新潟メモリアルオーケストラ第33回定期演奏会
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2024年9月22日(日)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:工藤俊幸
 
ロビーコンサート
金管アンサンブル
 スメタナ:歌劇「リブシェ」序曲 より
 シュクロウプ:チェコ共和国国歌
チェロアンサンブル
 クレンゲル:讃歌
コントラバス四重奏
 オズボーン:The Pink Elephant
弦楽五重奏
 ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲第1番 第1楽章

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レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
 T 夜明けのジュリアの谷の噴水
 U 朝のトリトーンの噴水
 V 昼のトレヴィの噴水
 W たそがれのメディチ荘の噴水

スメタナ:連作交響詩「わが祖国」
 第1曲 ヴィシェフラド
 第2曲 ヴァルダヴァ(モルダウ)
 第3曲 シャールカ

(休憩20分)

 第4曲 ボヘミアの森と草原から
 第5曲 ターボル
 第6曲 ブラニーク
 
 今日は、新潟大学管弦楽団のOB・OGを中心に構成されている新潟メモリアルオーケストラの定期演奏会です。1991年に第1回演奏会が開催され、今回は第33回定期演奏会となります。
 毎年この時期に定期演奏会を開催していますが、新潟ではなかなか聴けない本格的な演目を、無料で聴かせてくれています。これは素晴らしいことであり、大いに賞賛したいと思います。
 今回の演目は、レスピーギの「ローマの噴水」とスメタナの「わが祖国」全曲という豪華なプログラムであり、期待が高まりました。指揮は、2017年から指揮を執っている工藤俊幸さんです。

 雨が降り続く日曜日。記事を一旦アップして、ゆっくりと昼食を摂り、雨が止んだところで、白山公園駐車場へと車を進めました。
 車をとめて、県民会館で某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあ入りしました。既に開場されていましたので、すぐに入場して、2階正面に席を取りました。ロビーでは既にロビーコンサートの準備が進められていましたので、すぐにロビーに移動しました。

 13時10分からのロビーコンサートは、金管アンサンブルで始まりました。スメタナの序曲の抜粋と、スメタナの母国であるチェコの国歌が演奏されましたが、金管総動員と思われる大編成のアンサンブルにティンパニを加えて、指揮者付きでの大迫力の演奏でした。素晴らしいアンサンブルが、音量豊かにホワイエに響き渡り、聴き応え十分でしたが、短い演奏でしたので、もう少し聴きたかったかなと思いました。

 続いてはチェロアンサンブルです。12人のチェロ奏者により、クレンゲルの「讃歌」が、静かに、しっとりと、複雑なフォーメーションで演奏されました。ゆったりした曲ですので、各個人の技量が浮き出され、音程が不安定な場面も垣間見えましたが、聴き応えある曲を、聴き応えある演奏で楽しませていただきました。

 次は、コントラバス四重奏で、オズボーンの「The Pink Elephant」が演奏されました。ジャズテイストに溢れて、切れの良い格好いい演奏で、ノリノリの演奏が気持ちよかったです。

 最後は、弦楽五重奏で、ドヴォルザークの弦楽五重奏曲第1番から第1楽章が演奏されました。左から、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、コントラバス、チェロ、ヴィオラという変わった並び方でした。
 音色的に多少の不安定さはありましたが、まとまった演奏で、緊迫感も感じさせて、楽しませてくれました。残響豊かなホワイエですので、コントラバスが響き過ぎで、ボワーっとして聴こえました。次第に熱量を増して、演奏に引き込まれ、熱い盛り上がりとともに終演になりました。

 ロビーコンサートが終わり、客席に戻りますと、空いていた席は埋まっていて、私の席の周りはびっしりになっていました。
 ステージでは、団員が三々五々現れては音出しを賑やかに始め、コンミスも含めて皆さんは早々に席に着いて練習していました。全員揃ったところで開演時間となり、チューニングとなりました。これが毎回のこのオケのやり方です。
 オケの配置は、通常型の14型ですが、弦5部は、私の目視で 14-10-8-10-10 と、チェロとコントラバスが多くて、ちょっとアンバランスに感じました。ハープが2台にチェレスタ、ピアノも並び、ステージいっぱいのオケは視覚的にも壮観です。オルガン席には明かりが灯り、りゅーとぴあ専属オルガニストの濱野芳純さんがスタンバイしていました。

 工藤さんが登場して、1曲目は、レスピーギの「ローマの噴水」です。この曲は最近聴いたような気がして調べてみましたら、2019年9月に東京フィル(指揮:バッティストーニ)の演奏を聴き、その前には2017年3月の東響新潟定期(指揮:飯森範親)で聴いていました。
 夜明けに始まり、朝、昼、そして日が暮れて、たそがれどきへと場面が移り変わりますが、ローマにある噴水を軸として、イタリアの1日を表現した色彩感あふれる音楽を、見事な演奏で具現化し、このオケの素晴らしさが実感されました。パイプオルガンも加わってのゴージャスなサウンドは、聴き応え十分であり、極彩色の音楽に身をゆだね、オーケストラの醍醐味を存分に味わいました。

