キャトル フルート コンサート vol.8
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2024年11月9日(土)14:00 新潟市民芸術文化会館 能楽堂
キャトル フルート: 丸田悠太、西山直子、水島あや、手島尚子
 
八木澤教司:風の戯れ
後藤元信:雲外蒼天
モーツァルト(神田寛明編):きらきら星変奏曲 KV300E(265)
ドビュッシー(神田寛明編):ベルガマスク組曲
  第1曲 プレリュード
  第2曲 メヌエット
  第3曲 月の光
  第4曲 パスピエ

(休憩15分)

福島和夫:フルート独奏のための「冥」
福田洋介:はなやぎ
サン=サーンス(神田寛明編):動物の謝肉祭
  第1曲 序奏と獅子王の行進  第2曲 めんどりとおんどり 
  第3曲 ロバ  第4曲 亀  第5曲 象  第6曲 カンガルー
  第7曲 水族館  第8曲 耳の長い登場人物  第9曲 森の奥に棲むカッコウ
  第10曲 大きな鳥籠  第11曲 フルーティスト  第12曲 化石
  第13曲 白鳥  第14曲 終曲

(アンコール)
ジュピター
 

 新潟ではたくさんのフルート奏者が活発に活躍しておられ、新潟の音楽界を盛り上げてくれていますが、その中にあって、キャトルフルートの活躍も特筆すべきでしょう。

 キャトルフルートは、新潟出身の4人のフルート奏者(丸田悠太さん、西山直子さん、水島あやさん、手嶋尚子さん)によって2010年に結成されたユニットです。
 2010年12月26日に第1回演奏会がだいしホールで開催され、以後2012年11月、2014年11月、2015年12月、2017年12月、2019年11月、2022年11月と開催を重ね、今回は第8回となります。2014年11月の第3回演奏会からは、りゅーとぴあの能楽堂を会場にして開催されています。

 丸田さんは東京佼成ウインドオーケストラで活躍しておられますので、この4人が揃う演奏会は少ないですが、新潟で活躍する丸田さん以外の3人は、キャトルフルートトリオとして活発に活動しておられ、私も新潟クラシックストリートなどで聴かせてもらいました。CD制作やYouTube配信などもされ、ファンが多く、手島さんが産休の間も、他の奏者を迎えて活動されていました。

 ということで、恒例の能楽堂での演奏会を、2015年12月の第4回演奏会以来、9年ぶりに聴かせていただくことにしました。

 与えられた仕事を終えて、簡素な昼食を摂り、ゆっくりと家を出て、りゅーとぴあへと向かいました。日差しは暖かく、過ごしやすい晩秋の昼下がりとなりました。
 白山公園駐車場に車をとめて、落葉して寒々とした木々を眺めながら、りゅーとぴあ入りしました。コンサートホールでは合唱祭の開場がされており、それを横目にエレベーターで5階に上がり、能楽堂前で開場を待ちました。
 ほどなくして開場となり、中正面右側に席を取りました。能楽堂の席は分かりにくいですが、このコンサートでは中正面が正面で、正面は右寄りになります。

 開演時間となり、手島さんを先頭に、4人が能楽堂の舞台に登場しました。1曲目は「風の戯れ」です。立っての演奏で、左から丸太さん(黒シャツ・赤ネクタイ:ピッコロ持ち替え)、西山さん(水色のドレス)、水島さん(水色のドレス)、手島さん(黒っぽい色で模様入りのドレス:アルト持ち替え)です。
 自然の中で、自由に気まぐれに吹く風をイメージした曲だそうですが、第1楽章は、風は様々に変化し、爽やかに、軽快に曲が進みました。第2楽章は、ゆったりと、しっとりと曲が進み、森の中の静けさの中に、カッコウが鳴き、切れ目なく続く第3楽章は、賑やかに鳥が鳴き、風は力を増してフィナーレとなりました。丸田さんのピッコロがいい味付けになっていました。

 ここで西山さんによる挨拶とメンバー紹介があり、曲目紹介がありました。今日のコンサートは「雲外蒼天」という副題が付けられていますが、「苦難の先の希望」を意味していて、能登半島地震の復興を願う気持ちが込められているそうです。
 2曲目は、この副題になった「雲外蒼天」です。並びが変わって、左から丸田さん、手島さん、西山さん、水島さんとなりました。
 手島さん、西山さん、水島さんのフルート三重奏に丸田さんの独奏が対峙するような印象でした。苦難を表す沸き立つ雲が空を覆うような音楽から、一瞬の間をおいて曲調が変わり、雲間から日が差して青空が広がり、爽やかな空気に満たされて、希望をもたらしました。

