演時間となり、最初は深海さんが登場し、バロック時代の音楽として、スカルラッティのソナタの2曲が続けて演奏されました。 ソナタ ニ短調 で演奏が始まりましたが、柔らかで、ふくよかなピアノが響き渡りました。小さなホールですので、音量も十分です。ピアノの美しい音に、最初から魅了されました。 2曲目のソナタ ホ長調 は、軽快にステップを踏んで踊るように、心地良いリズムで楽しませてくれました。ピアノの音の美しさに感嘆し、深海さんの素晴らしさが実感されました。 ここで、小林さんと深海さんによる挨拶と、バロックから古典派、ロマン派、そして近現代へとつながる今日のプログラムの趣旨について説明がありました。 そして、深海さんから、先ほどのスカルラッティの曲についての説明があり、続いて小林さんから、これから演奏するベートーヴェンのピアノソナタ第12番第1楽章について説明がありました。通常なら三部形式になるところを、変奏曲にしているところが特異的とのことでした。 その後小林さんによる演奏が始まりましたが、ゆったりとしたふくよかなサウンドで主題が奏でられ、その後変奏へと移行しました。美しく形を変え、軽快に、そしてゆったりと暗く、そしてちょっと変則的にリズムを刻み、そして流麗に、どんどんと形を変えて5つの変奏を楽しませてくれました。 さすがに小林さんの演奏は穏やかで美しく、安定感に溢れていますね。流れ出る音楽にうっとりと聴き入りました。このソナタの副題の「葬送」の由来である第3楽章を含めて全曲を聴きたいところですが、十分に満足できました。 続いて、深海さんによる曲目紹介があり、リストの「リゴレット・パラフレーズ」が演奏されました。ご存知のように、この曲はヴェルディの「リゴレット」を元にリストが編曲した曲ですが、落ち着きのある堂々とした演奏でした。安定した低音に支えられて、輝きのある高音の美しさが際立っていました。 春が来たかのような、明るく輝く音の泉。その流麗さに息を呑みました。ダイナミックさと音の美しさに感嘆しました。技術的に安定感があり、音楽の流れに身を委ねました。 休憩後の後半は、椅子が2つ並べられ、二人による連弾で、近現代の曲として、フォーレとドビュッシーの曲が取り上げられました。 まず、二人によるお話しがありましたが、小林さんは新潟中央高校音楽科の11期生、深海さんは20期生で接点はなさそうですが、小林さんが代用教員として中央高校に勤務されたときに、深海さんが学生だったそうです。小林さんの穏やかで楽しいトークで和ませていただきました。 最初はフォーレの「ドリー」で、深海さんのプリモで演奏されました。4曲演奏されましたが、お馴染みの「子守唄」の爽やかなメロディーに始まり、「ミーアーウー」は、軽快に弾むように駆け足し、「ドリーの庭」は、ゆったりと穏やかな中に憂いを見せて、しっとりと歌わせ、「スペインの踊り」は、明るく跳ねるように弾けて、色彩感を感じさせて、心も明るくなりました。軽快に淀みなく走る抜けて、爽快感が気持ちよく感じられました。 二人が一旦退場し、続いてはドビュッシーの「小組曲」です。今度は小林さんがプリモです。「小舟にて」は、ゆったりとした波間に浮かび、水面に光が反射して輝く光景が眼前に思い浮かび、「行列」は、明るく軽快に、緩急の波を作りながら大きなうねりとなりました。「メヌエット」は、軽快なリズムの中に、流れるように音楽が湧き出てきて、少し憂いを秘めたメロディが切なく響いてきました。「バレエ」は、弾むように軽快にリズムを刻み、緩徐部をはさんで、再びリズミカルにメロディを歌わせて、躍動感とともにフィナーレを迎えました。 大きな感動をもたらして、大きな拍手が贈られました。二人の挨拶がありましたが、その中で連弾のどちらのパートが好きかという話があり、二人とも下のパートが好きとのことでした。 そして、アンコールは、小林さんがプリモで、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が演奏されました。ちょっとパワーに溢れた演奏で、この曲の優しくはかないイメージからは若干ずれたかもしれませんが、感動のコンサートを熱く締めくくるには良い演奏だったと思います。 終演後はお二人が見送ってくださいました。素晴らしい演奏だったと感謝を述べさせていただき、ホールを後にしました。 小林さんの演奏の素晴らしさは期待通りであり、安定感のある美しい演奏を楽しませていただきました。今回初めて深海さんの演奏を聴かせていただきましたが、若き才能を目の当たりにして、素晴らしいピアニストに出会えた幸せを感じました。小林さんのサポートを得て、実力を十分に発揮できたものと思います。 小さなホールの濃密な空間で、美しい演奏と輝きのあるピアノの音色に酔いしれ、贅沢なひと時を過ごすことができました。二人のさらなる活躍を祈念し、このコンサートに来てよかったという満足感とともに、マルタケビルを出て、新潟駅前の雑踏に身を投じました。 (客席:D-4、¥2500) |