 一旦全員がステージから下がって、その後拍手の中に団員が入場しました。団員の入れ替わりもあるようでしたが、弦の編成が少し変更されて、ヴィオラとチェロが若干増員されたようです。
 続いては、スメタナの「わが祖国」です。第2曲の「モルダウ」は何度も聴いていますが、全曲を聴く機会はなく、2007年12月の新潟大学管弦楽団の定期演奏会(指揮:河地良智)以来、17年ぶりです。
 全部で6曲からなりますが、前半・後半それぞれ3曲ずつに分けて演奏されました。工藤さんが登場して、第1曲〜第3曲の演奏開始です。

 第1曲は、「ヴィシェフラド」です。2台のハープの演奏に始まり、シンフォニックに、明るく華やかに演奏が進み、ゴージャスなサウンドにうっとりし、最後は再びハープとともに、静かな中に曲が終わりました。

 第2曲は、「ヴァルタヴァ(モルダウ)」です。フルートとヴァイオリンのピチカートで始まり、水が湧き出て小さな流れとなり、やがて水量を増して大きな流れとなって海へと注ぐ。その途中の川辺の村では祭りが行われていたり、悪天候になったりと、おなじみの曲を、しっかりとした演奏で 楽しませてくれました。ちょっとしなやかさに欠けて、荒削り感が感じられましたが、十分に楽しめる演奏でした。

 第3曲は、「シャールカ」です。暗くて緊迫感ある出だしに始まり、弦楽のアンサンブルが素晴らしく感じられました。明るくリズムを刻み、クラリネットソロからチェロへと引き継がれ、明るく伸びやかに歌いました。そして賑やかにリズムを刻み、切なげなクラリネットとともに緊張感を増して、熱くエネルギーを増して曲を閉じました。

 ここで前半が終了となり、拍手が贈られて、工藤さんはオケメンバーを順に起立させて、そのパフォーマンスを讃えました。

 休憩後の後半は、残りの3曲です。最初と同様に、オケのメンバーはばらばらにステージに出てきて、音出しを始めました。コンミスも真っ先に出てきており、練習をしていました。全員揃ったところでチューニングとなり、工藤さんが登場して演奏が始まりました。

 第4曲は、「ボヘミアの森と草原から」です。ゆったりと揺れ動く出だし。ヴィオラのトレモロに載せて管が明るくメロディを奏で、第1ヴァイオリン→第2ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→コントラバスと、フーガのように弦が順に不安げに歌い、管は明るく歌い、そして大きく、高らかに喜びを歌い上げました。舞曲風に賑やかに、明と暗、緩急を繰り返し、その対比も鮮やかに、スピードアップ、エネルギーアップしてフィナーレとなりました。

 第5曲の「ターボル」と第6曲の「ブラニーク」は続けて演奏されました。ティンパニに載せてホルンが怪しげに鳴り、不気味に弦楽が歌い、ティンパニの強打とともに目覚めるも、再び静かに・・。静と動、明と暗、緩と急を繰り返し、次第にエネルギーを増し、切れのよい弦が心地よく、10人のコントラバスの迫力を感じました。
 嵐の如く激しくかき鳴らし、力強くリズムを刻み、そして静けさが訪れて平穏となりました。管が楽しげに歌うものの、再び暗雲が訪れました。
 平穏と暗さを繰り返し、最後には暗雲をかき散らせて、力強く勝利の歌を歌い上げ、明るく、大きな盛り上がりとともに、感動の中にフィナーレとなりました。

 聴衆に大きな感動と胸の高鳴りをもたらして、ホールは熱気に満ちていました。各パートごとに大きな拍手が贈られ、工藤さんに花束が贈呈されました。団員からも工藤さんを賞賛する足踏みが贈られました。コンミスが正面のほか、左右にも礼をして、感動の演奏会は終演となりました。

 アマオケですので、それなりの乱れはありましたが、そんなことは些細なことでしかなく、素晴らしい演奏だったと思います。色彩感とパワーにあふれる演奏は、ゴージャスであり、オーケストラを聴く喜びをダイレクトに感じさせてくれました。
 こんな演奏を無料で聴けるなんて、何とも幸せなことです。来年はどんな曲を演奏してくれるでしょうか。来年の演奏会も楽しみに待ちたいと思います。

 大きな感動とともに外に出ますと、入れ替わりにりゅーとぴあに向かうたくさんの人とすれ違いました。劇場で17時に開演する稲川淳二さんの公演に行かれる客のようでした。
 雨雲は去ったらしく、雲間から青空も垣間見えていました。このまま天候が回復することを祈りながら、駐車場へと早足しました。
 


(客席:2階C6-9、無料)