 ここで水島さんのMCとなり、他の3人は退場し、この間にステージが整えられました。椅子が並べられて、以後座っての演奏となりました。
 曲目解説の後、他の3人が登場して着席し、3曲目は「きらきら星変奏曲」です。左から丸田さん(ピッコロ)、手島さん、西山さん(アルト)、水島さん(バス)という並びです。
 手島さん、西山さん、水島さんの三重奏で主題が奏でられ、丸田さんのピッコロが加わって、12の変奏が演奏されました。ピッコロからバスフルートまで、各音域が縦横に音楽を奏で、楽しく聴かせてくれました。

 続いて丸田さんのMCとなり、他の3人は退場し、この間にフォーメーションが変更されました。時間稼ぎの丸田さんのトークで盛り上がり、3人が戻って、前半最後は「ベルガマスク組曲」です。並びは、左から手島さん、西山さん、水島さん、丸田さんとなりました。
 第1曲「プレリュード」は、しっとりとした美しさの中に輝きが感じられました。第2曲「メヌエット」は、ちょっと不安げながらも軽やかにリズムを刻み、第3曲「月の光」は、ロマンチックにしっとりと、爽やかに歌わせ、第4曲「パスピエ」は、軽快なステップで足早に駆け抜けてダンスを踊り、夢幻の世界が眼前に広がりました。

 休憩時間にステージは片付けられて、譜面台が1つだけになりました。丸田さんが登場し、後半1曲目は「フルート独奏のための 冥」です。照明が落とされた中に、丸田さんにスポットライトが当てられて、後方の壁に影が映し出されました。
 尺八のようなフルートの響き。霊の世界を感じさせるような深遠な響きが心に突き刺さり、息を呑んで音楽に身を委ねました。能楽堂という空間の静寂に中に、霊が漂うかのようであり、心の奥底まで沁み込んでくる音楽に、私の汚れた心は浄化され、あちらの世界へと旅立つかのようでした。

 丸田さんが退場し、薄いイエローのドレスに衣裳換えした西山さんが登場し、MCの間にステージが整えられました。グリーンのドレスの水島さん、クリーム色のドレスの手島さんが登場、後半2曲目は、フルート三重奏での「はなやぎ」です。左から水島さん、手島さん、西山さんという並びです。
 曲名の如く、軽快で賑やかな音楽で、躍動的で駆け足するようでした。緩徐部を挟んで再び軽快にリズムを刻み、華やいだ空気の中に曲を終えました。

 手島さんのMCとなり、2人が退場し、ステージ転換されました。曲目紹介があり、他の3人が登場。最後の曲は「動物の謝肉祭」です。原曲での「ピアニスト」は、フルート版の編曲に際して「フルーティスト」と変更された旨の説明がありました。並びは、左から手島さん、西山さん(アルト持ち替え)、水島さん(アルト/バス持ち替え)、丸田さん(ピッコロ持ち替え)です。
 楽器を持ち替えながら、各曲の対比も面白く、聴きなじみのある音楽が楽しく続きました。聴き所の「フルーティスト」では、丸田さんがメトロノームを持ち出して、フルートの練習風景をユーモアたっぷりに寸劇風に演じ、会場に笑いを誘いました。「白鳥」を情感豊かに演奏し、「終曲」を明るく演奏して、予定されたプログラムは終演となりました。

 拍手に応えて4人が再登場し、アンコールに「ジュピター」を変奏曲風に演奏して、感動の中にコンサートは終演となりました。

 フルートだけの演奏ですので、音色的には単調に感じましたが、多彩な曲を見事な演奏で楽しませてくれました。東京で活躍する丸田さんが要となり、新潟で頑張る美女3人とともに、聴き応えある音楽を創り上げてくれました。能楽堂という和の閉鎖空間も、曲目に合っていました。奏者との距離も近くて、ビジュアル的にも楽しめました。

 大きな感動とともに2階ロビーに降りますと、コンサートホールでの合唱祭はまだ続いており、美しいハーモニーが漏れ聴こえて来ました。
 外に出ますと青空が広がり、爽やかな晩秋の夕暮れを迎えようとしていました。ずっとこれくらいの気候だと良いのですが、束の間の好天を楽しみましょう。

 
(客席:中5-16、\3000)