反田恭平 & 務川慧悟 2台ピアノツアー 2023
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2023年2月3日(金)19:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ピアノ:反田恭平、務川慧悟
 
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 Op.56b (T.務川/U.反田)
  主題、第1変奏〜第8変奏、終曲

ルトスワフスキ:パガニーニの主題による変奏曲 (T.反田/U.務川)

(休憩20分)

フォーレ:ドリー組曲 (T.務川/U.反田) 
  T.子守歌 U.ミ・ア・ウ V.ドリーの庭 W.キティ・ワルツ
  X.優しさ Y.スペインの踊り

ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章(T.反田/U.務川)
  第1楽章:第1場より「ロシアの踊り」
  第2楽章:第2場より「ペトルーシュカの部屋」
  第3楽章:第4場より「謝肉祭」

(アンコール:務川) ラヴェル:水の戯れ
(アンコール:反田) グリーグ:トロルドハウゲンの婚礼の日
 

 今日は反田恭平さんと務川彗悟さんのデュオコンサートです。実力と人気を兼ね備えた二人のピアニストの共演ということで、注目されるコンサートです。

 反田さんは、ピアニストの枠を超えて、若手では今一番活躍している音楽家ではないでしょうか。ジャパン・ナショナル・オーケストラというオケまで作って、奈良市を拠点に活躍されておられます。
 2021年秋の第18回ショパンコンクールでは第2位に入賞されましたが、コンクールの模様をネット配信で視聴して応援したことを昨日のことのように思い出します。
 最近の話題としては、「終止符のない人生」という自伝を若くして出版されたこと、テレビCMに出演されたことなどありますが、一番はショパンコンクール第4位入賞の小林愛実さんとのご結婚でしょうか。幼馴染みとは言え世界的なピアニスト同士の結婚はセンセーショナルですが、お二人の幸せをお祈りしたいと思います。
 なお、私が反田さんの生演奏を聴くのは、2018年9月の長岡市でのリサイタル、2022年2月の、りゅーとぴあでのジャパン・ナショナル・オーケストラの公演に続いて、今回は1年振り3回目になります。

 一方、務川さんは、2019年のロン・ティボー・クレスパン国際コンクールで第2位、2021年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで第3位という実力者で、日本とフランスを拠点に活躍されています。
 私が務川さんの演奏を生で聴くのは今回が初めてになります。2022年3月に五泉市のさくらんど会館で演奏会(昼・夜)を開催されており、聴きに行こうと思っていたのですが、行けなかったことを悔やんでいます。

 それぞれが素晴らしいピアニストですが、その二人を同時に聴けるという魅力あるコンサートであり、チケットの会員先行発売とともに衝動的にネット購入してしまいました。すぐにチケットは完売となり、購入できてしめしめと思いました。
 しかし、平日夜のコンサートであり、行けないことも予想されました。前々日には角野隼斗さんのコンサ−トにも行く予定にしており、2つ行くのは無理かなと思いましたが後の祭りです。
 仕事もさることながら、1年で気候が一番厳しい真冬の2月初めでもあり、行けるかどうか心配しながらこの日を待ちました。

 幸いにして寒波は去って天候は落ち着き、スケジュール調整もできて、2月1日の角野隼斗さんのコンサートには無事参加できました。そして、今日のコンサートも予定通りに参加できることになりました。
 仕事を早めに切り上げて職場を出て、大急ぎでりゅーとぴあへと車を進めました。天候は落ち着き、道路事情も問題なく、スムーズに白山公園駐車場入りできました。
 りゅーとぴあに入りますと、既に開場されており、ロビーはたくさんの人たちで賑わっていました。角野さんのときほどではないですが、若い人も多く、やはり女性が多くを占めていました。高齢者もそれなりにおられ、角野さんのときのようなアウェイ感は感じずに済みました。

 インフォメーションで某コンサートのチケットを買って入場しましたが、女子トイレは長い列ができていて、女性客の多さを物語っていました。席に着いてこの原稿を書きながら開演を待ちましたが、私の周囲では女性方のおしゃべりが賑やかでした。
 ステージには2台のピアノが交互に置かれていました。左はスタインウェイ、右は反対向きで確認できませんでしたが、やはりスタインウェイのようでした。
 開演時間が近付くに連れて客席は埋まり、熱気で満たされました。チケット完売だけあって、びっしりと満席のホールは壮観です。角野さんのときと違って、いつものチャイムが鳴り、開演となりました。

 反田さんと務川さんが、譜メクリストとともに入場。ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」で開演しました。第1ピアノは務川さん、第2が反田さんです。
 ハイドンの主題が演奏された後に、8つの変奏が演奏され、終曲で終えられますが、緩急様々な各変奏の対比も鮮やかに、ダイナミックかつ繊細な演奏を楽しませていただきました。

 四方に礼をして一旦退場し、左右の椅子が入れ替えられ、2曲目はルトスワフスキの「パガニーニの主題による変奏曲」です。第1ピアノは反田さん、第2は務川となりました。
 おなじみの主題を演奏した後、12の変奏が続き、コーダで終えるという構成です。短い曲ですが、ダイナミックで色彩感ある鮮烈な演奏に圧倒されました。正面・後方・左・右、そして再び正面と、丁寧に四方に礼をして退場し、休憩時間となりました。

 休憩時間は、やはり女子トイレは長い列が伸びていました。私はさっさと用を足し、客席でこの原稿を書いていました。その間ピアノの調律が行われていました。

 時間となり、2人が譜めくり1人とともに登場し、後半はフォーレの「ドリー組曲」で開演しました。2台ピアノではなく、連弾での演奏で、第1ピアノ(左)が務川さん、第2が反田さんです。
 フォーレと親交があった女性の娘(愛称:ドリー)の誕生祝に毎年1曲ずつ贈られた曲だそうですが、優しく美しい曲が、4手のピアノで演奏され、心穏やかにうっとりと聴き入りました。

 一旦退場し、最後はストラヴィンスキーの「ペトルーシュカからの3楽章」です。オリジナルは1台での演奏で、これはよく聴きますが、2台ピアノ版(ヴィクター・バビン編曲)は初めてです。
 なお、1台でのオリジナルの演奏は、録音ではポリーニの名盤を愛聴し、実演では2015年11月のフランチェスコ・トリスターノ、2019年2月の及川浩治さん、そして2019年5月の大瀧拓哉さんの演奏が記憶に残っています。
 2台ピアノではなく、連弾での演奏は、新潟で地道に活動を続けられている坂井加納さんが、新潟に越してこられて間もない頃の2010年8月に、磯田朋子さんと演奏したものが今なお鮮烈な記憶として残っています。
 第1ピアノが反田さん、第2が務川さんで演奏されましたが、強靭な打鍵から繰り出される音の洪水に圧倒され、ひれ伏すのみでした。緩急・強弱自在、音は色彩感にあふれ、濁りの全くないクリアな響きは、この二人ならではでしょう。オーケストラに負けない、いやそれ以上の魅力ある演奏に高揚感で胸が高鳴りました。

 大きな拍手に応えて四方に丁寧に礼をし、数回の出入りの後、2人によるMCがありました。今日のMC当番は務川さんだそうで、務川さんから挨拶があり、そこに反田さんが加わりました。
 今回のツアーは15公演あり、新潟は13公演目であることなど、リハを含めて1か月弱一緒に演奏を続けてきたこと、ロビーでのCD販売のこと、今日は日帰りしなければならず、終演後のサイン会は開催できないことなど、楽しく話してくれました。
 そしてジャンケンで、アンコール曲を決める優先権が決められ、務川さんが勝ち、ラヴェルの「水の戯れ」を演奏すると発表し、反田さんは「じゃあ、北欧の曲にします」と言い残して下がりました。

 務川さんの「水の戯れ」は、クリアで美しく、心が洗われるような響きで魅了しました。今度は単独でのリサイタルを是非とも聴きたいですね。
 務川さんが下がるとともに反田さんがすぐに登場し、グリーグの「トロルドハウゲンの婚礼の日」が、ダイナミックに演奏されました。もともと劇的で聴きごたえある曲なのですが、緩徐部・弱音部での繊細な響きは反田さんならではであり、反田さんの魅力を再認識してコンサートは終演になりました。

 この二人は、2012年の日本音楽コンクールで、同率1位を分け合ったライバル同士ですが、その後それぞれの道で研鑽と実績を積みながら親交を温めて来られました。
 2019年に初共演して2台ピアノのCDを出しておられますし、今回の演目のCDも発売されました。ツアーも終盤となり、演奏もこなれ、息もぴったりなのも頷けます。伝え聞くところによりますと、今日はリハーサルなしで臨まれたとか。

 期待にたがわぬ演奏に大きな満足感をいただき、りゅーとぴあを出て駐車場へと急ぎました。気温は下がっていましたが、いい演奏を聴いて心は暖かです。

 さて、お二人は最終の新幹線に間に合いましたでしょうか。1月19日に金沢でスタートした今回のツアーは、わずかな休みを挟んで全国を巡り、一昨日は札幌、昨日は青森の弘前市、そして今日は新潟、明日は埼玉県の三善町、明後日は愛知県の豊田市で今回のツアーを終えます。移動だけでも大変でお疲れのことと思いますが、無事にツアーを終えられることを祈りたいと思います。
 その後も、お二人とも国内外での演奏予定がびっしりであり、反田さんは9日からジャパン・ナショナル・オーケストラのツアーが始まりますし、務川さんは12日にベルギーでのリサイタルを控えています。
 今まさに旬のピアニストであることは間違いありません。こんな二人の演奏を聴けた喜びを胸に、車の外気温計が氷点下を示す中、自宅へと車を進めました。

   

(客席:2階C6-11、¥5500)